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【2026年4月第5週】鉄スクラップ 週次レポート — 東京製鉄が4月に3回価格改定、円安と輸出競争力の高まりが国内相場を下支え

THE SUPPLIER · 素材カスケード分析

鉄スクラップ 脱炭素の「主役原料」へ転換——円安と輸出競争力、電炉化への波及

2026年4月第5週(4月27日〜5月2日)
第1層: 上流ショック(実データ)
関東地区H2炉前価格(推定)
38,000
円/t(週末推定)
2021年以降「3.5万円割れなし」構造続く
東京製鉄の4月改定回数
3回
(4/7・4/10・4/16)
市場の感度が高まっている証拠
産業新聞 換算レート(TTS)
159.82
円/ドル(4月28日)
円安で輸出競争力が高い水準→輸出引き合い増
東京製鉄の新物流施策
鉄道輸送
5月〜東京湾岸〜宇都宮
物流コスト削減と安定調達を同時達成
伝播経路 — 5層カスケード
第1層
スクラップ発生
老廃スクラップ(解体・廃車)
ビル解体・廃棄自動車から発生
自動車リサイクル法で安定収集
工程スクラップ(工場・加工)
製造業の端材・加工くず
トランプ関税懸念で生産停滞→発生減
第2層
スクラップ流通
スクラップ業者・問屋
仕分け・加工→「製品加工業」への転換中
鉄リサイクル工業会が業態改革を推進
輸出(韓国・ベトナム向け)
円安で競争力高まり引き合い増
関東鉄源協同組合の月次入札が価格指標
第3層
電炉製鋼
電炉メーカー(東京製鉄・共英製鋼)
スプレッド縮小で経常益70%減
グリーンスチール訴求が収益回復の鍵
低炭素ビレット(電炉製)
LIXILがグリーン調達を検討開始
EUのCBAM対応需要が拡大
第4層
最終製品
電炉鉄筋・形鋼(建設向け)
スクラップコスト上昇が市中価格に転嫁
建設業のコストアップ要因
グリーンスチール(CBAM対応)
欧州向け輸出でプレミアム獲得の機会
電炉製鋼が「脱炭素のメインルート」に
第5層
生活・マクロ
建設費・住宅価格
電炉鋼材コスト上昇が建設費に反映
2〜3四半期後に住宅価格へ波及
脱炭素(GHG削減)
電炉製鋼のCO₂は高炉の1/4
カーボンニュートラル政策の主要手段
業界別アラート
電炉メーカー(東京製鉄・共英製鋼・大和鋼管)
スプレッド縮小で収益圧迫。グリーンプレミアム訴求と価格転嫁が急務
要対応
即時〜6ヶ月
スクラップ業者・解体業者
輸送コスト(軽油高)が手取り利益を圧縮。物流多様化(鉄道活用等)が課題
監視強化
継続中
建設・土木(鉄筋・形鋼調達)
電炉鉄筋の市中価格上昇が工事費に転嫁。グリーン鋼材への切り替え準備も必要
注視
2〜4ヶ月
要注視
製造業大手(低炭素ビレット調達:LIXIL等)
CBAM対応でグリーンスチール調達の制度設計が急務。電炉メーカーとの対話開始
注視
中長期
要注視

結論サマリー

  • 東京製鉄(株)は4月7日・10日・16日と4月だけで3回の購入価格改定を実施した
  • 関東地区のH2炉前価格は3.5〜4.2万円/tレンジで推移——2021年以降「3.5万円割れなし」という構造的下値が継続
  • 円相場が157〜160円近辺で推移しており、国内スクラップのドル換算コストが割安になる輸出需要が増加している
  • 東京製鉄は5月から鉄スクラップの一部を鉄道輸送(東京湾岸ヤード〜宇都宮工場)に切り替え、輸送コスト削減と安定調達を目指す
  • 鉄スクラップのリサイクル工業会が「スクラップ」から「リサイクル鉄源製品」への改名を検討中——電炉製鋼のカーボンニュートラルへの貢献を業界として訴求する動き

【今週の動き】鉄スクラップの現状

鉄スクラップ市場は今週、急騰でも急落でもない「底堅い均衡」の相場が続いた。東京製鉄の購入情報ページによれば、4月の改定は7日・10日・16日の3回にわたって実施されており、直近の価格水準を基点として4月下旬は安定的に推移している。日刊鉄鋼新聞の市場情報では4月28日時点の換算レートが1ドル159.82円と表示されており、円安が続くなかで国内スクラップの輸出価格(ドル建て)は割安水準を保っており、韓国・ベトナム向けの輸出引き合いが継続している。一方で国内の電炉メーカーは原料確保を続けており、需給は比較的拮抗した状況だ。

直近5日間の値動き(関東地区 H2炉前価格推定)

日付価格推定 (円/t)前日比主要ニュース
4月27日(月)38,000±0東京製鉄4月16日改定後で安定。輸出引き合い継続
4月28日(火)38,000±0円安続き輸出競争力が高い水準で推移
4月29日(水)38,200+200一部電炉メーカーが価格引き上げ。需要底堅い
4月30日(木)38,200±0月末在庫調整に落ち着く
5月1日(金)38,000−200メーデー。翌週からGW明け調達が本格化する前の手控え

データソース: 東京製鉄購入価格情報 / 日本鉄リサイクル工業会 価格推移表 / 産業新聞 鉄スクラップ

今週の主要因

今週の鉄スクラップ市況を動かした3つの構造的要因を整理する。第一にSteel Story Japanの市場分析が指摘する通り、カーボンニュートラルが世界的課題となった2021年以降、炉前価格が3.5万円を一度も下回っていないという構造的な底値支持が続いている。これは電炉製鋼がCO₂排出量を高炉の4分の1に抑えられることから、スクラップを「鉄源そのもの」として位置付ける産業・政策的な評価の高まりを反映している。第二に、円安(157〜160円台)がドル建ての国内スクラップを割安にし、輸出引き合いを増加させることで国内相場の下値を支えている。第三に、トランプ関税による世界貿易の停滞懸念が製造業のスクラップ発生量(工程発生品)を抑制しており、量的な発生減が価格の下値を下支えしている。

【今週の動きが意味するもの】5層カスケード分析

鉄スクラップは「廃棄物」から「製鋼の主役原料」へとその位置付けが変わりつつある。電炉製鋼のカーボンニュートラルへの貢献、EUのCBAM(国境炭素調整メカニズム)対応、そして日本国内での電炉化投資の加速という3つのトレンドが、鉄スクラップを戦略素材へと変えている。

第1層・第2層: 原料と中間材

鉄スクラップは「産業活動の後から発生する」という独特の供給構造を持つ。解体工事から出る鉄骨・橋梁鉄材(老廃スクラップ)、廃棄自動車(プレス後スクラップ)、工場・工程からの端材(工程スクラップ)の3種類が主な発生源だ。関東鉄源協同組合(東京・大田)は毎月、韓国・ベトナム向けの輸出入札を実施しており、この落札価格が国内相場の重要な参照点になる。鈴木金属のスクラップ市場分析によれば、2016年の関東地区H2炉前価格が14,500〜15,500円/tだったのに対して、2022年以降は5万円超という歴史的高水準が続いた後、現在は3.8〜4.2万円台でのレンジ推移が続いている。東京製鉄が5月から実施する鉄スクラップの鉄道輸送(東京湾岸〜宇都宮)は、物流コスト削減と安定調達のための合理化策であり、輸送費上昇環境下での戦略的な対応だ。

第3層: 中間製品の動向

電炉製鋼における鉄スクラップ→鉄鋼(電炉鉄)のバリューチェーンでは、東京製鉄(宇都宮・岡山・田原工場)・大和鋼管・共英製鋼・中山製鋼所などが主要プレーヤーだ。日刊鉄鋼新聞の報道によれば、東京製鉄(26年3月期決算)は経常益が前年比70%減の86億円という大幅な減益となった。これはスプレッド(スクラップ購入価格と鋼材販売価格の差)の大幅縮小が主因だ。スクラップの購入コスト上昇を鋼材価格に十分転嫁できていない状況が、電炉各社の収益を圧迫している。LIXIL(住宅建材大手)が低炭素ビレット(電炉製スクラップ由来)の調達を検討し始めたという産業新聞の報道は、川下産業がグリーン鋼材への需要をスクラップ市場に伝達し始めた好例だ。

第4層: 最終製品への波及

建設・土木 — 電炉鉄筋・形鋼のコストが上昇圧力

電炉産の鉄筋・形鋼はスクラップ価格に連動しており、関東地区の鉄筋棒鋼価格は建設業界の調達コストを決める。スクラップの3.8〜4.2万円台はコスト上昇圧力を維持している。

自動車・家電(廃棄品→スクラップ発生)— 脱炭素電炉材への切り替えが加速

自動車リサイクル法に基づく廃車スクラップが増加するなか、LIXILなど大手製造業が「低炭素認証スクラップ」の調達を模索し始めている。

造船・橋梁・インフラ — 高強度電炉鋼材の供給能力が拡充

電炉各社が高付加価値品(H形鋼・大型型鋼)の生産拡大に取り組んでおり、スクラップ品質の管理高度化(鉄リサイクル工業会の取り組み)が重要性を増している。

海外輸出市場(韓国・ベトナム)— 円安で日本産スクラップの競争力が向上

円相場157〜160円台での推移は、日本産スクラップのドル建て価格を割安にし、韓国のPOSCO・現代製鉄やベトナムの電炉メーカーからの引き合いを増やしている。

廃棄物リサイクル業界 — 「製品加工業」への転換が加速

鉄リサイクル工業会が検討中の「スクラップ→リサイクル鉄源製品」への名称変更は、単なるマーケティングではなく、「仕分け業」から「納入責任を持つ製品加工業」への業態転換を表す。このコスト増は今後のスクラップ価格のベース要素になる見込みだ。

第5層: 生活・マクロへの波及

鉄スクラップは電炉製鋼を通じて鉄鋼全体の原料コストに影響する。現在の3.8〜4.2万円台という水準は、高炉の原料コスト(鉄鉱石+原料炭)と電炉の原料コスト(鉄スクラップ)の両方からの上昇圧力が製造業の原価を押し上げる局面を示している。EUのCBAMが2026年から正式適用され始めており、CO₂排出量の少ない電炉スクラップ由来の「グリーンスチール」へのプレミアム需要が欧州市場で拡大している。日本の電炉大手にとって、このグリーンプレミアム獲得が中期的な収益改善のカギとなり得る。

【今後の展望】来週・1ヶ月先・3ヶ月先

来週(7日先)の注目ポイント

日付イベント影響
5月6日〜GW明け・製造業の操業再開工程スクラップ発生増→需給緩和の可能性
5月上旬関東鉄源協同組合の輸出入札韓国・ベトナム向け落札価格が国内相場の参照点
5月中旬東京製鉄の鉄道輸送(宇都宮路線)開始物流コスト削減効果を市場が評価
随時円相場の動向155〜160円台の維持か変化かで輸出競争力が変わる

GW明けの製造業操業再開で工程スクラップが増加し、供給側からの下押し圧力が出る可能性がある。一方で電炉各社のGW明け調達再開が需要を支える。3.6〜4.0万円のレンジでの推移が来週の基本シナリオだ。

1ヶ月先の見通し

円相場が155〜160円台を維持する限り、国内スクラップの輸出競争力は高い水準が続く見込みだ。韓国の電炉メーカー(POSCO・現代製鉄)や東南アジアのメーカーが円安を活かした日本産スクラップの調達を増やせば、国内供給が輸出に流れて国内市場のタイト感が維持される。3.5〜4.5万円のレンジが1ヶ月先の基本シナリオだ。

3ヶ月先の構造的展望

中長期的に最も重要なのは、EUのCBAM適用開始(2026年)と日本の製造業電炉化の加速が鉄スクラップの需要を構造的に押し上げる点だ。高炉から電炉への転換投資が日本製鉄・JFEでも検討されており、この流れが本格化すれば2025〜2028年にかけてスクラップ需要が大幅に増加する。一方でトランプ関税による世界経済の停滞が製造業の工程スクラップ発生を抑制しており、需給のタイト感が続きやすい構造だ。Steel Story Japanの長期分析が示す「カーボンニュートラル以降、炉前価格3.5万円割れなし」というトレンドは3〜5年の視野では継続すると見るのが妥当だ。

リスクシナリオ

強気シナリオ(4.5〜5.5万円/t): 日本国内の大規模解体工事の一巡と電炉化加速による需要急増が重なり、スクラップが慢性的に不足する。中立シナリオ(3.5〜4.5万円/t): 現在の均衡が維持され、円安と国内需要のバランスで推移する。弱気シナリオ(2.5〜3.5万円/t): 世界経済の急激な悪化でスクラップ発生が増加し、輸出引き合いも減少する。

【業界別】今週の動きへの対応指針

調達担当者・購買部門

電炉メーカーの原料担当者は、東京製鉄など主要バイヤーの購入価格改定頻度が4月に3回という高頻度になっていることを踏まえ、週次での相場チェックと調達量の弾力的な調整が求められる。輸出入札(関東鉄源協同組合)の落札価格は国内相場の先行指標として活用できる。輸送コスト上昇環境下では、東京製鉄の鉄道輸送モデルのように物流の多様化が調達戦略の一部となりつつある。

経営者・経営企画

電炉各社の経営者は、スプレッド(スクラップコストと鋼材価格の差)の管理が最重要課題だ。東京製鉄の26年3月期経常益が前年比70%減という結果は、コスト転嫁の難しさを物語っている。鉄鋼需要家(建設・自動車)との中長期的な価格連動契約へのシフトと、グリーンスチールへのプレミアム価格の訴求が収益改善の道筋として重要だ。

投資家・アナリスト

東京製鉄・共英製鋼・大和鋼管など電炉株は、スクラップコストと鋼材販売価格のスプレッド改善が株価の最大の変数だ。CBAM対応でグリーン認証スクラップのプレミアムが拡大する可能性は中期的な評価向上要因であり、電炉化投資を進める日本製鉄・JFEのグリーン鋼材戦略の進捗も注目点だ。

よくある質問(FAQ)

Q: 今週の鉄スクラップ価格はなぜ3.8万円台で安定しているのですか?

A: 東京製鉄の4月3回改定後の落ち着き局面であり、円安による輸出引き合いの継続と国内電炉の底堅い需要が拮抗しているためだ。2021年以降の「カーボンニュートラル下値3.5万円」という構造的な床が維持されている。

Q: この価格水準はいつまで続きますか?

A: 円相場が155〜160円台を維持し、電炉製鋼への需要が続く限り3.5〜4.5万円のレンジでの推移が基本シナリオだ。世界経済の停滞でスクラップ発生が増えれば一時的に下落する可能性があるが、カーボンニュートラル需要が下値を支える。

Q: 自動車リサイクル・解体業者への影響は?

A: 廃棄自動車から発生するスクラップ(シュレッダー鉄)の売却価格が現在の相場水準で安定しており、解体業者にとっては概ね適正な収益水準だ。ただし輸送コスト上昇(軽油高)が解体・収集コストを押し上げており、手取り利益は縮小傾向にある。

Q: 円安の影響はどのくらいですか?

A: 1ドル160円の円安水準では、国内スクラップ3.8万円/tのドル換算は約238ドル/tとなり、韓国やベトナムの輸入コストとの比較で競争力がある水準だ。円高に転じれば輸出引き合いが減少し国内相場の下押し要因になる。

Q: 来週の注目ポイントは?

A: GW明けの製造業操業再開による工程スクラップ発生量の変化と、関東鉄源協同組合の輸出入札落札価格が最大の焦点だ。東京製鉄の鉄道輸送新路線の稼働開始も業界の関心を集めている。

まとめ — 今週のポイント3つ

  1. 東京製鉄の4月3回改定は「市場の感度が高まっている」証拠: 従来は月1〜2回だった改定が4月だけで3回になったことは、原料市況の振れ幅が大きく電炉各社が細かく対応せざるを得なくなっていることを示している。
  2. 「スクラップ」から「リサイクル鉄源製品」へ——業界の自己定義が変わる: カーボンニュートラルを背景に、鉄リサイクル工業会が業態転換を模索していることは、業界の将来的なコスト構造と価格の「底上げ」を示唆する重要なシグナルだ。
  3. 円安は輸出競争力を高めるが、輸送コスト(軽油高)と相殺される: 現在の円安局面はスクラップの輸出引き合いを高めているが、ガソリン・軽油の高騰による収集・輸送コスト増が手取り利益を圧縮しており、スクラップ業界全体の採算は複雑な局面にある。

鉄スクラップ市場は「産業廃棄物」から「脱炭素の主役原料」へとポジションが転換する歴史的な変節点にある。この転換期を正確に読んで調達戦略・価格戦略を再設計することが、製鉄・製造業双方に求められている。

出典・参考情報

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