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【2026年4月第5週】天然ゴム 週次レポート — TOCOM先物が前年比+33.5%の高水準・タイ産出低迷期×EV向けタイヤ増量需要が拮抗、日本のタイヤ・ゴム産業への影響分析

THE SUPPLIER · 素材カスケード分析

天然ゴム TOCOM前年比+33.5% — 低産出期×EV向けタイヤ増量需要の5層波及

2026年4月第5週(4月27日〜5月2日)
第1層: 上流ショック(実データ)
TOCOM天然ゴム先物(4月下旬)
390〜393
円/kg(52週高値400.70円)
前年比+33.55%・52週レンジ280〜400.70
ウィンタリング(産出低迷)期間
1〜5月
(タイ・インドネシア)
落葉期でラテックス産出が大幅減少→供給制約
EVタイヤの天然ゴム増量
+15%
(ICE車タイヤ比・Mordor Intelligence)
バッテリー重量対応で側壁強化→ゴム増量
タイヤ向け需要集中度
70%
(全需要の70%がタイヤ)
全鋼タイヤはNR比率が高く代替困難
伝播経路 — 5層カスケード
第1層
産地・農園
タイ(世界1位・535万t/年、産出低迷中)
ウィンタリング期で産出減・Lasiodiplodia病害も影響
6月以降の収穫期から産出回復へ
インドネシア(世界2位・約340万t/年)
同様に産出低迷期。白根腐病がスマトラに影響
代替調達先:ベトナム・インド・コートジボワール
第2層
加工・流通
TSR20・RSS(標準規格ゴム)
TOCOM・SICOM先物の原資産
タイヤメーカーが主要需要家として購買
ラテックス濃縮液
医療用手袋・コンドーム・接着剤に使用
衛生意識の高まりで安定需要を維持
第3層
タイヤ原料
ブリヂストン・住友ゴム・横浜ゴム(調達)
ブリヂストン:年間100万t超を調達
10円/kg上昇→年間100億円超のコスト増
Continental(タイ・ラヨン工場・€300M投資)
EV向けタイヤ需要増に対応した能力拡張
タイ産地でのバーティカル統合が進む
第4層
最終製品
乗用車・EV・トラックタイヤ
EVタイヤ使用量+15%→タイヤ単価上昇
タイヤ交換コスト増が消費者物価に波及
医療手袋・工業用ゴム品
Oリング・ホース・コンベヤベルト
製造業全般の基盤素材として安定需要
第5層
生活・マクロ
CPI(タイヤ・物流・自動車)
タイヤ交換費・トラック物流費に上昇圧力
2〜3ヶ月後に店頭タイヤ価格に反映
持続可能調達(EUDR対応)
EUの森林破壊防止規則(EUDR)が天然ゴム調達に適用
サプライチェーンの透明性確保が必須に
業界別アラート
タイヤメーカー(ブリヂストン・住友ゴム・横浜ゴム)
前年比+33.5%の原料高でコスト増加。EV向けプレミアムタイヤへのシフトで利益率維持戦略の加速が急務
要対応
即時〜3ヶ月
自動車メーカー(タイヤ選定・EV向け開発)
EV専用タイヤのゴム使用量+15%を車両BOM(部品表)に反映。タイヤメーカーとの長期調達価格の見直し交渉を開始
監視強化
1〜4ヶ月
工業用ゴム部品(Oリング・ホース・コンベヤベルト)
製造業向けゴム部品のコスト増が設備保全費に波及。合成ゴム代替の検討と長期調達契約の締結を推奨
注視
2〜4ヶ月
要注視

結論サマリー

  • 天然ゴムのTOCOM先物は52週高値400.70円/kgに近い水準で推移しており、過去12ヶ月で前年比+33.5%という大幅高を記録している
  • Investing.comのTOCOMデータによれば「52週レンジは280.00〜400.70円/kg、本日の取引レンジは390.00〜392.80円/kg」
  • 主要産地であるタイ・インドネシアは1〜5月が「ウィンタリング期間(樹木の落葉)」でラテックス産出量が大幅に減少する季節的供給制約期にある
  • Mordor Intelligenceの最新市場分析によれば「電気自動車の採用が天然ゴム市場を変革している。EV専用タイヤは厚い側壁と高度なトレッドコンパウンドが必要で、タイヤ1本あたりの天然ゴム使用量が15%増加している」
  • 天然ゴムの世界需要の70%がタイヤ向けに集中しており、自動車生産の変化(EV化)が天然ゴムの需要量を結果的に下支えするという「EV化の逆説的な恩恵」が生じている

【今週の動き】天然ゴムの現状

天然ゴム市場は今週、「春先の産出低迷期」と「中国の自動車向け購買の底堅さ」が組み合わさって、高水準での安定した推移が続いた。Investing.comのTOCOM先物データは52週高値400.70円/kgに対して390〜393円/kgという水準を記録している。Trading Economicsのゴム市場解説によれば「天然ゴム先物は約188米セント/kgで安定している。市場参加者は弱まった需要シグナルと季節的な供給制約のバランスをとっている」(2月9日時点)と解説されており、その後4月にかけてTOCOM先物は390円台へと上昇した。現在は「産出低迷期の終盤(5〜6月から主産地の収穫期に入る)」という時期的なタイムラインにあり、6月以降の産出回復がどの程度価格に影響するかが次の焦点だ。

直近5日間の値動き(TOCOM天然ゴム先物・円/kg)

日付価格推定 (円/kg)前日比主要ニュース
4月27日(月)390−0.5%中国連休前(5/1メーデー)の買い控えで軟化
4月28日(火)388−0.5%タイの産出低迷継続確認→下値は守られる
4月29日(水)393+1.3%中国の4月PMI製造業拡大→タイヤ需要期待で上昇
4月30日(木)391−0.5%月末の手仕舞い
5月1日(金)392+0.3%GW前。52週高値400.70には届かず高水準を維持

データソース: Investing.com「TOCOM Rubber Futures」(52週高値400.70円/kg確認)

今週の主要因

天然ゴムの価格を決める3つの要因がある。第一に、タイ・インドネシアの「ウィンタリング」という季節的供給制約だ。Trading Economicsの分析では「ゴムの木は1月の短いタッピング期間の後、2〜5月は産出が少なく、9月まで続くピーク収穫期に入る」と説明されており、現在まさにこの低産出期の終盤にある。第二に、中国・インドの自動車生産拡大による需要増加だ。Mordor Intelligenceのレポートによれば「天然ゴム市場は2025年の318億ドルから2031年に481.2億ドルへCAGR 7.13%で成長する見込みだ。EV専用タイヤのゴム使用量がICE車比+15%という特性が需要構造を変えている」。

第三に、中東紛争と合成ゴム価格の上昇による「相対的な天然ゴムの競争力強化」だ。SunSirsの詳細分析は「天然ゴムと合成ゴム(SBR)の価格差が10年ぶりの高水準に拡大した。原油価格下落時や合成ゴム採算悪化時は、タイヤメーカーが天然ゴム比率を高める調整を行う。中東紛争によるナフサ高騰はSBRのコストを押し上げており、天然ゴムの相対的な割安感が消えた状況だ」と分析している。

【今週の動きが意味するもの】5層カスケード分析

天然ゴムはその70%がタイヤに使われるという圧倒的な用途集中を持つ。特に重量トラック・建設機械・農業機械の全鋼タイヤ(オールスチールタイヤ)は天然ゴム比率が高く、代替が困難だ。390〜400円/kg水準での高止まりは、日本のタイヤ3社(ブリヂストン・住友ゴム・横浜ゴム)の製造原価に直結する。

第1層・第2層: 原料と中間材

天然ゴムのサプライチェーンは「タイ(世界シェア36%・2023年535万トン)・インドネシア(同27%)・ベトナム・インド・中国」という東南アジア集中型だ。Expert Market Researchの市場分析によれば「Lasiodiplodia theobromae病害がタイ北東部のプランテーションの収穫に影響を与えており、白根腐病(ホワイトルートディジーズ)もスマトラの成熟プランテーションの15%超に影響している」。これらの病害は長期的な供給構造を弱体化させる要因として注目されている。Mordor Intelligenceの報告ではコンチネンタル社がタイのラヨン工場に3億ユーロ超を投資し(+300万本/年)タイヤ生産能力を拡大しており、タイが世界最大のゴム産地であると同時にタイヤ製造拠点としても成長していることが示されている。

第3層: 中間製品の動向

天然ゴムの中間製品は標準化品(TSR20・SMR20等)とラテックス濃縮液に大別される。TSR20(技術仕様ゴム20番)はタイヤ向けの標準品として最大の市場を持ち、TOCOM先物の主要原資産だ。TOCOMのデータに示される390〜400円/kgという水準は、ドル換算で約2,600〜2,700ドル/MTに相当する(160円/ドル前提)。ブリヂストンは年間100万トン超の天然ゴムを調達しており、10円/kgの上昇は単純計算で年間100億円超のコスト増を意味する。

第4層: 最終製品への波及

タイヤ(全鋼・乗用車・EV専用)— 天然ゴム需要の70%を占める最大用途

EV専用タイヤはバッテリー重量対応のため側壁を厚くする必要があり、通常のICE車タイヤよりゴム使用量が15%増加する(Mordor Intelligence)。日本のEV普及加速とともに、タイヤあたりの天然ゴム使用量増加が業界全体の需要を底上げしている。

医療用手袋・ラテックス製品— コロナ後も安定した需要

マレーシア・タイ・インドで生産される医療用手袋(天然ゴムラテックス製)は、パンデミック後も衛生意識の高まりで安定需要を維持している。

工業用ゴム(Oリング・ホース・コンベヤベルト)— 製造業全般の基盤素材

自動車・機械・建設・食品産業で使われるシール材・ホース・コンベヤベルトに天然ゴムが使用されており、日本の製造業の生産活動全般に影響する。

防振ゴム・免震材料(建設・機械)— 建設・鉄道向け需要が安定

建物の免震装置・鉄道車両の防振装置・機械のマウント材に天然ゴムが使われており、日本国内のインフラ整備投資が需要を支えている。

履物・スポーツ用品(天然ゴムソール)— 職人品質でのニーズが根強い

高品質の革靴・スポーツシューズのソール材料として天然ゴムが使われており、品質重視の日本市場での需要は安定している。

第5層: 生活・マクロへの波及

天然ゴム価格の前年比+33.5%という上昇は、タイヤ交換コスト・自動車製造コスト・工業機械メンテナンスコストを通じて日本経済全体に波及する。特にトラック・バス・農業機械のタイヤコストは物流費・農業コストに直結し、CPI(消費者物価指数)の「交通・運輸」項目および「食料品」への間接的な上昇圧力になる。ブリヂストン・住友ゴム・横浜ゴムの価格改定(タイヤ値上げ)が2〜3ヶ月後に消費者に届く形で物価に転嫁される。

【今後の展望】来週・1ヶ月先・3ヶ月先

来週(7日先)の注目ポイント

日付イベント影響
5月〜6月タイ・インドネシアの収穫期開始産出回復が始まれば供給側の下押しが入る
5月上旬ANRPC月次生産データタイ・インドネシアの産出量を公式確認
5月中旬中国の4月自動車販売統計タイヤ向け天然ゴム需要の先行指標
随時円ドル相場の動向TOCOM円建て価格への影響(円安=円建て価格押し上げ)

タイの産出回復が始まる6月以降、供給増による価格調整が入る可能性がある。来週から「収穫期へのカウントダウン」としてショートポジションが取られやすい局面になる可能性がある。

1ヶ月先の見通し

タイのメインタッピングシーズン(6〜9月)に入れば、供給量の増加で370〜390円/kgへの調整が見込まれる。ただしEVタイヤ需要の増加・中国の継続的な購買が下値を350〜360円以上に守る構造だ。

3ヶ月後の構造的展望

天然ゴム市場の3ヶ月後の主要変数は「中国の経済刺激策の効果」と「主産地の生産能力投資」だ。Natural Rubber Market研究論文(2026年)によれば「タイ・インドネシア・マレーシアの天然ゴム生産は長期的な供給サイクルの変曲点にある。新規プランテーション投資の不足が2028〜2030年の供給制約につながる可能性がある」。長期的にはEV向けタイヤ需要の増加と供給のゆっくりした回復が、天然ゴム価格の構造的な強気傾向を維持する見込みだ。

リスクシナリオ

強気シナリオ(410〜450円/kg): タイに台風・洪水等の気象被害、または中国の大規模景気刺激策が追加購買を促す。中立シナリオ(360〜400円/kg): 季節的な供給回復と需要の底堅さが均衡する。弱気シナリオ(300〜360円/kg): 主産地で豊作・中国自動車市場の需要減退・合成ゴムの価格低下が重なる。

【業界別】今週の動きへの対応指針

調達担当者・購買部門

ブリヂストン・住友ゴム・横浜ゴム・東洋ゴムの購買担当者は、6〜9月の産出回復を見越したスポット購買の機会と、長期的なEV需要増加への備えという2つのタイムラインを同時に管理する必要がある。TOCOM先物を活用したヘッジ戦略の見直し(390〜400円/kgでの先売りヘッジ)も選択肢だ。ANRPCの月次データを継続的にモニタリングしながら産出量の方向性を確認することを推奨する。

経営者・経営企画

タイヤメーカーは原料コスト上昇を製品価格に転嫁する交渉を自動車メーカー・交換用タイヤ市場で進める必要がある。EV専用タイヤ(高荷重対応・低転がり抵抗)へのシフトは、タイヤあたりの天然ゴム使用量増加と単価向上を同時にもたらすため、EV向けタイヤ製品ミックスの強化が利益率向上の鍵だ。

投資家・アナリスト

ブリヂストン(5108)・住友ゴム工業(5110)・横浜ゴム(5101)の株価は天然ゴム価格と為替(円ドル)の両方に影響される。天然ゴム高×円安は原料コスト増要因だが、プレミアムタイヤ(EV向け・安全性重視)へのシフトが利益率改善に貢献するため、単純な「原料高=株安」ではない複雑な構造を理解することが重要だ。

よくある質問(FAQ)

Q: 天然ゴムはなぜ前年比+33.5%も上昇したのですか?

A: タイ・インドネシアの産出低迷(ウィンタリング期・病害)と中国の自動車生産拡大による需要増加が主因だ。合成ゴム(SBR)のナフサ高騰による価格上昇も天然ゴムの相対的な競争力を維持させ、代替切り替えによる需要減少を抑えた。

Q: EVタイヤが天然ゴム需要を増やすのはなぜですか?

A: EV専用タイヤはバッテリー重量(通常の1.5〜2倍)を支えるため側壁を厚くする必要があり、タイヤ1本あたりの天然ゴム使用量がICE車タイヤより15%多い。EVの台数増加は単純計算でタイヤ需要を増加させ、1台あたりのゴム使用量も多いという「二重の需要拡大」が起きる。

Q: タイやインドネシアの生産はいつ回復しますか?

A: 通常は6月〜9月がピーク収穫期で、産出量が大幅に増加する。今年は病害の影響がどの程度出るかが注目点だ。タイのウィンタリング明けの産出状況がANRPCの5〜6月データで確認できる。

Q: 日本のタイヤメーカーへの影響は?

A: ブリヂストン(年間調達100万トン超)・住友ゴム・横浜ゴムの製造原価が前年比で大幅に上昇している。タイヤ製品の価格改定と、EV向け高付加価値タイヤへのシフトによる利益率維持が業界共通の課題だ。

Q: 来週の注目ポイントは?

A: タイ・インドネシアの産出回復の開始時期確認とANRPCの月次データが最大の焦点だ。中国の4月自動車販売統計もタイヤ向け天然ゴム需要の先行指標として重要だ。

まとめ — 今週のポイント3つ

  1. 「EV化が天然ゴム需要を増やす」という逆説: EV専用タイヤのゴム使用量が15%増という事実は、「電動化が内燃機関系素材を不要にする」という単純な図式を覆している。EVが普及すれば天然ゴム需要もむしろ増加するという構造が、価格の長期的な下値を守る。
  2. 「ウィンタリング期の終わり」という季節的転換点が5〜6月に到来する: 産出回復で価格が一時調整する可能性があるが、それは次の「収穫期前の調達機会」でもある。390〜400円/kgを上回る新高値更新は、この産出回復を消化してからの話となる。
  3. タイ病害リスクが長期供給制約の新しいリスク要因として浮上している: Lasiodiplodia theobromae病害がタイ北東部に影響しており、単年の産出低迷ではなく中長期的なプランテーション生産力の低下につながる可能性がある。これは天然ゴムの構造的な供給制約として注視が必要だ。

天然ゴム市場は今週、「産出低迷期の高値圏維持」という局面の中で、EV需要増加・病害リスク・合成ゴムとの価格競争という3つの中期テーマを内包している。タイヤという「生活インフラ」の基盤素材として、天然ゴムの価格動向は製造業コストから物流費まで幅広く影響する重要な市況指標だ。

出典・参考情報

Direct Research Journal「Analysis of Trends of Natural Rubber prices」(2026年版)

Investing.com「TOCOM Rubber Futures Historical Data」(52週高値400.70円/kg・前年比+33.55%確認)

Mordor Intelligence「Natural Rubber Market 2026」(EV向けタイヤ+15%・Continental投資情報)

SunSirs「Natural vs. Synthetic Rubber: Price Gap Poised to Widen Further」(NR・SBR価格差分析)

Trading Economics「Rubber」(季節性・市場解説)

Expert Market Research「Natural Rubber Market」(病害・市場規模)

Procurement Resource「Natural Rubber Price Trend 2026」(価格推移・予測)

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