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【2026年5月第4週】LME銅 週次レポート|史上最高値圏13,500ドル台で「戦争割引」を拒否する銅の構造需要とグラスバーグ不在

製造業サプライチェーン研究所

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THE SUPPLIER · 7層素材カスケード分析

LME銅|史上最高値圏13,500ドル台 グラスバーグ不在とAI需要が牽引する構造高

2026年5月第4週(5月19〜22日)
第1層: 上流ショック(実データ)
LME銅(3ヶ月先物)
13,515
USD/t · 5月22日終値
年初来 ▲約10% 史上最高値圏
COMEX銅先物
6.28
USD/lb · 5月21日(木)
前日比 ▲2.0%
2026年精錬銅需給不足(推計)
15〜40万
t(各機関推計幅)
グラスバーグ停止+需要急増
古河電工 FY2025営業利益
639億
円(前期比+168億) 5月決算
5月ストップ高 DC需要牽引
伝播経路 — 7層カスケード(原料から店頭まで)
第1層上流原料
銅鉱石(グラスバーグ等)
Block Cave 40〜50%稼働 復旧Q2以降
LME銅スポット価格
$13,515/t 年初来+10%
第2層一次加工材
銅地金・カソード
JX金属 銅建値公示 高水準継続
精錬銅(スクラップ含む)
コデルコ製錬所 一時停止あり
第3層中間材料
銅条・銅板・銅管
古河電工・住友電工 建値高騰
銅荒引線(伸線用)
電線メーカー 価格改定継続中
銅箔(電子材料向け)
PCB用 コスト上昇 電子部品に波及
第4層部品・素子
電線・ケーブル
古河電工 DC向け超多心ファイバー量産
コネクタ・ハーネス
住友電工 自動車・EV向け転嫁交渉中
変圧器コイル・熱交換器管
三菱電機・日立 DC変圧器需要急増
第5層組立品
EVモーター・バッテリー周辺
BEV 1台あたり銅使用量 ICEの3〜4倍
変圧器・配電盤
データセンター向け リードタイム長期化
エアコン熱交換ユニット
ダイキン・パナソニック 原価上昇
第6層最終製品
EV・ハイブリッド車
トヨタ・ホンダ・日産 転嫁交渉中
エアコン・家電
秋冬改定に銅高反映見込み
新築住宅・太陽光設備
電気配線・給水管コスト上昇
第7層店頭・家計
家電量販店(家電価格)
2026年秋冬改定 値上げ圧力
新車価格・電力設備
銅高転嫁 2〜3ヶ月タイムラグ
CPI(耐久財・工業製品)
PPI非鉄金属 上昇 CPI波及継続
業界別アラート
電線(古河電工・住友電工)
DC向け需要急増で増益 銅高コストを価格転嫁+高付加価値化で吸収
業績好調
古河電工5月ストップ高
恩恵
自動車(EV)
トヨタ・ホンダ・日産 EV化で銅使用量増 転嫁交渉継続
コスト転嫁中
2〜3ヶ月タイムラグ
監視
変圧器・インフラ機器
三菱電機・日立 DCデータセンター変圧器 受注過多でリードタイム長期化
供給逼迫
納期12〜24ヶ月超
警戒
電機・家電
パナソニック・ダイキン エアコン熱交換器・モーターコイル コスト上昇
原価率上昇
秋冬改定に反映予定
監視
新築住宅・太陽光
電気配線・給水銅管・インバーター部品 建築コスト上昇圧力
コスト上昇
5月第4週時点
監視
銅スクラップ・リサイクル
銅高を受け国内スクラップ回収業 買取価格上昇 回収量増
活況
銅価連動
経過観察

結論サマリー

LME銅(3ヶ月先物)は5月22日、13,515.50ドルで週を終えた(前日比1.03%安)。

週の高値は月曜の13,643ドルと、2026年1月29日のスパイク以来の最高水準を更新した。

通常、地政学的な軍事衝突は工業金属を下押しするが、銅は「戦争割引」を拒否しており、グラスバーグ・エルテニエンテという二大鉱山の供給喪失とAIデータセンター需要が価格を支えている。

古河電工は5月決算でストップ高を記録し、データセンター向け需要が収益を牽引したことを示した。

日本の電線・自動車・インフラ各業界では銅建値(JX金属公示)の高水準が原価を直撃し続けており、価格転嫁の進捗が各社の業績格差を生んでいる。

今週の動き

LME銅は2026年5月第4週(19〜22日)、米イラン和平交渉への楽観論を背景に週初に急伸した後、週末にかけて利益確定に押された。

週初月曜に13,643ドルまで上昇したのは、トランプ大統領がイランへの攻撃を一時中止して交渉を優先すると表明したことで、エネルギーコスト低下と世界経済への悪影響縮小という見通しが金属市場全体に買いを呼んだためだ。

COMEX銅先物も同週木曜に6.28ドル/ポンドまで上昇し、前日比2%高となった。

週末に向けて利食い売りが入り、LMEは13,515.50ドルで引けたが、これは年初来約10%高の水準だ。

直近5日間の値動き

月曜(19日)は13,643ドルに上昇し、週の高値を記録した。

LME全体の指数が金曜終値で史上最高値を更新したとOilPriceが報じており、アルミが2%超、ニッケルが1.9%上昇するなど、銅を含む非鉄金属全体に強い買いが入った局面だ。

火曜(20日)はルビオ国務長官の「前向きな兆し」発言を受けて上値を試す場面もあったが、COMEX在庫が544,887トンと2月の記録的水準(545,867トン)に迫っていることが重しとなり、13,500〜13,600ドル台での推移となった。

水曜(21日)はアルアラビーヤ誤報による市場の混乱がいったん金属市場を直撃したが、油価急落が製造業コスト低下の期待を高めたことで、LME銅は13,409.50ドルで引けた。

木曜・金曜(21〜22日)にかけて週末ポジション整理と保険再開に関する慎重姿勢から小幅に下落し、13,515.50ドルで週引けとなった。

今週の主要因

第1の要因は、AI・データセンター向けの構造需要拡大だ。

JPモルガンはAI関連インフラが2026年に約11万トンの銅需要増をもたらすと推計している。

BloombergNEFの予測では、データセンター向け銅ストックは2035年までに430万トン超に達する。

第2の要因は、複数の主要鉱山での供給喪失だ。

インドネシアのグラスバーグ(フリーポート・マクモランが操業、世界第2位)のブロックケーブ部門は2025年後半の泥砂崩落により稼働が約40〜50%水準に落ちており、完全復旧は2026年第2四半期以降の見通しだ。

チリのコデルコ・エルテニエンテではトンネル崩落事故により2025年に4万8000トン、2026年にもさらに約2万5000トンの生産損失が見込まれている。

第3の要因は、鉱山供給の構造的な逼迫だ。

JPモルガンは2026年の精錬銅の需給不足を33万トン、ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンスは40万トンと推計しており、いずれも市場が賄えない水準だ。

7層カスケード分析

銅の7層カスケードは原油と異なり、精製・加工の付加価値が大きく、川下製品ほど「銅コスト比率の変動」が直接利益を動かす構造となっている。

第1層と第2層: 上流原料と一次加工材

第1層は鉱山から生産される銅精鉱(コンセントレート)と精錬銅(銅地金・カソード)だ。

LMEのオフィシャル価格がグローバルベンチマークとなり、日本ではJX金属が公示する銅建値がその翌営業日に適用される仕組みだ。

5月第4週のLME3ヶ月先物は13,515ドル前後で推移しており、これは2025年平均(年初のファクターベースで概算すると10,000〜11,000ドル台)から大幅に高い水準だ。

第2層の一次加工材は、精錬銅から製造される銅地金・銅カソードだ。

チリのコデルコがカレトネス製錬所をフィードストック不足で一時停止するなど、精錬段階でも供給制約が起きている。

チリの銅生産はコデルコ単独で世界生産の6.1%を占めるが、同社の鉱石品位は2025年までの10年間で1.02%から0.66%へと約35%低下しており、生産コストが構造的に上昇している。

第3層: 中間材料

第3層は銅条・銅板・銅管・銅線(荒引線)などの汎用形状素材だ。

日本では古河電工・住友電工(住友電気工業)・フジクラ・SWCCが主要な加工メーカーとして銅地金を調達し、各種形状に加工する。

銅条は自動車向けコネクタ・ハーネス、電子機器向けプリント基板、電力インフラ向け母線などの原材料として幅広く使われる。

現在の銅建値(JX金属公示)は月間平均で2,000万円/トン台の超高水準にあり、2025年同期比で40%超上昇している局面の業者も多く、コスト管理が業績を直接左右している。

第4層: 部品・素子

第4層では電線・コネクタ・変圧器コイル・プリント基板・熱交換器チューブなどが主役となる。

古河電工は5月決算でデータセンター関連増販が620億円の利益増加ドライバーとなったことを明示しており、2026年度(2027年3月期)の通期予想は売上高1兆4,600億円・営業利益950億円と大幅増益を見込んでいる。

同社は2026年3月に世界最高クラスとなる13,824心の超多心光ファイバーケーブルの量産を開始しており、銅導体とファイバーを組み合わせたデータセンター向け製品が次の成長エンジンになっている。

住友電工は自動車ハーネス・送電用高圧ケーブル・EV用モーターコイルで銅の主要消費者として業界トップに立つ。

銅価高騰下での製品価格改定は、大口契約先(自動車・電機メーカー)との交渉力が直接利益率を決定する局面が続いている。

コネクタメーカー各社では銅を中心とする非鉄金属の建値連動契約の比率を高め、四半期ごとの価格レビューを標準化する動きが広がっている。

第5層: 組立品・中間製品

EVモーター・変圧器・エアコン熱交換器・配電盤などが第5層に位置する。

EVモーターはコイル銅線の使用量が多く、従来の内燃機関車に比べてハイブリッド車で約1.5倍、BEV(電気自動車)で約3〜4倍の銅を使用すると言われる。

トヨタ自動車・ホンダ・日産自動車などの国内自動車メーカーはEV比率の引き上げを続けており、銅需要の中期的増加は避けられない見通しだ。

変圧器は電力インフラ整備(送配電網の強化・データセンター向け受変電設備)で需要が急増しており、日立エナジー・三菱電機などの変圧器部門は需要過多による生産リードタイム長期化が続いている。

第6層: 最終製品への波及

自動車業界

銅・アルミ・鉄・樹脂で原料費の30〜40%を占める自動車のコスト構造において、銅の高騰は特にEVで影響が大きい。

トヨタ・ホンダ・日産はEVシフトを加速しつつ、原材料費上昇分を販売価格に転嫁しきれているかどうかが粗利を左右している。

電機・家電業界

エアコンの熱交換器(銅管使用)・モーター(コイル銅線)の製造コスト上昇が続いており、パナソニックホールディングス・ダイキン工業などの家電・空調メーカーでは原価率の管理が重要課題となっている。

インフラ・建設業界

データセンター・太陽光発電・風力発電の電力インフラで使う高圧ケーブル・変圧器の納期が長期化しており、銅コストの上昇が再エネプロジェクトのIRRを悪化させる方向に働いている。

電子・半導体業界

プリント基板(PCB)の銅箔コスト上昇が、スマートフォン・PCサーバーなどの製造原価を直撃しており、台湾・韓国・日本の電子部品メーカーの調達コスト管理を難しくしている。

第7層: 店頭・家計・マクロへの波及

銅の価格上昇が最終的に消費者に届くルートは長く、転嫁タイムラグが大きいのが特徴だ。

電線から自動車部品への転嫁で約2ヶ月、部品から完成車への転嫁でさらに2〜3ヶ月かかるため、現在の銅建値高が新車価格に完全に反映されるのは2026年秋以降となる。

新築住宅の電気配線・給水銅管のコスト上昇は、ハウスメーカーの建築コストを押し上げており、新築価格の上昇要因の一つとなっている。

エアコン・冷蔵庫などの白物家電は次の価格改定(各社の春・秋改定)に銅コストの上昇が折り込まれる見通しで、家電量販店の店頭価格は2026年秋冬にかけて上昇圧力が続く。

企業物価指数(PPI)の「非鉄金属」セクションはすでに大幅上昇が続いており、時間差をともなってCPIの工業製品・耐久財価格に波及していく。

今後の展望

供給側の構造的不足と需要側のAI・EV成長が重なる「銅のスーパーサイクル」の本格局面が続く見通しだ。

来週の注目ポイント

6月第1週はグラスバーグの復旧タイムラインに関するフリーポート・マクモランの発表が最大の注目点だ。

ブロックケーブル部門の再稼働が第2四半期内に確認されれば、下押し材料となりうる。

LME在庫が395,575トンまで低下しているが、COMEX在庫が記録水準に迫っていることから、需給の地域的な不均衡が続いており、LMEとCOMEXの価格差に注意が必要だ。

中国の5月PMI・製造業生産統計が発表されれば、需要サイドの確認材料として機能する。

1ヶ月先の見通し

6月は米イラン交渉とグラスバーグ復旧タイムラインの2つが価格を動かす主要変数となる。

平和合意が実現し経済回復期待が高まれば、銅は14,000ドル台に再挑戦する可能性がある。

反対に交渉決裂・景気後退懸念が強まれば、JPモルガンが下値目安として示す11,100〜11,200ドルへの調整リスクが浮上する。

現状の13,500ドル前後は「強気のベースケース」として多くの機関投資家が許容しているレンジだ。

3ヶ月先の構造的展望

2026年の精錬銅需給不足は15万〜40万トン(機関によって幅あり)と推計されており、この不足は短期間では解消しない。

グラスバーグの完全復旧が2027年、チリの新規プロジェクト13件の多くが本格生産に入るのが2028〜2029年であることを踏まえると、13,000〜15,000ドルの高水準が構造的に続くシナリオが基本となる。

AIデータセンターの建設ラッシュ(2026〜2028年が最も旺盛な需要期と予測)と電力インフラの更新需要が重なることで、銅は「景気の体温計」としての性格を超えて「成長資産」の性格を帯びつつある。

リスクシナリオ

シナリオ1(下振れ)は中国の景気急減速だ。

JPモルガンはブレント油価が110ドル近辺で推移した場合、中国を含む銅需要成長が年間で1.4ポイント押し下げられると試算しており、需要の失速は短期的に12,000ドルを割り込む調整をもたらしうる。

シナリオ2(想定内)はグラスバーグの段階的復旧とAI需要の継続だ。

銅は13,000〜14,500ドルのレンジを維持し、年間を通じた需給不足は15万〜20万トン規模で収まる。

シナリオ3(上振れ)はグラスバーグの復旧遅延とEV需要の加速だ。

需給不足が40万トンを超え、14,500ドルの史上最高値を更新して15,000ドル台を目指す展開となる。

業界別の対応指針

調達担当者

銅建値はLME×為替の積であり、為替ヘッジと銅先物ヘッジを組み合わせた「2段階ヘッジ」が最も有効な調達戦略だ。

大口需要企業はJX金属との長期サプライ契約に先物リンクのフォーミュラを組み込むか、LMEの月間平均先物(MAF)を活用した平準化調達を検討すべき局面にある。

月次・四半期ごとの銅建値連動型価格改定条項を取引先との契約に明文化しておくことが、コスト変動を自社内に留めないための実務上の必須対応だ。

経営者

銅の構造的高値が2028〜2029年まで続くシナリオを前提に、川下製品の価格改定ロードマップを3年単位で設計すべき局面だ。

銅使用量の削減(アルミへの代替、リサイクル銅比率の引き上げ)と高付加価値製品へのシフトを同時並行で進めることが、原料高を吸収しながら利益率を維持するための中期戦略となる。

古河電工がデータセンター向け光ファイバーと水冷モジュールで高成長を実現したように、「銅を使うが銅価に負けない製品ミックス」への移行が業界全体のテーマだ。

投資家

銅関連の日本株では古河電工(5801)・住友電気工業(5802)・フジクラ(5803)・SWCC(5803グループ外)が直接受益銘柄だ。

古河電工は5月決算でストップ高を記録し、2026年度の営業利益950億円(前期比+311億円)を見込んでいる。

JX金属(JX Holdings傘下)の上場後の評価も、銅価高止まりの恩恵を直接受けるE&P・精錬事業を持つ点で注目に値する。

よくある質問

Q1: 今週、LME銅はなぜ高値圏を維持しているのですか?

グラスバーグ・エルテニエンテの供給喪失とAI・データセンター向け銅需要の急増が同時進行しており、2026年の精錬銅需給不足は15万〜40万トンと推計されているためだ。

通常は地政学的衝突が金属を押し下げるが、銅はその構造的強さゆえに「戦争割引」を拒否している。

Q2: 銅の高値はいつまで続きますか?

グラスバーグの完全復旧が2027年、チリ新規鉱山の本格稼働が2028〜2029年とみられることから、13,000〜15,000ドルの高水準が構造的に続く可能性が高い。

中国の景気急減速が起こった場合には12,000ドルを割り込む調整もありうる。

Q3: 自動車・電機メーカーは銅高騰にどう対応していますか?

価格改定(銅建値連動条項の導入)とアルミへの代替(ハーネスの細線化・アルミ電線化)が並行して進んでいる。

EVシフトが進むほど銅使用量が増える逆説的な構造があり、「使用量削減」と「銅高価格転嫁」を両立させることが課題だ。

Q4: 日本の銅建値の決まり方を教えてください。

JX金属が公示する銅建値は、前日のLME公式価格(3ヶ月先物のオフィシャルプライス)に為替レートを乗じて算出される。

LMEが13,500ドル、為替が155円の場合、概算で銅建値は約209万円/トン(1トン≒1000kg)となる。

Q5: 消費者の家電価格にはいつ反映されますか?

電線から部品への転嫁に約2ヶ月、部品から最終製品への転嫁にさらに2〜3ヶ月かかるため、現在の銅価上昇が家電店頭価格に完全に反映されるのは2026年秋冬の改定タイミングとなる見通しだ。

編集部解説:日本への波及

銅は「産業のビタミン」と呼ばれ、経済のあらゆる血管を流れる。

LME銅が史上最高値圏にある今、日本の製造業が直面しているのは「値上がりの痛み」だけではなく、銅を多用する製品の価値が構造的に上昇するという「チャンスの読み替え」でもある。

日本の主要業界への影響

古河電工の5月決算が端的に示したように、この局面で最も恩恵を受けているのは「銅を加工・高付加価値化して販売できる企業」だ。

古河電工は2025年度にデータセンター関連増販で620億円の利益増加を達成し、営業利益639億円(前期比+168億円)を実現した。

2026年度は売上高1兆4,600億円・営業利益950億円(前期比+311億円)という大幅増益を計画しており、為替前提を1ドル=150円としているため、現状の円安水準(150〜155円台)が維持されれば上振れ余地もある。

2026年3月には世界最高クラスの超多心光ファイバーケーブル(13,824心)の量産を開始し、データセンター向け通信インフラの核心技術を押さえた。

同社はまたデータセンターサーバー向け水冷モジュール事業でも2026年度60億円・2027年度250億円の売上拡大を計画しており、単なる「電線屋」から「AIインフラの中枢企業」へと評価が移行している。

一方、住友電気工業は自動車用ワイヤーハーネス・高圧送電ケーブル・EV用モーターコイルという「三正面作戦」で銅を大量消費する立場にあり、銅建値の四半期連動による価格転嫁を取引先自動車メーカーと継続的に交渉している。

銅高騰が製造業全体にとってコスト圧力となる一方、電線業界は「中間加工者」として原料高を製品価格に転嫁しやすい立場にある。

問題は川下の自動車・家電メーカーだ。

トヨタ自動車・ホンダはEVシフトを進めるほど車両1台あたりの銅使用量が増える構造にあり、「脱炭素に向かうほど銅コストが上がる」というジレンマに直面している。

商社マン視点の先読みポイント

丸紅は銅の上流権益(チリのエスコンディーダ等)と川下の電線・銅加工事業を持つ総合商社として、今回の局面を「バリューチェーン全体での収益最大化」という視点で見ている。

今の丸紅の銅担当者が取るべき行動の第1は、グラスバーグの復旧スケジュールを精密に追うことだ。

ブロックケーブル部門の第2四半期中の部分復旧が確認された瞬間に銅先物は下方に動く可能性があり、その前に現物の長期契約でコストを固定しておくことが最重要だ。

第2は、チリの新規プロジェクト13件のどれが2027〜2028年に本格稼働するかを先読みした上流投資の見極めだ。

チリはロバート・カストが主導する法的安定性の強化で採掘許可のスピードが上がっており、複数プロジェクトが計画より早く動き出す可能性がある。

第3は、AIデータセンター向け銅需要の地域別分布の把握だ。

北米のハイパースケーラー(アマゾン・グーグル・マイクロソフト・メタ)向けのサプライチェーンに入り込んでいる商社と電線メーカーは、ドル建て収益の拡大という形で円安・銅高の「ダブル恩恵」を受けている。

「今、商社マンならどう動くか」を一言で言えば、グラスバーグの復旧前に3ヶ月先の銅先物をコール買いでロングし、復旧確認後に利確する戦略を取りながら、中期的には上流権益の追加取得か川下の電線加工事業への参画強化で銅バリューチェーン全体の取り込みを深める方向に動く局面だ。

まとめ

LME銅の13,500ドル台維持は、グラスバーグ・エルテニエンテという供給源の喪失とAIデータセンター需要という二つの構造的力が支えているものだ。

通常の「地政学的リスク=金属下落」という法則が銅では通用しておらず、これは市場参加者が今回の危機よりも構造的な供給不足を重視していることの表れだ。

古河電工の5月決算ストップ高が示すように、銅を高付加価値製品に転換できる企業にとって、この局面は収益拡大のチャンスだ。

一方で自動車・家電の川下メーカーは転嫁交渉と原価管理の両立というハードな実務に直面しており、価格改定ロードマップの整備が喫緊の課題となっている。

2028〜2029年まで続く構造的需給不足を前提に、電線・電力インフラ各社は銅を「戦略素材」として長期的に確保する体制構築に本腰を入れるタイミングだ。

AIとEVの二つの巨大需要が重なる今後5〜10年、銅はコモディティではなく「成長の中核素材」として市場に位置づけられていく。

出典

製造業サプライチェーン研究所

基板実装・EMSを起点に、電子部品調達、原材料市況、調達リスク、価格転嫁、製造コストまで。 製造業の調達・営業・経営判断に使える有料レポート、企業データ、Excelツールを販売。 ニュースを現場で使える判断材料に変換します。

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