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【2026年5月第3週】銀 週次レポート

製造業サプライチェーン研究所

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THE SUPPLIER · 7層素材カスケード分析

銀 週次レポート — 米中停戦で+7.3%→CPI・PPIで-10.6%、産業と貴金属の二面性が週内で激突

2026年5月第3週(5月11日〜16日)
第1層: 上流ショック(実データ)
銀スポット(COMEX)
77.52
USD/オンス(5月15日終値)
週内高値$87→金曜-10.61%|ATH$121.64から-36%
金銀比率(週内変動)
55→58.9
(月曜55→金曜58.9:1)
1週間での激変|近年最速の圧縮→拡大
シルバーサプライ赤字(2026年予測)
4,630万
オンス(6年連続赤字・前年比+15%)
累積取崩7.62億オンス(2021年以降)
国内銀小売(田中貴金属・参考)
約394
円/g相当(スポット換算・3月は477円/g)
3月ATH比で急落も依然高水準
伝播経路 — 7層カスケード(銀鉱山から太陽光・電子機器の店頭まで)
第1層上流原料
銀スポット(COMEX・LBMA)
$77.52/oz|週内$72→$87→$77.52の乱高下
副産物採掘(金・銅・鉛の随伴)
銀の約75%は他金属の副産物として採掘
第2・3層地金・中間材
※両層は一体化
ファインシルバー(99.9%地金)
三菱マテリアル・DOWA・田中貴金属が精製
銀ペースト・銀粉・銀めっき液
太陽電池セル向け工業用中間材料
第4層部品・素子
太陽電池セル(TOPCon・ペロブスカイト)
1セル10〜20g銀ペーストを使用
MLCC内部電極・LEDリフレクター
村田製作所・TDKが主要メーカー
車載パワー半導体(銀焼結材)
EV向けSiCデバイスのダイアタッチ材
第5層組立品
太陽光パネルモジュール
京セラ・シャープ・パナソニックが国内製造
車載パワーモジュール・二次電池
EV向けインバーターに銀焼結材が採用
第6層最終製品
太陽光発電システム(家庭・産業用)
銀高で設置コスト増、シルバーフリー技術競争
EV・スマートフォン・電子機器
最終製品価格への銀コスト波及は限定的
銀アクセサリー・銀食器
高値で買い控え→売却シフト継続
第7層店頭・家計
太陽光設置コスト・脱炭素コスト
銀高騰で再エネ導入コストが家計に上乗せ
宝飾品・銀貨店頭価格
3月477円/gから約394円/gに下落で買い戻し
都市鉱山・銀回収バリュー
廃材銀の売却価値が高水準で推移
業界別アラート
太陽電池セルメーカー(銀ペーストコスト)
銀$77〜$87/ozの幅広いレンジが設計コストを不安定化。TOPCon→ペロブスカイトへの移行加速を検討
要警戒
継続中
コスト高騰
村田製作所・TDK(MLCC電極材)
MLCC内部電極の銀・パラジウム合金コスト管理が四半期業績を左右。銀高でパラジウム代替を一部検討
注意
Q2価格交渉中
代替検討
DOWAホールディングス(都市鉱山)
廃電子基板・廃太陽光パネルからの銀回収が高値環境で収益増。銀回収ビジネスが中長期の成長エンジンに
恩恵
5月時点
都市鉱山収益増
住友金属鉱山(銀採掘・製錬)
副産物銀の採掘収益が高値で良好。ただし銀スポット株価連動で短期変動あり
恩恵
5月時点
採掘益高水準
インド(輸入関税15%引上げ)
金と同時に銀の輸入関税が6%→15%に引上げ(5月12日)。宝飾・投資需要の短期抑制要因
要警戒
5月12日発効
需要抑制
三井物産(銀・工業材料トレード)
中国太陽電池メーカー向けファインシルバー長期供給契約の押さえが今週の最重要課題。停戦90日間が窓口
収益機会
90日停戦中
長期契約狙い

結論サマリー

銀スポット(COMEX)は5月11日(月)に+7.3%急騰し87ドル台、同15日(金)には-10.61%で77.52ドルまで急落するという、週内に落差20ドル近い極端な展開を演じた。

米中関税90日停戦の「産業需要復活」期待で大きく買われ、米4月CPI3.8%・PPI年率6%という「FRB利上げ観測」で金の2.5倍の速度で叩き売られた。

これは銀が金(需要の約5%が産業用)と違い、需要の約60%を産業用途が占める「二面性の金属」であることを市場が1週間で可視化した。

金銀比率は5月11日に55付近まで急圧縮し、14〜15日には58.9:1まで再拡大した。

構造面では2026年も供給不足6年連続(赤字約4,630万オンス)が続いており、太陽光パネル・半導体・EV向け長期需要は変わっていない。

今週の動き

一週間に「強気シナリオ」と「弱気シナリオ」の両方を体験した銀相場は、素材市場のなかで最も乱高下が激しかった週となった。

銀の1月史上最高値は5月11日時点でまだ$121.64(1月29日)に残っており、4月末から5月初旬は$70〜$72水準でのもみ合いが続いていた。

直近5日間の値動き

5月11日(月)、トランプ政権と中国が「90日間の関税引き下げ停戦」を発表。 銀は一日で+7.3%と跳ね上がり、COMEX終値85.485ドルで、3月10日以来の最高値を更新した。 87ドル台を一時試し、金がほぼ横ばいだった中で銀だけが動くという「産業需要の再評価」を体現した。

12日(火)に4月CPI前年比3.8%が発表されると、銀は84ドル台に1〜2%反落した。 インフレ高進→FRB利上げ観測→工業需要縮小懸念、という銀特有の二段圧力が意識された。

13日(水)はトランプ大統領と習近平主席の米中首脳会談を消化しながら86〜87ドル前後を推移した。

14日(木)は4月PPIが月次+1.4%(市場予想0.5%の3倍近い強さ)、年率+6.0%と2022年12月以来の高水準で着地した。 銀は再び売られ、金銀比率は55付近から急拡大し始めた。

15日(金)は一日で-10.61%という強烈な急落を演じ、77.52ドルで週を終えた。 同日の金の下落率は-1.83%で、銀は金の「約5.8倍の下落速度」を示した。 USAGOLDの分析では「銀のデュアルアイデンティティが最も激しく現れた1日」と評されている。

今週の主要因

第一は米中関税停戦の「産業需要再評価」だ。 銀需要の約60%は太陽光パネル・半導体・電子部品・EV電池など産業用途が占める。 米中貿易が90日間緩和されれば、中国の製造業活動が回復し、これらの産業用途で銀需要が増えるという読みが月曜の急騰を生んだ。

第二はCPI・PPIの想定超過とFRB利上げ観測の強まりだ。 金融市場が利上げを織り込むと、景気減速→工業生産縮小→産業用銀需要減少という経路で、銀は金より強く売られる。 ウォーシュ新FRB議長の就任(15日)と重なり、市場は2026年内の利上げを50%近い確率でプライシングした。

第三はインドの輸入関税引き上げだ。 インド政府は12日に金・銀の輸入関税を6%から15%へ引き上げた。 インドは世界有数の銀消費国であり、この関税引き上げは投資・宝飾需要の短期抑制要因となった。

7層カスケード分析

銀の7層カスケードは金とは大きく異なる。 需要の約60%が産業用途という特性から、第4〜第6層における太陽光発電・半導体・電子部品・EV向けの波及が極めて重要になる。

第2層と第3層は実質的に一体化している。 金鉱石・銀鉱石の採掘・精製から得られる銀地金(ファインシルバー99.9%以上)が一次加工材として機能し、同時に工業用途向けの銀粉・銀ペーストへの中間加工も同段階で行われる。

第1層と第2層: 上流原料と一次加工材

銀スポット(XAG/USD)はCOMEXとLBMAで24時間取引される。 5月15日終値は77.52ドル/オンスで、1月29日の史上最高値121.64ドルから約36%の調整水準にある。

国内では田中貴金属工業・三菱マテリアル・DOWAホールディングスが主要な銀地金精製・供給事業者だ。 2026年3月時点の田中貴金属の国内銀小売価格は477円/g(税込)という記録的水準に達していたが、5月第3週は銀スポット77.52ドル・為替157.93円から逆算すると約394円/g相当のスポット水準(小売加算前)となっている。

シルバー・インスティテュートの「ワールドシルバーサーベイ2026」によれば、2026年の銀市場は6年連続の供給赤字で、赤字規模は約4,630万オンスと前年比15%増の見通しだ。 2021年からの累積取り崩し量は7億6,200万オンスに達しており、上空在庫(アバブグラウンドストック)の構造的な目減りが続いている。

第3層: 中間材料

採掘・精製後の銀地金から工業用途向けに転換される段階が第3層にあたる。 銀粉(ファイングレード)・銀ペースト・銀めっき原液・銀ボンディングワイヤーが主要な工業用中間材料だ。

このうち最大の消費者は太陽光発電パネル向けの「銀ペースト」だ。 太陽電池セルに電気を流す導電材として、1枚のセルに10〜20グラムの銀ペーストが使用されている。 特に最新世代のTOPConタイプ(Tunnel Oxide Passivated Contact)の太陽電池は、従来のPERCタイプに比べて銀使用量が多く、TOPConの普及加速が銀需要を押し上げてきた。

銀ペーストの主要製造企業は海外企業が多いが、国内では三菱マテリアルや東洋紡グループが関連素材を供給している。

第4層: 部品・素子

太陽電池セルが銀の工業用最大消費カテゴリーだ。 太陽電池セルはガラス基板・シリコンウエハーに銀ペーストが焼成・印刷されて製作され、これが積み重なってモジュールになる。

半導体では銀ボンディングワイヤー・銀焼結材(ダイアタッチ)・銀スパッタリングターゲットが主要用途だ。 プリント基板の高周波接点・LED素子の反射膜・抗菌コーティングなどにも銀が使われる。

電子部品では積層セラミックコンデンサ(MLCC)の内部電極に銀・パラジウム合金が使われており、村田製作所・TDK・日本電波工業などが主要メーカーだ。

第5層: 組立品・中間製品

太陽電池セルを複数枚積層し、EVA(エチレン酢酸ビニル)フィルムで封止・アルミフレームで固定したものが太陽光パネルモジュールだ。 日本では京セラ・シャープ・パナソニックがモジュールを製造・販売している。

EV向けでは銀系導電性接着剤が電池セルの結線に使われている。 半導体ではダイボンディング材として銀ナノ粒子シンター材の採用が車載半導体(パワーデバイス)で進んでいる。

サブアセンブリ段階での価格転嫁は、銀使用量の少ない半導体・電子部品では1部品当たりの転嫁率が限定的だが、銀使用量の多い太陽電池セルでは原価への影響が直接的に現れる。

第6層: 最終製品への波及

太陽光発電システム

太陽電池セルの銀コスト上昇がモジュール価格に転嫁される一方、太陽光パネルの大幅なコスト低下が進んでいる市場では、銀高騰が将来的な「銀フリー技術」への移行を加速させるリスクがある。 JPモルガンはシルバーフリーのCdTe(カドミウムテルライド)薄膜技術の普及が「銀需要の長期的最大リスク」と指摘している。

電気自動車(EV)

車載パワー半導体への銀焼結材採用が増加しており、1台当たりの銀使用量が従来のガソリン車より多い傾向がある。 EV普及に伴う銀需要の増加は、太陽光と並ぶ中長期の構造的需要底上げ要因だ。

スマートフォン・電子機器

MLCC・基板・コネクタへの微量使用が積み上がると相当量になる。 価格が大きく変動しても最終製品への反映が限定的なのは使用量の小ささゆえだ。

宝飾品・カトラリー

産業用と異なり、高価格局面では宝飾品向け消費が買い控えを起こしやすい。 インド・中東での宝飾需要は今回の関税引き上げと価格高止まりで一時的に抑制される見通しだ。

写真・医療

デジタル化でハロゲン化銀写真フィルム需要は激減しているが、医療用X線フィルム・歯科用合金・抗菌材料に銀は使われ続けている。

第7層: 店頭・家計・マクロへの波及

銀の動向が最も直接的に家計・国民生活に届くのは太陽光発電の導入コストと電気料金の長期トレンドを通じてだ。

太陽光パネルの製造コストに占める銀材料の比率は近年、パネル価格の下落とともに相対的に高まっている。 銀価格が77〜87ドル/オンス水準にある現在、中国系パネルメーカーは製造コスト圧力から「銀ペーストの薄膜化・使用量削減」と「次世代技術へのシフト」を加速させており、これが逆に銀の中長期需要予測を不確実にしている。

日本の電気料金という観点では、太陽光の自家消費・蓄電池システムの導入コストに銀高騰が上乗せされる形で、家庭の「脱炭素コスト」が増大している。

宝飾品市場では田中貴金属の銀小売価格が3月に477円/gと記録的高値を示した後、5月に394円/g水準へ下落したことで、銀アクセサリー・銀器の購入心理が若干改善している段階だ。

今後の展望

「産業金属」と「貴金属」という二つの顔を持つ銀は、どちらの顔が主役になるかで方向性がまったく変わる。

来週の注目ポイント

5月20日(水)のFOMC議事録公開がウォーシュ新議長体制の最初の重要シグナルになる。 利上げトーンが強くなれば銀の貴金属需要側が圧迫され、さらに産業需要縮小懸念が重なる可能性がある。 5月21日(木)の初回申請失業保険件数とS&Pグローバル製造業PMIが銀の工業需要見通しに影響する。 米中の90日関税停戦が具体的な製造業回復につながるかどうかを示すデータが出始めるタイミングでもある。

1ヶ月先の見通し

JPモルガンの2026年平均予測は81ドル/オンスで、現在の77.52ドルはその下方にある。 ただしCitigroupは下半期に110ドル、TDセキュリティーズは年間高値118ドルを見込んでいる。 FRB利上げ確率が50%前後で推移する限り、銀は70〜88ドルのボラティリティの高いレンジを往来すると見られる。 6月の太陽光パネル需要期(北半球の夏の日照最大期→パネル増設ラッシュ)に入れば、産業面からの買いが下値を支える可能性がある。

3ヶ月先の構造的展望

シルバー・インスティテュートが予測する2026年の供給赤字4,630万オンスは、累積赤字に基づく構造的な下値サポートだ。 太陽光の需要は量的拡大から「一枚当たりの銀使用量削減(シルバーシフト)」への移行期にあるが、設置枚数そのものは増え続けているため総需要は維持される見通しだ。 EV向け車載パワー半導体への銀焼結材採用が今後数年で拡大することも需要面の構造的サポートになる。

リスクシナリオ

シナリオ1(再急騰): 米中90日停戦が恒久的な関税引き下げへと発展した場合、製造業の本格回復期待で銀は100ドルを超えるCiti予測に迫る可能性がある。 シナリオ2(追加急落): ウォーシュ議長が6月FOMCで明示的な利上げを示唆した場合、実質金利の上昇とドル高が重なり、銀は70ドル割れのリスクも浮上する。 シナリオ3(長期高ボラ): FOMCが「利上げ」と「一時停止」の間で揺れ続ける場合、銀は70〜90ドルの非常に広いレンジで往来する。長期投資家には積立機会だが、短期トレーダーには危険な局面が続く。

業界別の対応指針

調達担当者

太陽光パネル向けや半導体向けに銀ペーストを使用する企業は、77〜87ドルの幅広いスポットレンジを前提に第3四半期の原材料コストシナリオを複数用意しておく必要がある。 太陽電池セルメーカーは「銀使用量の削減技術(薄膜化・パターン縮小)」への投資を加速させることが中長期コスト管理の要になる。 国内で銀を使用する電子部品メーカーは三菱マテリアル・DOWAホールディングスとの価格連動条項の見直しを検討すべきだ。

経営者

銀の「産業需要」と「貴金属需要」の二面性は、価格がどちらの力に支配されるかで企業業績への影響が正反対になり得る。 太陽光事業者・EV関連メーカーは銀コスト管理の重要性が増す一方、住友金属鉱山などの採掘事業者は高値環境での収益拡大期だ。 長期的には「シルバーフリー技術」の進展と「脱炭素需要」の拡大という相反する力が銀の価格構造を変えていく可能性を中期戦略に組み込む必要がある。

投資家

銀は現在77ドル水準で1月ATH121.64ドルから36%調整中だが、銀の構造的な供給赤字は継続している。 金銀比率58.9:1は「20世紀平均47:1」に対して銀が割安な水準を示しており、金から銀への相対的な割安感が存在する。 ただし短期ボラティリティが極めて高く、FRBの政策シグナル次第で10%超の一日変動が起きる局面だ。

よくある質問

Q1: 今週、銀はなぜ月曜に急騰して金曜に急落したのですか?

月曜は米中関税90日停戦で「製造業回復→産業用銀需要増加」という期待が買いを呼んだ。 金曜はCPI・PPIの想定超過でFRB利上げ観測が強まり、「景気縮小→産業需要減少+金利上昇で貴金属も下落」という二重の売り材料が重なった。

Q2: この動きはいつまで続きますか?

FRBの政策方向性と米中の製造業回復の速度がカタリストになる。 ウォーシュ新議長の姿勢が明確になる5月20日のFOMC議事録まで、高ボラティリティが継続する可能性が高い。

Q3: 自社の調達戦略にどう影響しますか?

太陽光・半導体・電子部品向けに銀を使用する企業は、70〜90ドルという幅広いシナリオレンジで四半期コストを管理する必要がある。 銀使用量削減技術の開発投資を前倒しすることが中長期コスト低減の本命策だ。

Q4: 為替の影響はどのくらいですか?

ドル円157.93円のもとで銀スポット77.52ドルの円換算は1オンス約1万2,246円、1グラム換算で約394円となる。 円安1円分でナフサ同様、輸入コストは0.7〜0.9%上昇する。

Q5: 消費者への影響はいつ反映されますか?

太陽光パネルの設置コストへの反映は製造から設置まで2〜3カ月のタイムラグがある。 電子機器・宝飾品は銀の使用量が小さいか単価に占めるシェアが低いため、店頭価格への直接影響は限定的だ。

編集部解説:日本への波及

銀の2026年の相場は「脱炭素の加速」と「FRBの政策転換」という2つのスーパーサイクルが衝突している戦場だ。 太陽光パネル・EV・AIインフラという脱炭素需要は銀を長期的に引き上げる力を持つ一方、利上げ局面での短期的な売り圧力が極めて激しい。

日本の主要業界への影響

日本の太陽光発電産業にとって銀価格は直接のコスト要因だ。 京セラ・シャープ・パナソニックが販売する太陽電池モジュールは、1枚当たりに使用する銀ペーストの量がコスト構造を左右する。 銀が77〜87ドルという高水準にある現在、大手3社とも銀ペーストの薄膜化・パターン最適化に取り組んでおり、次世代セル(ペロブスカイト・タンデム型)への開発投資を前倒ししている。

電子部品業界では村田製作所・TDKが積層セラミックコンデンサ(MLCC)に銀系内部電極材を使用しており、銀価格の変動を四半期ごとに原価モデルに反映させる体制を取っている。 両社とも材料コスト管理が精緻化されており、銀の急騰局面では一時的にパラジウム系の代替比率を調整することで対応している。

DOWAホールディングスは銀の製錬・回収・工業材料供給を手がけており、今次の高値環境が回収銀ビジネスの収益性向上につながっている。 廃電子基板・廃太陽光パネルからの銀回収量が増加しており、都市鉱山ビジネスの観点から長期的な収益源になっていくと見られる。

商社マン視点の先読みポイント

三井物産の金属・鉱物セクターから銀市場を俯瞰すると、今週の「月曜+7.3%→金曜-10.6%」という展開は、2つの重要な市場シグナルを含んでいた。

第一のシグナルは「銀は今やマクロ指標に金より敏感に反応するハイベータ資産」という市場認識の確認だ。 金銀比率が1週間で55から58.9に激変したことは、投資家が「産業需要のオン/オフ」を素早く切り替えている証拠だ。

第二のシグナルは「供給の構造的な締まりは変わっていない」という下値支持の確認だ。 77ドルで引けても、それは1月ATH121.64ドルから36%の調整に過ぎず、1年前水準(約30ドル台)からは140%以上高い水準にある。

「今、三井物産の銀担当ならどう動くか」を3点に絞る。

第一に、米中90日関税停戦が続く間に、中国の太陽電池メーカー向けの銀ペースト原料(ファインシルバー)の長期供給契約を押さえることだ。 中国のTOPCon・ペロブスカイト向け銀需要は今後2〜3年で急増する見通しで、供給を押さえた商社が競争優位を持てる。

第二に、DOWAや三菱マテリアルが持つ都市鉱山の銀回収フローを活用した「廃材銀の調達→精製→工業材料供給」のバリューチェーン強化だ。 採掘銀より環境負荷が低く、ESG評価につながる銀の調達先として需要家への提案力になる。

第三に、ウォーシュ新議長体制でのFRBの初動を見極めながら、6月末に四半期銀価格が決定される手前の今週内にヘッジポジションを構築することだ。 COMEXの銀オプション(コール買い・プット売りの組み合わせ)で上限コストを85ドル程度に設定したフォワードを長期顧客向けに提案する好機だ。

まとめ

銀が「産業金属」と「貴金属」のどちらの顔を持って相場に臨むかが、週単位でも日単位でも変わるのが2026年の最大の特徴だ。

月曜の+7.3%は「貿易回復→製造業回復→産業用銀需要増」という産業金属としての楽観論が走った。 金曜の-10.6%は「インフレ高進→FRB利上げ→景気冷却懸念+金融引き締め」という両面への打撃が走った。

供給赤字6年連続という構造的事実は変わらず、太陽光・EV・AIインフラという中長期の産業需要底上げも変わっていない。 しかし短期的には70〜90ドルという幅広いレンジでの乱高下が当面の現実だ。

FRBの次の一手と米中製造業の回復速度という2つの変数を追いながら、四半期単位の調達コスト管理と中長期の「銀使用量削減技術」への投資の両輪で対応することが産業各社に求められる。

出典

製造業サプライチェーン研究所

基板実装・EMSを起点に、電子部品調達、原材料市況、調達リスク、価格転嫁、製造コストまで。 製造業の調達・営業・経営判断に使える有料レポート、企業データ、Excelツールを販売。 ニュースを現場で使える判断材料に変換します。

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