
天然ガス・LNG|JKM18ドル台で膠着、カタール停止長期化で先物「2028年まで高値」
結論サマリー
5月18日〜22日週の北東アジア向けLNGスポット価格JKM(7月渡し)は18ドル台後半で推移し、前週末(18ドル半ば)からやや上昇した。
週前半は豪州IchthysでのLNGストライキ懸念や、マレーシアMLNG・米国Freeport LNGでの供給障害懸念が重なり、一時19ドル台後半まで上昇した。
後半は米・イラン和平交渉進展期待とホルムズ海峡再開期待から下落し、18ドル後半に落ち着いた。
欧州ガス指標TTF(6月限月)は22日に16.5ドル、米国ヘンリーハブ(HH)は22日に2.9ドルと、3指標が異なる方向感を示している。
JERAは4月27日の決算説明会で「2026年7月分まで発電用LNG在庫を確保」と公表し、量的危機は当面回避されているが、問題は「いくらで調達するか」だと明示した。
カタールのラスラファンLNG施設の損傷が長期化しており、LNG先物市場は2028年頃まで高値継続を示唆している。
今週の動き
天然ガス・LNG市場は今週も、停戦報道と供給障害リスクの二つが交互に価格を揺さぶる展開が続いた。
JKMの7月渡しは18ドル台後半という水準は、2月27日の危機直前(11.06ドル)と3月9日の急騰ピーク(24.80ドル)の間で収束しつつあることを示している。
ただし前年同期比では約47%高い水準であり、「価格が落ち着いた」というには程遠い。
5月8日時点のJKMは16.87ドルで、過去1か月間で約13%下落しているが、1年前と比べて47%高という数字がLNG市場の構造的な高値を示す。
今週の最大のニュースは、JERAが「2026年7月まで在庫を確保済み」と公言したことだ。
「量」の確保より「価格(コスト)」のコントロールが今後の電気料金管理の核心課題になるという問題提起は、電力・ガス業界の関係者に改めて危機感を与えた。
直近5日間の値動き
5月18日(月)は、豪州IchthysのLNG設備でストライキが懸念されるとの報道が出て、JKMが上昇基調で始まった。
マレーシアMLNGと米国Freeport LNGでも供給障害の可能性が浮上し、19日には19ドル台後半まで値を伸ばした。
20日以降は、米・イランの和平交渉進展期待が台頭し、エネルギー価格全般が下落に転じた。
21日には18ドル後半まで下落し、22日もホルムズ海峡再開期待から小幅に続落したが、日本勢の買い意欲と複数の供給障害懸念が下支えとなり、18ドル後半で越週した。
5月17日時点の発電用LNG在庫は204万トン(経産省モニタリング)で、前週比8万トン減少と在庫取り崩しが続いている。
今週の主要因
第一の主要因は、カタールのラスラファンLNG生産施設の損傷長期化だ。
2026年3月2日、ラスラファンにイランのドローン攻撃があり、施設損傷でLNG生産が停止した。
カタールエナジーは3月4日にフォースマジュール(不可抗力宣言)を発動し、日本向けを含む長期契約への供給が停止した状態が続いている。
カタールは世界第2位のLNG供給国(約8,000万トン、世界シェア約2割)だが、日本の輸入に占める割合は約5%にとどまり、直接的な量的影響は限定的だ。
しかしカタール施設の損傷が長期化すると、世界のLNG需給全体のタイト感が増し、スポット価格の高止まりが2028年頃まで続くとの観測が先物市場に織り込まれつつある。
第二の主要因は、複数のLNG生産拠点でのトラブル懸念の同時発生だ。
豪州Ichthys(IHI・国際石油開発帝石が参加)のストライキ懸念、マレーシアMLNG(三菱商事が長期契約を持つ主要プロジェクト)の供給障害、米国Freeport LNGの操業問題が週内に立て続けに報じられ、市場心理を悪化させた。
第三は欧州との市場連動性だ。
TTFが16.5ドルまで低下したことでJKM-TTFスプレッドが2ドル未満に圧縮される局面があり、欧州向けのアービトラージ採算が一時的に悪化した。
このスプレッド縮小はアジア向けLNG供給の一部が欧州へ流れにくくなる方向に働き、アジア価格(JKM)の需給を引き締める。
7層カスケード分析
天然ガス・LNGは原油(第1層)の代替エネルギーとして機能する上流原料だが、独自の生産・液化・輸送インフラを持つため、7層への伝播経路は原油とは異なる構造を持つ。
本素材のカスケードでは、第1層(上流LNG)から第7層(家計の電気・ガス料金)まで、発電と都市ガスを主要な媒介として分析する。
第1層と第2層: 上流原料と一次加工材
第1層はLNGの原料となる天然ガス(パイプラインガスも含む)、第2層はLNG液化・輸送後の最終受入形態であり、この2層は実質的に統合して分析する。
JKM(北東アジアLNGスポット)は5月第4週に18ドル台後半で、危機直前(11.06ドル)比で約65%高い水準だ。
TTF(欧州天然ガス)は16.5ドル、HH(米国天然ガス)は2.9ドルと、3指標間の大きな価格差が特徴的だ。
HHの低位安定(2.9ドル)は米国シェールガスの潤沢な生産を反映しており、米国産LNGのアジア向け輸出採算は依然良好だ。
日本のLNG輸入先は豪州(約40%)、マレーシア(約15%)、ロシア(約9%)、米国(約7%)が主要で、中東(カタール・オマーン・UAE合計)は約10%にとどまる。
このため、カタール停止の量的影響は直接的には小さいが、スポット市場全体の需給を引き締めてJKMを押し上げる間接的な影響は大きい。
日本のLNG輸入の約8割は原油連動の長期契約で価格が決まるため、JKM高騰の直撃はスポット調達部分(約2割)に集中する。
長期契約の原油連動分についても、ブレント原油が今年4月に月平均117ドルを記録したことで、数か月後の長期契約調達コストが大幅に上昇する局面を迎える見通しだ。
第3層: 中間材料
LNGが受入基地でガス化された天然ガス(第3層相当)は、二つの主要ルートに分岐する。
一つは発電用燃料として火力発電所に送られるルート、もう一つは都市ガスとして家庭・業務・産業向けに配給されるルートだ。
日本の電源構成では石炭が約3割、LNG火力が約3割を占めており、LNG価格は電力コストの大きな決定要因となっている。
電力は年間3,700万トン程度、都市ガスは年間2,500万トン程度のLNGを消費している。
電力需要は夏・冬にピークがあり、都市ガスは冬に需要が増える季節性がある。
現在は夏前の在庫積み増し期間にあたるが、LNG高騰局面での在庫積み増しはコスト増に直結する。
第4層: 部品・素子
LNGが燃料となる発電・ガス供給システムの第4層相当は、発電タービン・熱交換器・配管設備などだが、ここでの直接的な「部品」よりも、LNG価格が電力・熱コストを通じて製造業全般に影響するルートが重要だ。
石油化学各社のエチレン・樹脂製造プロセスではLNG由来の熱エネルギーが使われており、製造コストの一構成要素として機能している。
また、LNG冷熱を利用した低温倉庫・食品加工施設でのエネルギーコスト増が、食品・物流業界のオペレーションコストを押し上げている。
セメント・鉄鋼・ガラスなどエネルギー多消費型製造業でも、LNG由来の熱源コスト増が製品コストに反映されはじめている。
第5層: 組立品・中間製品
発電コストの上昇は製造業全体の電力コストとして、すべての産業の組立品・中間製品の製造コストに波及する。
JERAが警戒する「夏の電気代高騰」は、製造業各社が夏季の電力コスト上昇をどう吸収するかという問題に直結する。
エアコン・冷凍機など温度管理が必要な製造・物流設備のランニングコストは、電力単価の上昇でさらに増大する。
電力多消費型産業(アルミ精錬・電解銅・半導体製造など)では、電力コストが製品コストの30〜40%に達するケースもあり、LNG由来の電力コスト上昇が競争力に直撃する。
第6層: 最終製品への波及
電力(家庭・企業向け)
燃料費調整額は3〜6か月のタイムラグでLNG調達コストを電力料金に転嫁する仕組みだ。
JERAが警戒する夏の電気代高騰は、4月のLNG高コスト調達分が8〜9月の燃料費調整額に反映される形で現れる見通しだ。
東京電力エナジーパートナー、関西電力、中部電力など大手電力各社は2026年1月・4月に規制料金の改定を実施済みだが、燃料費調整額の追加的な上昇は夏以降に本格化する可能性がある。
都市ガス(家庭・業務用)
東京ガスは2026年10月1日付で約款改訂と「ガス料金の見直し」を予定しており、LNG調達コストの上昇が秋口から都市ガス料金に反映される局面が視野に入る。
都市ガスの原料費調整制度もLNG価格に連動しており、夏場の高JKM水準が秋冬の都市ガス料金を押し上げる可能性がある。
エネルギー多消費型産業
製鉄・化学・セメント・ガラス等のプロセス産業では、工場エネルギーコストの上昇が製品価格への転嫁という形で最終製品に波及する。
自動車部品の溶接・熱処理工程、食品加工の加熱・冷却工程など、製造プロセスに不可欠なエネルギーコストが上昇している。
暖房・給湯(寒冷地)
都市ガス料金の上昇は、冬季の暖房・給湯コストとして家計に直接影響する。
秋冬に向けた価格動向の把握と、省エネ設備導入の検討を今から始めることが望ましい。
第7層: 店頭・家計・マクロへの波及
5月検針分から電気・ガス料金の補助が消滅し、ファミリー世帯(450kWh/月)では平均約788円の値上がりが生じた。
これに加えて、夏場にLNG高コスト調達分が燃料費調整額を通じて電気料金に上乗せされれば、二段階のコスト増に直面する。
EU全体の地下ガス貯蔵率は5月22日時点で37.5%と、前年同期比17.6%減・過去5年平均比27.0%減であり、欧州も在庫不足の懸念を抱えている。
欧州LNGの需給逼迫が深刻化すれば、アジアと欧州がLNGを奪い合う構図が再燃し、JKMが再び上昇するリスクがある。
EIAの予測ではヘンリーハブは2026年通年で3.67ドル/mmBtuを見込んでおり、米国産LNGの供給余力は維持されているが、液化設備能力と輸送コストがボトルネックになりうる。
日本のCPIへの波及については、電気・ガス料金の変動が家計のエネルギー支出に直結しており、秋口以降の電力・ガス料金動向が物価動向の重要な変数となる。
今後の展望
LNG市場の最大の不確実性は、カタールの設備損傷の回復見通しとホルムズ海峡の通航再開の時期だ。
来週の注目ポイント
6月渡し→7月渡しへのカーゴ切り替えが本格化する時期であり、夏場の電力需要を見越した購買行動が市場に現れやすくなる。
JERAは7月まで在庫を確保済みとしているが、8月以降の在庫手当てに向けたスポット購買の動向が、来週以降のJKMの方向を左右する。
豪州Ichthys、マレーシアMLNG、米国Freeport LNGでの供給障害リスクの解消状況も引き続き注目だ。
米・イラン停戦交渉の進展があれば、ホルムズ再開期待でJKMに下押し圧力がかかる展開もあり得る。
1ヶ月先の見通し
JKMは15〜20ドルのレンジで推移する可能性が高い。
停戦が正式合意に近づけばJKMは15ドル台まで下落し得るが、カタール施設の損傷が長期化する限り、中東産LNGの供給回復には時間を要し、下値を支える。
中国の夏季エアコン需要が例年通り拡大すれば、アジア全体のLNG需要が増加し、JKMが上押しされる可能性もある。
日本の燃料費調整額への反映は3〜6か月の遅行があり、夏場の電気料金への影響は8〜9月検針分から顕在化する見通しだ。
3ヶ月先の構造的展望
LNG先物市場が2028年頃まで高値を示唆している背景には、カタール設備の回復に要する年単位の時間、ホルムズ海峡再開後も続くインフラ修復、そして欧州・アジアのLNG需要が同時に高まっているという構造的要因がある。
一方で、2026年以降は米国産LNG(「第3の波」)が大規模に市場に出てくる局面が迫っており、米国の日量1,085億立方フィートという記録的なガス生産と新規液化設備の稼働が、2027年以降の価格を押し下げる主要因になると見込まれる。
日本のLNG輸入契約の約8割は原油連動の長期契約であり、ブレント原油が下落すれば数か月のラグで長期契約価格も低下する。
このため、ブレント安とHH安の双方が続く局面では、日本のLNG調達コストが徐々に低下するシナリオが現実的だ。
リスクシナリオ
強気シナリオは、カタール施設の損傷が想定以上に深刻で復旧に2〜3年かかるケースだ。
欧州の冬季寒波と重なればJKMが30ドルを超える局面も否定できない。
弱気シナリオは、ホルムズ完全再開と米国LNGの大量増産が同時に進み、JKMが12ドル台まで急落する展開だ。
中立シナリオは、15〜20ドルのレンジで今年いっぱい推移し、2027年以降に米国LNG増産で段階的に低下する。
業界別の対応指針
調達担当者
JERAモデルを参考に、スポット依存度を下げる長期契約の確保を優先したい。
豪州産・米国産LNGの長期契約は、スポット市場への依存度を下げる最も確実な手段だ。
現在のJKM18ドル台は中長期の長期契約価格として見れば高いが、2028年に向けた構造的な高値を先物が示している以上、スポット調達に傾注するリスクは大きい。
為替ヘッジも重要で、LNG調達の多くはドル建てであり、円安1円のコスト増(0.7〜0.9%)を燃料費調整額がどの程度吸収できるかの試算を定期的に更新する必要がある。
経営者
LNGコスト上昇が電気料金・ガス料金を通じて全産業のコスト構造に影響している。
「省エネ」「燃料転換(再エネ・オンサイト太陽光)」「エネルギーマネジメントシステム(EMS)」への投資を加速させることが、2〜3年後の競争力を左右する。
夏の電気代高騰に備えた電力調達の複線化(規制料金プランと自由料金プランの組み合わせ)も、電力コスト管理の観点から再点検すべき時期だ。
投資家
LNG高値が長期化するシナリオでは、豪州・米国・モザンビークなどのLNG上流権益を持つ国際石油開発帝石(INPEX)、三菱商事のLNG事業部門が受益する。
電力・都市ガスセクターでは燃料費調整額の時間差によるコスト上昇が株価の下押し要因となりうる一方、料金改定が認められれば収益安定化に向かう。
よくある質問
Q1: 今週のJKMはなぜ18ドル台で安定しているのですか?
供給障害懸念(豪州・マレーシア・米国)が下値を支え、米・イラン和平交渉進展期待が上値を抑えるという二つの力がほぼ釣り合った結果だ。
日本勢の堅調な買い意欲が下値を固める一方で、ホルムズ再開期待が上値をブロックしている。
Q2: カタールのLNG供給はいつ再開しますか?
フォースマジュール発動から3か月が経過しているが、ラスラファン施設の損傷は深刻であり、現時点では明確な再開時期は示されていない。
LNG先物が2028年頃まで高値を示唆していることは、市場がカタール回復に数年を見込んでいることを反映している。
Q3: 電気代への影響はいつ頃顕在化しますか?
燃料費調整額の仕組み上、LNG調達コスト(3〜6か月前の価格)が現在の電力料金に反映される。
4月の高コスト調達分は夏(8〜9月)の電気代に上乗せされる見通しで、JERAも夏場の電気代高騰リスクを警戒している。
Q4: ヘンリーハブとJKMの価格差はなぜ大きいのですか?
HH(2.9ドル)は米国国内での天然ガス価格で、シェール革命後の潤沢な供給を反映している。
JKM(18ドル台)はアジアで実際に調達されるLNGのスポット価格で、液化・輸送コスト(約4〜6ドル)に加え、需給のタイト感が積み上がった水準だ。
この差(アービトラージ)が米国産LNGのアジア輸出を経済的に成立させる原動力となっている。
Q5: 停戦合意でLNG価格はすぐ下がりますか?
一定の下押し圧力はかかるが、カタール施設の損傷回復には年単位の時間がかかる。
停戦後にホルムズが段階的に再開されてもLNG先物市場の高値観測は変わりにくく、ホルムズ通航正常化+カタール設備修復+米国LNG増産という3条件が揃わないと、JKMの本格的な低下は難しい。
編集部解説:日本への波及
今回のLNG危機は、カタール停止・ホルムズ封鎖という「二つの震源」が重なったことで、これまでの中東地政学リスクとは質的に異なる深刻さを持っている。
日本の「LNG中東依存度は低い」という従来の安全神話が揺らいでいる点を、まず確認しておく必要がある。
日本の主要業界への影響
JERAは日本最大の電力・LNG調達事業者だ。
4月27日の決算発表で「7月分まで在庫確保」と公表したことは、裏を返せば8月以降の調達が現時点では未確定であることを示す。
夏場の電力需要がピークを迎える7月〜8月にかけて、JERAがスポット市場でLNGを追加調達する必要が生じれば、JKM18ドル台での購入コストが燃料費調整額を通じて秋冬の電気料金に反映される。
東北電力と関西電力はカタールエナジーとの長期契約を持っていたが、3月4日のフォースマジュール発動以降、供給が停止している。
両社はそれぞれ代替調達(豪州産・米国産のスポット)で対応しているが、スポット調達コストはJKM水準(18ドル台)であり、長期契約価格(原油連動の6〜8ドル程度)と比べて2〜3倍のコスト増となっている。
この差は最終的に燃料費調整額の上昇という形で企業・家庭の電力コストに転嫁される構造だ。
都市ガスについては、東京ガスが2026年10月の約款改訂と料金見直しを発表しており、LNG調達コストの上昇が秋口から都市ガス料金に本格反映される予定だ。
国際石油開発帝石(INPEX)は豪州Ichthys LNGプロジェクトの主要オペレーター兼出資者であり、今週報じられたIchthysのストライキ懸念は、JKMへの影響とともにINPEXの操業・収益にも影響しうる。
Ichthysの安定操業は日本のLNG供給の根幹の一つであり、ストライキが長期化した場合の影響は甚大だ。
商社マン視点の先読みポイント
三菱商事はマレーシアMLNG(世界有数のLNGプロジェクト)に長期的な権益を持ち、日本向けを含む長期契約を維持している。
今週のMLNG供給障害懸念は、三菱商事のLNG調達ポートフォリオ管理において最優先の監視項目だ。
今、商社マンならどう動くか。
短期的には、豪州Ichthys・マレーシアMLNG・米国Freeport LNGの3拠点でのオペレーション状況をリアルタイムで把握するためのインテリジェンス体制を強化することが急務だ。
スポット購買については、JKMが18ドル台の今の水準は、3月のピーク(24.80ドル)からは下がっているが、停戦合意が正式化されない限り15ドル以下への急落もない「高原状態」にある。
夏場の追加調達が必要な場合、カーゴを一括購入するより、オプション契約(一定価格でのコール・オプション)を組み合わせてコストの上振れリスクをヘッジする戦略が有効だ。
中長期では、2027年以降に米国産LNG(第3の波)が大量に市場に出てくるタイミングを狙って、カナダ産やモザンビーク産などの新興LNG産地との長期契約交渉を今から始めることが、調達コストの恒久的な引き下げにつながる。
カタールエナジーは3月に停止した供給を将来的に再開する意向を持つが、設備修復に数年を要する間、供給空白を代替できる産地の確保が、LNG調達の戦略的な競争優位の源泉となる。
まとめ
JKMの18ドル台後半という水準は、危機ピーク(24.80ドル)より落ち着いているが、「正常化」とは程遠い状態だ。
カタール施設の損傷長期化と先物市場の「2028年まで高値示唆」が、LNG市場の構造的変化を示している。
日本のLNG輸入の8割を占める原油連動の長期契約は、ブレント安局面では数か月後にコスト低下をもたらすが、カタールのフォースマジュールによるスポット調達増加分は高コストのまま電気料金に転嫁される。
JERAの「7月まで在庫確保」という発表は安心材料だが、8月以降の夏場調達コストが秋冬の電気代を左右する。
電力多消費型産業から家計に至るまで、LNG由来の電力コスト管理がこの夏の最重要課題だ。
豪州Ichthys・マレーシアMLNG・米国Freeportという3拠点の安定稼働が、アジアLNG需給のタイト感を左右する重要な変数として浮上している。
各産地の最新オペレーション情報を継続的に把握しておくことが、調達担当者の最も基本的な義務となっている。
出典
- JOGMEC「天然ガス・LNG関連情報」(2026年5月25日掲載)
- 日本経済新聞「LNG、カタール設備損傷で消えた余剰 先物市場『28年まで高値』示唆」(2026年4月3日)
- 日経エネルギーNext「イラン攻撃でカタールがLNG生産停止、JEPXスポット市場価格への影響は?」(2026年3月)
- JERA「2025年度決算説明会(LNG在庫・夏場電気代について)」(2026年4月27日)
- EIA「Short-Term Energy Outlook May 2026」(ヘンリーハブ価格予測)
- 経済産業省資源エネルギー庁「燃料調達をめぐる動向と電力・ガスの安定供給について」(令和8年3月27日)
- 新電力ネット「天然ガス価格の見通し・予測」(2026年5月12日更新)







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