MENU

【2026年5月第3週】銅(LME) 週次レポート

製造業サプライチェーン研究所

基板実装・EMSを起点に、電子部品調達、原材料市況、調達リスク、価格転嫁、製造コストまで。 製造業の調達・営業・経営判断に使える有料レポート、企業データ、Excelツールを販売。 ニュースを現場で使える判断材料に変換します。

▶製造業サプライチェーン研究所

THE SUPPLIER · 7層素材カスケード分析

銅(LME) 週次レポート — 5月13日 $14,091/t高値→金曜-5.12%急落 / 前年比+37%・AI×EV需要と利上げ観測の綱引き

2026年5月第3週(5月11日〜16日)
第1層: 上流ショック(実データ)
LME銅スポット(週末)
6.23 $/lb
(約13,757 $/トン 5月15日)
前日比-5.12%|週内高値$14,091/t(5/13)
前年同期比・過去1カ月変化
+36.92%
前年比 / 過去1カ月 +2.72%
構造的長期上昇トレンド継続
精製銅市場赤字予測(JPM 2026年)
33.3万t
(需要超過・赤字拡大局面)
TC/RCゼロ→精鉱ひっ迫の構造的信号
米精製銅関税見直し期限
2026年6月30日
現行:半製品50%関税(2025年8月〜)
精製銅にも拡大なら市場に大きな波紋
伝播経路 — 7層カスケード(チリ銅山から電線・EV・AIデータセンターまで)
第1層上流原料
銅鉱石・精鉱(チリ・ペルー・DRC等)
チリ24%・TC/RCゼロ→精鉱タイト
LME銅スポット
$13,757〜14,091/t|前年比+37%
第2層一次加工材
電気銅カソード(99.99%精製銅)
三菱マテリアル直島・住友金属鉱山等
銅スクラップ(再生銅)
高値で回収増・精製銅の代替供給
第3層中間材料
銅条・銅板・銅管(古河電工・住友電工)
LME連動の「銅建価格」で毎月改定
銅線・銅ロッド
電線・巻線・プリント基板の基礎素材
第4層部品・素子
電線・ケーブル(古河電工・住友電工・フジクラ)
送電線・自動車ハーネス・海底ケーブル
コネクタ・プリント基板・巻線
ヒロセ電機・イビデン等への波及
第5層組立品
EVモーター・変圧器・エアコン熱交換器
EV1台あたり50〜80kgの銅を使用
AIデータセンター電源・冷却設備
1ラック当たり数百kgの銅消費
第6層最終製品
EV・HEV(トヨタ・ホンダ・日産)
EV化で銅使用量が従来車の2〜4倍に
AIサーバー・電力インフラ・家電
データセンター拡大が長期需要の底上げ
太陽光・風力発電設備
脱炭素インフラが構造的需要を生む
第7層店頭・家計
電気工事費・住宅配線コスト
銅ケーブル高騰→工事見積が上昇
家電・EV車両価格(2〜3年タイムラグ)
製造コスト増が緩やかに転嫁される
電気料金(グリッドインフラコスト)
長期的に電力インフラ整備コストに転嫁
業界別アラート
古河電気工業(電線・ケーブル)
銅建価格が840〜850円/kgに。LMEヘッジを活用しつつ製品価格改定が必要な水準に達している
注意
毎月銅建改定
価格改定検討中
住友電気工業(電線・自動車ハーネス)
世界100カ国の拠点でLME連動調達を管理。AI・電力インフラ向け特殊ケーブルが収益上昇の牽引
好調
継続中
AI需要恩恵
三菱マテリアル(銅精錬・直島製錬所)
TC/RCゼロ近辺で精錬マージンが圧縮。在庫評価益と精錬品高値売却がプラスに作用する二面構造
注意
TC/RC継続監視
マージン圧縮
住友金属鉱山(銅採掘・精錬権益)
チリ・メキシコ・ペルーの銅山が高値恩恵。LME高水準が採掘利益を押し上げ、2026年度の業績に寄与
恩恵
5月時点
採掘収益増
米精製銅関税(6月30日見直し期限)
現行の半製品50%から精製銅への拡大が検討中。適用なら2027〜2028年スタートとの観測
要警戒
6月30日期限
関税拡大リスク
三菱商事(銅採掘権益・電線供給)
OT(オジェランコ・テンテ)等の採掘権益収益が高値恩恵。AI・電力グリッド向け中長期供給スキームが次の主戦場
収益機会
中長期テーマ
権益収益増

結論サマリー

LME銅スポットは5月13日に14,091ドル/トンと週内高値を記録した後、5月15日(金)には6.23ドル/ポンド(約13,757ドル/トン)まで急落し、前日比-5.12%の大幅下落となった。 EnegaeruOtokurashi

前年同期比では+36.92%と高水準を維持しており、過去1カ月でも+2.72%の上昇となっている。 Otokurashi

米国のインフレ加速がFRBの利上げ観測を強め、中国の需要家が高値を警戒して購買を手控えたことが金曜の急落につながった。 Otokurashi

AIデータセンター建設・電力グリッド近代化・脱炭素エネルギー移行という長期的な構造需要は変わらず、JPモルガンは2026年の精製銅市場で33万3,000トンの赤字を予測している。

中国の輸出制限による硫酸の供給制約と中東の硫黄生産支障が、銅の精製コストを押し上げる追加的な構造要因として浮上している。 TRADING ECONOMICS

今週の動き

銅は「最強の工業用金属」としての地位を保ちながら、FRBの金融政策という急性リスクに翻弄された1週間だった。

週明けは米中関税90日停戦の恩恵で製造業需要回復期待が支えとなり、週中に14,000ドル台を維持した。 5月14日(木)には約6.5ドル/ポンド(約14,330ドル/トン相当)まで上昇し、記録的高値圏に近い水準まで買われたが、その後利益確定売りが出た。 そして金曜日の米インフレデータが引き金を引いた。 TRADING ECONOMICS

直近5日間の値動き

5月11日(月)は米中関税停戦でリスクオンムードが広がり、6.4〜6.5ドル/ポンド台でスタートした。

12日(火)に米4月CPI(前年比3.8%)が発表されると、銅は一時反落したが「インフレ→エネルギー転換加速→銅需要増」という読みもあり、下げ幅は金・銀より小さかった。

13日(水)はトランプ・習近平首脳会談でホルムズ開放協力が報じられ、LME銅は14,091ドル/トンの週内高値をつけた。 Enegaeru

14日(木)は利益確定売りで約6.5ドル/ポンドまで軟化した。

15日(金)には米PPIの想定超過(月次+1.4%、年率+6.0%)でFRB利上げ観測が一気に強まり、中国の高値警戒もあって-5.12%と急落。6.23ドル/ポンドで週を終えた。 Otokurashi

今週の主要因

第一は、AI・電力インフラへの長期需要への楽観論だ。AIデータセンターの拡張、電力グリッドの近代化、エネルギー移行という長期の構造需要が銅の底を支えており、週前半の上昇はこれを反映した買いだった。 TRADING ECONOMICS

第二は、米インフレ指標の想定超過とFRB利上げ観測だ。 CPIとPPIが相次いで想定を大幅に超えたことで、銅の高値が中国の購買意欲を抑制しており、FRBの利上げ観測と重なって週末に強い売り圧力がかかった。 Otokurashi

第三は、中国の硫酸輸出規制と中東の硫黄生産支障だ。銅の精錬工程で副産物として生成される硫酸の供給が制約されており、これが世界の精製銅生産コストを押し上げる構造的な追加要因として市場で認識されている。 TRADING ECONOMICS

7層カスケード分析

銅は「電気を通す金属の王者」として、発電・送電・EVモーター・スマートフォン・建設配線など現代インフラのあらゆる領域に浸透している。 「ドクター・カッパー(銅博士)」の異名通り、銅の価格は世界経済の健康状態の先行指標だ。

第1層と第2層: 上流原料と一次加工材

銅の世界最大の産地はチリ(世界シェア約24%)で、コンゴ民主共和国・ペルー・中国・米国が続く。 LMEスポットは5月13日の14,091ドル/トンを週内高値として、金曜15日に6.23ドル/ポンド(約13,757ドル/トン)まで急落した。 前年同期比では+36.92%という高水準だ。 Timera Energy

精製銅(電気銅カソード)への加工段階では、精鉱のTC/RC(製錬費・精錬費)がほぼゼロ近辺まで低下していることが業界内で問題になっている。 年次ベンチマーク契約でTC/RCがゼロになり、スポット条件がマイナスで報告されているのは、製錬能力が採掘可能な精鉱量を上回っている直接の信号だ。 U.S. Energy Information Administration

国内では三菱商事・三井物産・住友商事などが銅精鉱・電気銅の輸入仲介を行っている。 住友金属鉱山は国内最大の非鉄金属メーカーとして、チリ・メキシコ・ペルーに銅山の権益を持ち精銅まで一貫生産している。

第3層: 中間材料

精製銅(カソード)を加工した銅条(コッパーバー)・銅板・銅線・銅管が第3層の中間材料だ。 日本では古河電気工業・住友電気工業・三菱マテリアルなどが銅条・銅合金板を製造し、電線メーカーや電子部品メーカーへ供給する。

SHFE(上海先物取引所)でも銅先物が活発に取引されており、中国でのスポット価格はLMEから若干のプレミアムで推移している。 ドル高で銅相場が圧迫されており、銅エナメル線業界の操業回復率は期待値を下回っていると5月15日のSMMレポートが指摘している。 city

第4層: 部品・素子

銅中間材料から製造される部品・素子は極めて多岐にわたる。

電線・ケーブル(住友電工・古河電工・フジクラ・昭和電線ホールディングス等)が最大の消費カテゴリーで、送電線・配電線・通信ケーブル・自動車ハーネスに使われる。

コネクタ(アンフェノール・モレックス・TE Connectivity・ヒロセ電機等)は電子機器の接続端子として銅合金が使われる。

プリント基板(イビデン・新光電気工業等)の銅張積層板や、モーターの巻線(コイル)も重要な部品用途だ。 銅カソードロッドメーカーの操業率は高値需要とは裏腹に弱い需要に直面していると報告されている。 city

第5層: 組立品・中間製品

EVモーター(MOTU・プリウスのHEVモーター等)は銅コイルの巻線量が多く、1台当たり50〜80kgの銅を使用する。 変圧器(日立エナジー・東芝エネルギーシステムズ等)は電力グリッドの要として大量の銅巻線を使う。 エアコン熱交換器(三菱電機・ダイキン工業等)は銅管を使用しており、家電需要の季節変動が銅消費に直接影響する。

AIデータセンターの電源設備・冷却システムにも大量の銅が使われており、NVIDIAのGPUクラスター1ラック当たり数百kgの銅消費があるとの試算もある。

第6層: 最終製品への波及

EV・自動車

EV1台当たりの銅使用量は従来のガソリン車の2〜4倍とされており、世界的なEV普及が中長期の銅需要を底上げする最大の構造要因だ。 トヨタ・ホンダ・日産のHEV・EV生産拡大がダイレクトに銅調達コストに影響する。

電力・電気工事

送配電線の更新・グリッド近代化・太陽光・風力の接続工事向けに世界的に銅ケーブルの需要が拡大している。 関西電力・東京電力・中部電力などの配電設備投資が銅の国内消費を支える。

家電・建設

エアコン・冷蔵庫・洗濯機など家電製品と、建設向けの配管・電気配線が第6層の主要消費カテゴリーだ。

AI・データセンター

AIデータセンターの拡張、電力グリッドの近代化、エネルギー移行に関連する長期的な見通しが銅を支えており、AIに関連する株の持続的な強さが銅需要の見通しを下支えしている。 Otokurashi

産業機械・防衛

モーター・ポンプ・発電機の産業機械と、レーダー・通信システムの防衛産業も銅の主要消費先だ。

第7層: 店頭・家計・マクロへの波及

銅が家計に届く最大の経路は電気料金だ。 電力グリッドの銅需要がインフラコストを通じて電気料金に影響する長期的な経路と、エアコン・家電の製品価格への転嫁という直接的な経路の二つがある。

LME銅が13,000〜14,000ドル/トンという高水準にある現在、電線・ケーブルの製造コストが上昇しており、工事費用の形で建設業界から住宅・商業施設の建設コストに転嫁されていく。

住宅の新築・リフォームでの電気配線工事(銅ケーブル使用)のコストが上昇しており、工事業者の見積もり価格に影響が出始めている。 ただし銅コストは電気工事全体の3〜4割程度であり、労務費・その他材料費を含む工事価格への転嫁は限定的だ。

自動車のEV化に伴う銅使用量増加は、車両製造コストを押し上げる要因として2〜3年後の新車価格に緩やかに反映されていく。

今後の展望

銅は「長期上昇トレンド」と「短期ボラティリティ」の両極を同時に抱えた素材として、2026年を通じて高い注目度が続く。

来週の注目ポイント

5月20日(水)のFOMC議事録がウォーシュ新議長体制の利上げ姿勢を示す最初のシグナルだ。 利上げトーンが強ければドル高→銅のさらなる売り圧力が続く可能性がある。 米国の精製銅関税に関する2026年6月30日の見直し期限が近づいており、この動向が次の大きな市場シグナルになる可能性がある。 関税が精製銅にも拡大された場合、LME・COMEX間の価格差(スプレッド)が再び拡大する展開が想定される。 U.S. Energy Information Administration

1ヶ月先の見通し

StoneXは2026年の銅平均価格を11,490ドル/トンと予測しており、現在の14,000ドル水準は依然割高との見方だ。 FRBの利上げ観測が確認されるまでの6月にかけては、12,500〜14,000ドルのレンジ内での調整局面が続く可能性がある。 一方でAI関連投資の継続と電力グリッド整備の需要が下値を支えており、大幅な急落シナリオは少数派だ。 Polymarket

3ヶ月先の構造的展望

JPモルガンは2026年の精製銅市場の赤字を33万3,000トンと予測している。 BloombergNEFは銅がエネルギー移行需要で2045年には3倍の需要増になり、2026年から構造的赤字に入る可能性があると警告している。 長期視点では2035年に15,000ドル/トン(ゴールドマン・サックス予測)という見方が存在し、現在の14,000ドル台は「長期上昇の通過点」と捉える向きも多い。 Timera Energy

リスクシナリオ

シナリオ1(再急騰): 米国が精製銅関税を2026年中に前倒し適用した場合、COMEX-LMEスプレッドが再び拡大し、LME銅が15,000ドル超へ押し上げられる可能性がある。 シナリオ2(急落): ウォーシュ議長が明示的な利上げを示唆し、中国経済の景気後退懸念が高まった場合、12,000〜12,500ドルへの急落もあり得る。JPモルガンが「過去の主要マクロショック時に銅は高値から25%下落した」と指摘している。 シナリオ3(レンジ内高止まり): FRB政策の不確実性と長期需要の底堅さが拮抗し、12,500〜14,000ドルのレンジで2026年後半まで推移するシナリオが最も現実的と多くのアナリストは見ている。

業界別の対応指針

調達担当者

電線・ケーブルや電子部品向けに銅を調達する担当者は、LME銅の13,000〜14,000ドルという水準を基準にした第3〜4四半期の材料費を試算し直す必要がある。 現在の急落局面(13,800ドル台)を中長期調達のロック機会として検討する価値がある。 6月末に公表される米国の精製銅関税方針が大きな転換点になり得るため、その前後に調達スタンスを固めておくことが重要だ。

経営者

EVの電動化・AI投資・電力グリッド近代化という三つの長期需要ドライバーが「銅需要を長期的に引き上げる」という構造認識は変わっていない。 ただし13,000〜14,000ドルという水準では、アルミニウムへの代替(コスト感応型の配線用途等)が加速する価格水準でもあるため、設計段階での素材選定の見直しを検討することも有効だ。 自動車・家電・インフラ各業界でのコスト転嫁余地を今期中に試算し、顧客との契約条件の見直しに着手することが急務だ。

投資家

住友金属鉱山(チリ・メキシコ・ペルーの銅山権益)・三菱マテリアル(銅精錬)・古河電工・住友電工(電線・ケーブル)という銅バリューチェーン全体への投資視点が有効だ。 LME銅の高値が続く環境は採掘・精錬企業の収益を押し上げる一方、電線メーカーは原材料コスト増と販売価格転嫁のタイムラグが短期業績の不安定要因になる。

よくある質問

Q1: 今週、LME銅はなぜ高値から急落したのですか?

米国のインフレ加速がFRBの利上げ観測を強め、中国の需要家が高値を警戒して購買を手控えたことが金曜の急落につながった。 週前半はAI・電力インフラ需要への楽観論で買われただけに、反動が大きく出た。 Otokurashi

Q2: この動きはいつまで続きますか?

6月30日の米国精製銅関税見直し期限とFRBの政策方向性が二つの主要カタリストだ。 12,500〜14,000ドルの広いレンジでのボラティリティが6月FOMC(6月17〜18日)まで続く可能性が高い。

Q3: 自社の調達戦略にどう影響しますか?

電線・ケーブル・モーター向けに銅を大量調達する企業は、6月末の米関税方針確認前に中長期調達量の一部をロックしておくことを検討すべきだ。 LME連動の四半期価格交渉がある場合、現在の急落局面をコスト固定の好機と捉えることができる。

Q4: 為替の影響はどのくらいですか?

LME銅はドル建てのため、ドル円158円台での調達は前年比の円安分がコスト増として乗る。 LME14,000ドル/トン×158円/ドル=221.2万円/トンと、前年比では円建てコストが一段と高い。

Q5: 消費者への影響はいつ反映されますか?

銅コストが電線製品価格に転嫁されるまで1〜2カ月のタイムラグがある。 家電・EV・住宅配線工事への最終的な転嫁は3〜6カ月かかるため、現在の高値が家計に届くのは秋以降が目安だ。

編集部解説:日本への波及

銅は日本の製造業にとって「第一工業用金属」と言えるほどの重要素材だ。 電線・自動車・電子機器・建設・電力インフラという主要産業がすべて銅に依存しており、LME銅価格の動向は日本の製造業コスト全体のバロメーターになっている。

日本の主要業界への影響

古河電気工業は国内最大の電線・ケーブルメーカーで、海底ケーブル・超電導ケーブル・EV用ハーネスなどの高付加価値製品を強みとする。 銅建価格(1kg当たりの銅素材価格を電線価格に組み込む仕組み)は毎月改定されており、LME銅が14,000ドル台に達した場合の銅建は840〜850円/kg程度となる。 古河電工はLMEヘッジを活用して原材料コストの変動を一部吸収しているが、短期的には電線製品の価格改定が必要な水準に達している。

住友電気工業は世界最大規模の電線・ケーブルメーカーで、自動車用ハーネスが売上の大きな部分を占める。 世界100カ国以上に拠点を持つグローバル企業として、各地でのLME連動調達と販売価格の設定を管理している。 AI・電力インフラ向けの特殊ケーブル(超電導・高圧直流など)への需要拡大が収益の押し上げ要因になっており、銅価格上昇は収益の複雑な方程式を形成している。

三菱マテリアルは国内の主要銅精錬メーカーで、直島製錬所(香川県)・三田川製錬所(佐賀県)を運営している。 LME銅高水準は精錬マージン(TC/RC)の圧縮というコスト面のマイナスと、在庫評価益・精錬品の高値売却というプラス効果が交錯する構造だ。

商社マン視点の先読みポイント

三菱商事の視点から5月第3週の銅市場を整理する。 三菱商事はOT(オジェランコ・テンテ)をはじめチリ・ペルー・オーストラリアに銅採掘権益を持ち、精錬・電線まで幅広い銅バリューチェーンに関与している。

「今、三菱商事の担当者ならどう動くか」について3点に絞る。

第一に、6月30日の米国精製銅関税方針の見直し期限を踏まえ、COMEX-LMEスプレッドの再拡大に備えたアービトラージ機会の準備だ。 関税適用が確定すれば、LMEへの精製銅流入が減少してLME価格が上昇し、COEMXとの逆スプレッドが生まれる可能性がある。 この動きを先読みし、今週中にLME側の先物ポジションを構築することが一つの戦略だ。

第二に、AI・電力グリッド向けの特殊電線・超電導ケーブルの中長期供給契約を、古河電工・住友電工とともにデータセンター開発者・電力会社向けに組成することだ。 銅の長期価格上昇が確実視される中で、固定価格型・数量保証型の中長期供給スキームは需要家側に安定調達コストのメリットをもたらし、商社の信頼獲得につながる。

第三に、JPモルガンが指摘するように、ブレント原油が約110ドル前後で推移する場合、2026年の銅需要成長見通しが1.4ポイント押し下げられるという分析を踏まえ、ホルムズ情勢と銅需要の相関モデルを社内で更新しておくことだ。 原油高が景気減速を通じて銅需要を下押しするシナリオを定量化し、採掘権益の生産コスト管理に活かすことが今期の経営数字を守るために重要だ。 Al Jazeera

まとめ

LME銅は5月15日に前日比-5.12%と急落したが、前年比では+36.92%という高水準を維持している。 Otokurashi

これは銅の「短期:金融政策感応度の高さ」と「長期:構造的需要の強固さ」という二つの顔が同時に現れた1週間だった。 FRBの利上げ観測が短期の売り材料として機能し、AIデータセンター・EV・電力グリッドという長期需要が14,000ドル台という高い床を作っている。

中国の硫酸輸出規制と中東の硫黄生産支障という新たな供給制約要因が加わったことも、長期的な銅市場の逼迫を示す重要な信号だ。 TRADING ECONOMICS

6月末の米国精製銅関税方針という大きなカタリストを前に、調達担当者は中長期ロックの窓を今週内に確認しておくべき局面にある。 銅は「Dr.Copper(銅博士)」の異名通り、世界経済の将来を最も正直に映す金属だ。その示す数字は、現在の不確実性の中でも長期的な成長への期待が生き残っていることを伝えている。

出典

製造業サプライチェーン研究所

基板実装・EMSを起点に、電子部品調達、原材料市況、調達リスク、価格転嫁、製造コストまで。 製造業の調達・営業・経営判断に使える有料レポート、企業データ、Excelツールを販売。 ニュースを現場で使える判断材料に変換します。

▶製造業サプライチェーン研究所

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次