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【2026年4月第5週】亜鉛(LME)週次レポート — 成長懸念でベースメタル最大の下落幅、ただし製錬TC反転と国内工場閉鎖が構造的下値を形成

THE SUPPLIER · 素材カスケード分析

LME亜鉛 需要懸念で弱含み・在庫急減が下値を支える — めっき・建設・自動車への波及

2026年4月第5週(4月27日〜5月2日)
第1層: 上流ショック(実データ)
LME亜鉛スポット(週末推定)
3,310
USD/t
3月に最大下落幅記録後、3,200〜3,300台で推移
LME亜鉛在庫(直近)
〜110,000
トン(前年初比約52%減)
2024年初230,500トンから急減・供給タイト
精錬処理料(TC)
〜100
USD/t(年末比マイナス→プラス転換)
精錬所採算が改善しつつあるシグナル
東邦亜鉛・安中工場
閉鎖
群馬県・精錬能力低下
日本の国内精錬能力が構造的に減少
伝播経路 — 5層カスケード
第1層
亜鉛精錬
LME亜鉛市場
3,200〜3,300ドル/t推移
需要懸念で弱含みも在庫急減が下値支持
国内精錬(三井金属・住友金属鉱山)
東邦亜鉛安中閉鎖→輸入依存度が増大
円安で輸入コストが上昇
第2層
電気亜鉛・酸化亜鉛
電気亜鉛(地金)
国内在庫水準が低下傾向
輸入比率増大でコスト押し上げ
酸化亜鉛(ゴム・医療用)
ゴム加硫剤・日焼け止め原料
LME連動で価格上昇
第3層
めっき処理
溶融亜鉛めっき(ガルバナイジング)
亜鉛地金コスト増で処理料値上げ交渉
鉄鋼・建設向けに転嫁難航中
GI・GA鋼板(日本製鉄・JFE)
めっき原料コスト増→鋼板価格に上乗せ
自動車ボディ材のコストに影響
第4層
最終製品
建設・インフラ(橋梁・ガードレール)
鉄鋼構造物のめっきコスト増が工事費に
公共工事単価の上昇圧力
自動車ボディ(GI鋼板使用)
ボディパネルのコスト増
トヨタ・ホンダへのサプライヤー値上げ申し入れ
第5層
生活・マクロ
建設費・住宅価格
鉄鋼部材コスト増→住宅・土木工事費上昇
2〜3四半期後に顕在化
景気先行指標
亜鉛安は建設・製造の先行き悪化シグナル
中国GDP下方修正が引き金
業界別アラート
めっき加工業者(溶融亜鉛めっき専業)
亜鉛地金コスト増の処理料転嫁交渉が難航。輸入依存比率の上昇でコスト管理が複雑化
要対応
即時〜2ヶ月
鉄鋼メーカー(日本製鉄・JFEのGI/GA鋼板)
めっき原料コスト増が製品価格の改定圧力に
監視強化
1〜3ヶ月
建設・ゼネコン(鉄鋼構造物めっき)
橋梁・鉄塔・ガードレールのめっきコスト増が建設費上昇
注視
2〜4ヶ月
要注視
自動車(ボディパネルのGI鋼板使用)
亜鉛めっき鋼板のコスト増が車両製造原価に影響
注視
2〜3ヶ月
要注視
ゴム・医療用品(酸化亜鉛)
LME連動の酸化亜鉛価格上昇が製造コストに反映
注視
1〜2ヶ月
要注視

結論サマリー

  • LME亜鉛は3月に中東紛争起因のドル高と中国2026年GDP目標の下方修正でベースメタル中最大の下落を記録し、3,200〜3,300ドル/t近辺で推移
  • 東邦亜鉛・安中工場(群馬県)が閉鎖し、日本国内の精錬亜鉛生産能力が低下している
  • 世界の精錬亜鉛生産は2025年に前年比2%減少し、カザフスタン・日本の精錬所稼働抑制が主因
  • LME在庫は前年初の230,500トンから直近110,000トン台へ大幅に減少しており、供給タイトの構造が継続
  • 製錬処理料(TC)はマイナス115ドル/tだった年末から100ドル/t近辺に回復しており、精錬所の採算改善を示唆

【今週の動き】LME亜鉛の現状

亜鉛市場は今週も「需要サイドの成長懸念」対「供給サイドの構造的タイト」という二項対立の相場展開が続いた。FocusEconomicsの分析によれば、亜鉛は3月に中東紛争が引き起こしたドル高と、中国が2026年のGDP成長目標を下方修正したことで、ベースメタルの中で最も大きな下落幅を記録した。これは亜鉛の需要構造と深く関係している——亜鉛の用途の大部分が鉄鋼のめっき(溶融亜鉛めっき)であり、最大消費国の中国の建設・不動産市場の低迷が亜鉛需要の先行き不透明感を高める。一方で、Trading Economicsのデータが示すように、LME在庫は直近で110,000トン台と前年初(230,500トン)から半分以下に減少しており、この物理的なタイト感が3,000ドル割れを防いでいる。

直近5日間の値動き(LME亜鉛)

日付価格推定 ($/t)前日比主要ニュース
4月27日(月)3,280−0.5%中国GDP懸念継続で軟調。銅・アルミと逆行
4月28日(火)3,250−0.9%ドル高継続で圧力。LME在庫は110,000t台
4月29日(水)3,265+0.5%中国PMI期待で下げ止まり感
4月30日(木)3,290+0.8%中国PMI予想超え拡大で他ベースメタルに追随上昇
5月1日(金)3,310+0.6%週末の需要確認で小幅続伸、3,300ドル台を回復

データソース: Trading Economics – Zinc / LME Zinc / FocusEconomics

今週の主要因

亜鉛相場を動かした要因は供給・需要・マクロの3層から分析できる。需要面では、中国が2026年の経済成長目標を引き下げたことで、世界の鉄鋼需要——特に建設・不動産向け——の見通しが悪化した。亜鉛は鉄鋼のめっき用に使用される割合が最も高いため、建設・不動産の低迷が直接的な需要圧縮要因になる。供給面では、Trading Economicsのレポートが指摘するように、2025年の世界精錬亜鉛生産は前年比2%減少しており、カザフスタンの精錬所稼働抑制と東邦亜鉛・安中工場(群馬県)の閉鎖が主因だ。マクロ面では、中東紛争によるリスクオフがドル高を招き、ドル建て商品の価格に下押し圧力をかけた。これら3つが重なって3月に急落したが、LME在庫の歴史的低水準が下値を3,000ドル超に踏みとどまらせている。

【今週の動きが意味するもの】5層カスケード分析

亜鉛は「目立たないが産業の根幹を支える」素材の典型だ。橋梁・ガードレール・自動車ボディ・建材の鉄鋼製品を錆から守る溶融亜鉛めっきなしに、インフラも輸送機器も成立しない。3,200〜3,300ドル/tという水準は、前年同期比で見ても依然として高水準であり、鉄鋼・建設・自動車の調達コストに上乗せ圧力をかけ続けている。

第1層・第2層: 原料と中間材

亜鉛の生産チェーンは「亜鉛鉱石(硫化亜鉛)→製錬(亜鉛精鉱)→精錬(電気亜鉛)」という3段階を経る。日本における精錬亜鉛の生産では、東邦亜鉛・三井金属鉱業・住友金属鉱山などが主要プレーヤーだ。東邦亜鉛の安中工場(群馬県)が閉鎖となったことで、国内の精錬能力が一段と低下しており、日本の亜鉛需要の一部は輸入でカバーする構造へのシフトが進んでいる。製錬処理料(TC)は2025年末にマイナス115ドル/tという歴史的な低水準(精錬所が鉱山に支払いをする状態)から、足元では100ドル/t近辺に回復しており、精錬所側の採算が改善していることを示している。LME在庫は2024年初の230,500トンから直近の110,000トン台へと急減しており、在庫日数の観点からも市場はタイトな状態にある。

第3層: 中間製品の動向

亜鉛の最大用途である溶融亜鉛めっき(ガルバナイジング)は、鉄鋼製品(形鋼・鋼管・鋼板)の防錆処理に不可欠だ。国内めっき専業メーカーは、亜鉛地金コストの上昇を顧客(鉄鋼・建設・電力会社)への処理料に反映させようとしているが、値上げ交渉の難航が続いている。酸化亜鉛(ゴム用加硫剤)・亜鉛ダイカスト(精密部品用)など二次的な用途でも調達コスト上昇の影響が出ている。ダイカスト向けではZinc Price Forecast – Investing News Network の分析が指摘するように、低LME在庫が短納期調達を困難にしており、メーカーは長期契約の締結を急ぎ始めている。

第4層: 最終製品への波及

建設・インフラ(橋梁・ガードレール・鉄塔)— めっきコスト増が工事費に

公共工事・民間工事を問わず、鉄鋼構造物の防錆めっきコスト増が建設費の押し上げ要因となっている。

自動車(ボディパネルのGI鋼板)— 電気亜鉛めっき鋼板のコスト増

日本製鉄・JFEスチールが製造する溶融亜鉛めっき鋼板(GI鋼板・GA鋼板)のコストに亜鉛価格上昇が反映される。

電気・電力(電線管・アングル材)— 配管・架台の防錆コスト上昇

電力送配電設備・通信鉄塔の鉄鋼アングル材には亜鉛めっきが必須であり、建設コストに反映される。

農業(亜鉛系肥料・殺菌剤)— 農業資材コストの一部として上昇

亜鉛は植物の微量栄養素でもあり、亜鉛硫酸肥料の価格上昇が農業資材コストを押し上げる。

医療・化学(酸化亜鉛)— 日焼け止め・ゴム製品の原料コスト増

日焼け止めクリームの紫外線散乱剤や医療用品の原料として、酸化亜鉛価格の上昇が製造コストに影響する。

第5層: 生活・マクロへの波及

亜鉛の価格動向は「建設・不動産市場の先行指標」としても機能する。中国の不動産市場が低迷を続け、GDP成長目標が下方修正された状況下では、世界の鉄鋼需要——ひいては亜鉛需要——の回復時期を見通すことが難しい。日本国内では東邦亜鉛・安中工場の閉鎖という国内供給減少が輸入依存度を高めており、円安環境下での輸入コスト増が製造業の原価に上乗せされる。財務省の貿易統計では亜鉛地金の輸入価格が前年比で上昇しており、この傾向は当面継続する見込みだ。

【今後の展望】来週・1ヶ月先・3ヶ月先

来週(7日先)の注目ポイント

日付イベント影響
5月7日中国4月貿易統計(亜鉛輸入量)中国の需要実態を確認
5月8日LME在庫週次更新110,000トン台割れなら逼迫感強まる
5月12日中国4月固定資産投資(建設・不動産)亜鉛需要の先行き指標
随時三井金属鉱業・住友金属鉱山の生産状況国内亜鉛供給の動向

来週のLME亜鉛は3,200〜3,400ドルのレンジ内での推移が続く見込みだ。中国の固定資産投資統計が建設需要の底打ちを示せば、需要側の懸念が後退して3,500ドルへの試しも考えられる。

1ヶ月先の見通し

LME在庫の低水準(110,000トン台)が改善しない限り、亜鉛の下値は3,000〜3,100ドル近辺で支えられると予想する。一方で中国の不動産市場低迷と世界景気への中東紛争の悪影響が上値を抑え、3,200〜3,500ドルのレンジが1ヶ月先の基本シナリオだ。日本の調達担当者は、円安前提で亜鉛地金の円換算コストが前年比大幅高であることを調達計画に反映しておく必要がある。

3ヶ月先の構造的展望

亜鉛の3ヶ月後の展望を左右するのは「中国の不動産・建設の回復速度」と「精錬能力の回復」だ。TCが100ドル/t近辺に戻ったことで精錬所側の採算が改善しつつあり、新規投資・稼働再開の誘因が生まれている。半面、低LME在庫が続く間は価格の下値余地が限られており、停戦成立→リスクオフ後退→ドル安という順に価格上昇圧力が高まるシナリオも考えられる。

リスクシナリオ

強気シナリオ(LME亜鉛3,800〜4,000ドル/t): 中国の景気刺激策が建設需要を回復させ、LME在庫がさらに低下。停戦成立でリスクオフが後退し、亜鉛需要が急回復。中立シナリオ(3,100〜3,400ドル/t): 現状維持。中国需要の低迷と低在庫が拮抗した相場が続く。弱気シナリオ(2,700〜3,000ドル/t): 世界景気の悪化が中東紛争後のリセッションとして顕在化し、鉄鋼需要が急減。

【業界別】今週の動きへの対応指針

調達担当者・購買部門

亜鉛地金の調達は、輸入比率の増加(東邦亜鉛安中閉鎖の影響)を踏まえて、オーストラリア・カナダ産などの代替供給ソースを確保しておくことが重要だ。めっき加工コストの上昇分は顧客への価格転嫁条項として契約に盛り込む準備を進める必要がある。LME在庫が110,000トン台という低水準にある現状では、スポット調達に過度に依存するリスクを避け、3〜6ヶ月分の購買計画を持っておくことを推奨する。

経営者・経営企画

亜鉛を多用するめっき加工業者・建材メーカー・ダイカストメーカーにとって、3,000〜3,500ドルという水準は利益率を直撃する。価格転嫁の成否が収益の明暗を分けており、コスト増の客観的な根拠(LME亜鉛・東邦亜鉛の閉鎖・TC回復など)を顧客への説明資料として整備することが急務だ。

投資家・アナリスト

亜鉛は今回の中東紛争で「最も大きく売られたベースメタル」であり、その反面、LME在庫低水準と精錬能力の構造的制約が下値を支えている。停戦後の「リスクオフ巻き戻し」局面では、売られ過ぎからの反発が最も鋭く出る可能性がある素材のひとつだ。South32・Glencore・三井金属鉱業などの亜鉛関連株も注目点だ。

よくある質問(FAQ)

Q: 今週、亜鉛はなぜ他のベースメタルより弱かったのですか?

A: 中国の2026年GDP成長目標の下方修正が需要の先行き懸念を直撃したためだ。亜鉛は鉄鋼のめっき用途が大部分を占めており、中国の建設・不動産低迷が需要面の重しとなっている点で銅・アルミよりも景気敏感度が高い。

Q: この弱さはいつまで続きますか?

A: 中国の不動産市場の回復時期が最大の変数だ。中国政府の追加景気刺激策の規模と、世界の建設需要の回復がセットで確認されるまでは、3,000〜3,400ドルのレンジでの推移が続く可能性が高い。

Q: 東邦亜鉛・安中工場閉鎖の日本への影響は?

A: 国内の精錬亜鉛生産能力の低下により、輸入依存度が高まっている。円安環境下では輸入コストが上昇し、めっき加工業者・鉄鋼メーカーの調達コスト増として現れる。

Q: 為替の影響は?

A: 1ドル157円での円換算では、LME亜鉛3,310ドルは約52万円/tで、前年同月比では為替変動も含めて大幅に上昇している。

Q: 来週の注目ポイントは?

A: 中国4月貿易統計の亜鉛輸入量と、LME亜鉛在庫の週次更新が最大の焦点だ。110,000トン台割れなら供給タイト感が強まって価格支持要因となる。

まとめ — 今週のポイント3つ

  1. 亜鉛は「中東紛争の被害者」と「中国成長鈍化の被害者」という二重苦: 他のベースメタルがエネルギー・供給要因で上昇する中、亜鉛だけが需要見通し悪化で売られる構図が鮮明だった。
  2. LME在庫110,000トン台という「見えない床」が相場を支えている: 精錬亜鉛の生産減(2025年比2%減)と在庫急減が、需要懸念を打ち消す程度の供給タイト感を市場に提供している。
  3. 東邦亜鉛・安中閉鎖は日本の亜鉛調達の「静かな構造変化」: 国内精錬能力の低下は国際競争力の観点から見逃せない変化であり、輸入依存の増大と円安リスクの管理が日本の調達部門の新たな課題だ。

亜鉛市場は今、供給の構造的制約と需要の循環的低迷が交差する複雑な局面にある。「安くなったから買い時」と判断するには、中国の不動産回復という構造的な裏付けが必要であり、今すぐ大量購入に動くよりも、計画的な調達管理と供給源の多様化が優先事項だ。

出典・参考情報

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