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【2026年5月第3週】パラジウム 週次レポート

製造業サプライチェーン研究所

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THE SUPPLIER · 7層素材カスケード分析

パラジウム 週次レポート — $1,444と4月以来安値・前年比+50%高水準維持・EVシフト鈍化がガソリン触媒需要を下支え

2026年5月第3週(5月11日〜16日)
第1層: 上流ショック(実データ)
パラジウムスポット(XPD/USD)
1,444
USD/オンス(5月15日・4月以来安値)
過去4週間 -8.54%|前年比 +50.36%
Q1 2026高値(参考)
2,195
USD/オンス(Q1 2026一時高値)
現在は高値比-34%の調整局面
供給赤字(2024年実績)
50万oz
(2023年は90万oz赤字・2012年から連続赤字)
2026年余剰転換の見込みは不確実
ロシア産供給シェア
約38〜40%
(ノリリスク・ニッケル社が主体)
Section 232・制裁リスクが常在
伝播経路 — 7層カスケード(ノリリスク・南アフリカ鉱山からガソリン車・保険診療まで)
第1層上流原料
パラジウム鉱石(ロシア・南ア伴採)
露38〜40%・南ア37〜38%|産地極集中
スポット(XPD)$1,444
4月以来安値|前年比+50%・年初-34%
第2・3層地金・中間材
※両層は一体化
ファイン・パラジウム地金
田中貴金属・三菱マテリアル・DOWAが精製
パラジウムブラック・Pd/Rh合金触媒
ガソリン触媒ウォッシュコートの主原料
第4層部品・素子
三元触媒コンバーター(ガソリン・HEV)
全需要の80〜90%|キャタラー(トヨタ系)
MLCC内部電極(Pd/Ag合金)
村田製作所・TDK向け|高値で銀代替進む
歯科用金銀パラジウム合金
保険診療補綴材料|公定価格制度で管理
第5層組立品
排気システム(触媒コンバーター内蔵)
HEVの普及でパラジウム需要が維持される
電子部品モジュール(MLCC搭載基板)
スマホ・EV制御ユニット向け
第6層最終製品
ガソリン車・HEV(トヨタ・ホンダ)
EV鈍化でHEVが急拡大→触媒需要維持
スマートフォン・電子機器
微量使用|店頭価格への直接影響は限定的
歯科治療(保険補綴・クラウン)
公定価格改定で半年〜1年ラグ後に反映
第7層店頭・家計
新車価格(触媒コスト2〜3年遅延転嫁)
設計段階での価格固定→転嫁タイムラグ大
歯科治療費(保険自己負担)
公定価格改定サイクルで間接影響
廃触媒リサイクル価値(DOWA等)
廃車触媒から回収→都市鉱山収益増
業界別アラート
トヨタ自動車(HEV触媒調達)
HEVの世界販売が急拡大中。1台当たりのPd触媒コストが高止まりの中で、キャタラーとの触媒コスト管理が重要
注意
継続中
コスト管理要
ホンダ(e:HEV・触媒調達)
FIT・VEZEL等のe:HEVでガソリン系触媒を継続使用。EV移行遅延でPd調達を今後も続ける構造
注意
継続中
HEV拡大中
DOWAホールディングス(廃触媒リサイクル)
廃自動車触媒からのPd回収が高値環境で収益増。都市鉱山供給が採掘産の代替として重要性拡大
恩恵
5月時点
回収収益増
ロシア・ノリリスク・ニッケル(制裁リスク)
米国のSection 232調査と反ダンピング手続きが未決継続。制裁発動なら世界Pd供給の38〜40%が消滅リスク
要警戒
未決継続中
制裁リスク
村田製作所・TDK(MLCC電極代替)
Pd高騰でMLCC内部電極のPd比率を下げる銀比率増の代替配合への切り替えを一部検討中
注意
設計変更検討中
代替材検討
丸紅(PGM権益・自動車向け供給)
1,444ドルは南ア採掘限界コスト近辺。中長期供給契約を提案するタイミングとして、トヨタ・ホンダへアプローチ
収益機会
今週中の検討推奨
長期契約提案

結論サマリー

パラジウムは5月15日に1,444ドル/オンスと4月以来の安値まで下落し、過去4週間で8.54%の下落となった。 Jera

しかし前年同期比では50.36%高を維持しており、2024年末の底値圏900ドル台からの急騰局面が崩れたわけではない。

米国のインフレ高進を受けてFRBの高金利長期化観測が強まり、ドル高と米国債利回り上昇が非利子資産のパラジウムへの売り圧力につながった。 Jera

需要面では「EVシフトの鈍化・ハイブリッド車(HEV)の急拡大」というシナリオの変化がパラジウムを下支えしており、ガソリン系触媒需要は予測より底堅い。

供給面では南アフリカの生産支障とロシア輸出をめぐる制裁リスクが依然として市場に緊張をもたらしており、供給側のリスクは一段と高まっている。 Jera

今週の動き

パラジウムはPGM(白金族金属)の中でも特にEV移行の速度に影響を受けやすい素材として知られており、今週はFRBの利上げ観測と自動車需要の複合的な文脈の中で下値を試す展開となった。

2026年5月時点でパラジウムは過去12カ月で約90%上昇し1,500ドル近辺で推移している。 週明けの5月11日は約1,506ドルでスタートし、米中関税停戦の産業需要期待を受けて小幅上昇する場面があった。 内閣官房

しかし12日の米CPI(前年比3.8%)、14日のPPI(月次+1.4%、年率6.0%)という二連打のインフレ指標ショックでドルと米国債利回りが急騰し、非利子のパラジウムも売られた。 最終的に5月15日は1,444ドルと4月以来の安値で週を終えた。

直近5日間の値動き

5月11日(月)は1,506ドル水準でスタートした。 米中関税90日停戦でガソリン系自動車の製造需要期待が出たが、パラジウムへの直接的な反応は限定的だった。

12日(火)に米4月CPIが前年比3.8%と想定超過。 FRB利上げ観測が急速に強まり、パラジウムも1,480ドル台に押し戻された。

13日(水)は米中首脳会談でホルムズ開放協力が報じられ、エネルギー市場が一時落ち着いた。 パラジウムも1,490ドル前後に小幅反発した。

14日(木)にPPIが月次+1.4%と想定の3倍近い強さで着地すると、全金属に売りが広がり1,460ドル台に急落した。

15日(金)は上値の重い展開の中で1,444ドルまで下落し、4月以来の安値圏で週を終えた。

今週の主要因

第一は、米インフレ指標の想定超過によるFRB利上げ観測強化だ。 高金利環境は自動車ローン金利の上昇を通じて新車販売を抑制するリスクがあり、パラジウムの最大消費用途であるガソリン系触媒の需要見通しに悪影響を及ぼす。

第二は、EVシフトの「ペース修正」という需要面の底堅さだ。 EVの予測よりも遅い普及とHEV・ICE車の堅調さが、パラジウム比率の高い触媒をサプライチェーンの中核に維持し続けている。 この認識は相場の下値を支える材料になっている。 PPS

第三は、ロシア産パラジウムをめぐる地政学リスクの継続だ。 ロシアのノリリスク・ニッケルは世界のパラジウム供給の約38〜40%を占める。 米国のSection 232調査と反ダンピング手続きが未決のまま続いており、万一制裁が発動されればパラジウム市場に直撃弾となり得る。

7層カスケード分析

パラジウムは需要の80〜90%が自動車排ガス触媒(ガソリン車・HEV系)という極めて産業集中度の高い素材だ。 この「自動車一本足」の需要構造が市場の強みであり、同時に最大の弱点でもある。

第2層と第3層は実質的に一体化している。 精製されたパラジウム地金から自動車触媒向けの「パラジウムブラック(高比表面積微粒子)」と工業用中間材料への転換が同段階で行われる。

第1層と第2層: 上流原料と一次加工材

パラジウムの世界一次生産は年間約670万オンス程度で、ロシアが約38〜40%(ノリリスク・ニッケル社が主体)、南アフリカが約37〜38%を占める。 この2カ国で世界供給の約75〜78%をカバーするため、産地集中リスクがパラジウムの本質的な脆弱性だ。

スポット価格は5月15日に1,444ドルと4月以来の安値をつけた。 Q1 2026には2,195ドルまで一時上昇したが、その後マクロ主導の調整で1,500ドル近辺まで下落し、5月第3週には1,444ドルまで押し込まれた。 内閣官房

5月2026年時点でパラジウムは過去12カ月で約90%上昇しており、1,500ドルは南アフリカの多くの鉱山の生産限界コストに近い水準でもある。 これは逆に「価格がこれ以上下がると採掘不採算になる」という下値サポート論の根拠になっている。 内閣官房

国内価格は田中貴金属工業が毎日公表しており、スポット1,444ドル×為替157.93円換算でグラム約732円相当のスポット水準(小売加算前)となっている。

第3層: 中間材料

精製されたパラジウム地金から工業用途向けの中間材料への転換は主に自動車触媒用の「パラジウムブラック」および「パラジウム/ロジウム合金ウォッシュコート」として行われる。

田中貴金属工業・三菱マテリアル・DOWAホールディングスが国内の主要なパラジウム精製・加工メーカーだ。 パラジウムはガソリンエンジン排ガスのうち未燃炭化水素(HC)と一酸化炭素(CO)の酸化触媒として最大の効率を発揮し、この点でディーゼル系触媒により適したプラチナと棲み分けている。

自動車触媒以外の用途としては、電子部品向け多積層セラミックコンデンサ(MLCC)内部電極、歯科合金、化学工業用触媒などがあるが、合計でも全体需要の10〜20%にとどまる。

第4層: 部品・素子

パラジウムの第4層はほぼイコール「自動車用三元触媒コンバーター」だ。 ガソリン車・HEVに搭載される触媒コンバーターのウォッシュコート(活性成分層)にパラジウムとロジウムが主役の触媒として使われる。

世界のパラジウム需要の90%が自動車産業から来ており、ガソリン系排ガスの浄化に必須の金属として機能している。 PPS

電子部品向けでは村田製作所・TDKがMLCC内部電極に銀・パラジウム合金を使用しているが、パラジウムの高騰を受けて一部では銀比率を高める代替配合への切り替えが進んでいる。

第5層: 組立品・中間製品

自動車の排気システムにおいて、三元触媒コンバーターが触媒ハウジングに組み込まれ排気管に接続される段階が第5層だ。 トヨタ・ホンダ・日産・スズキの国内自動車メーカーがガソリン車・HEVを製造する際、主要な触媒コンバーターサプライヤー(株式会社キャタラー〈トヨタ系〉・フタバ産業等)から調達する。

HEVは触媒コンバーターの熱による早期劣化を防ぐ構造を持つが、パラジウム使用量はガソリン車と同程度であるため、HEVの普及はパラジウム需要の持続につながる。

サブアセンブリ段階での価格転嫁について、PGM系触媒コストは自動車メーカーとの年間または複数年のコスト交渉を通じて価格が決まる構造だ。 このため、現在の1,444ドルが即座に新車価格に反映されるわけではなく、次回の交渉サイクルを経て段階的に転嫁されていく。

第6層: 最終製品への波及

ガソリン車・HEV

パラジウム需要の主体であるガソリン車・HEVの最終製品段階で、触媒コストが車両価格に組み込まれる。 EVの採用が遅れ、ハイブリッド車やICE車が予測以上に生き残っているために、パラジウムを多く含む触媒が自動車サプライチェーンの中心であり続けている。 PPS

電子機器(スマートフォン・基板)

MLCC内部電極向けのパラジウム需要は触媒の約1割程度だが、スマートフォン・PC・EV制御ユニットへの搭載量が積み重なると相応の需要量になる。 パラジウムの高値が銀への代替を進める動きも出ており、電子部品向け需要は徐々に縮小する方向にある。

歯科治療(金属補綴)

歯科用パラジウム合金(金銀パラジウム合金)は日本の保険診療において最も広く使われる補綴材料だ。 保険適用のため公定価格制度があるが、パラジウム価格の上昇は制度改定のタイミングを経て歯科診療コストに反映される。

化学工業

パラジウム触媒(均一系・不均一系)は医薬品合成・ファインケミカル合成に欠かせない。 2010年にノーベル化学賞を受賞した「パラジウム触媒クロスカップリング反応」の工業的応用が拡大しており、化学工業向け需要は小さくも安定して成長している。

水素(グリーン水素製造)

プラチナと同様、PEM電解槽ではパラジウムが一部補助的に使われるケースがある。 ただし主力はプラチナとイリジウムであり、パラジウムの水素関連需要はまだ限定的だ。

第7層: 店頭・家計・マクロへの波及

パラジウムが家計に届く最大の経路は自動車の購入コストと維持費だ。 触媒コンバーターの交換費用(廃車時・劣化時)はパラジウム市況に連動する。 また、保険診療の金銀パラジウム合金補綴の材料費は歯科材料メーカーが価格改定を行う際に半年〜1年のタイムラグを経てパラジウム市況を反映し、結果として保険診療の自己負担額にも遠因として影響する。

電子機器についてはパラジウム使用量が少量のため店頭価格への影響はほぼ見えない形になっている。

CPI(消費者物価指数)への影響という観点では、パラジウムは自動車価格を通じた間接的な寄与にとどまり、ガソリン・ナフサのように直接的なCPI押し上げ効果はない。 ただし長期的にパラジウム高水準が続けば、国産ガソリン車・HEVの製造コスト増が新車価格を押し上げ、CPI耐久消費財項目に緩やかに影響する可能性がある。

今後の展望

パラジウムは「EVシフトの速度」と「ロシア制裁リスク」という二つの変数を左右に抱えながら、方向感の出にくい局面が続く。

来週の注目ポイント

5月20日(水)のFOMC議事録がパラジウムにとっても最大のカタリストだ。 利上げトーンが強ければドル高→パラジウムへの売り圧力が継続する。 5月21日(木)のS&Pグローバル製造業PMI(5月速報)が自動車生産の回復度合いを示す指標として注目される。 製造業PMIが予想を上回ればパラジウムの触媒需要期待が高まり、下値支持に働く可能性がある。

1ヶ月先の見通し

バリオン・エクスチェンジズはパラジウムの2026年ベースケースを1,300〜1,600ドル/オンスとしている。 現在の1,444ドルはこのレンジの下限近くに位置しており、FRBの姿勢が確認されるまでのもみ合いが続く見通しだ。 EVシフトが当初予測より遅れているという構造認識が定着すれば、1,500〜1,600ドルへの戻りも十分あり得る。 東京電力

3ヶ月先の構造的展望

世界のパラジウム供給は2012年から一貫して赤字が続いており、2023年に90万オンス、2024年に50万オンスの供給不足が記録された。 市場アナリストは当初予測していた2026年の黒字転換がさらに先送りになる可能性があると警告している。 WPICが指摘するように、黒字転換の見込みはリサイクル供給の回復に全面的に依存しており、これが実現しなければパラジウムは当面赤字のまま推移する可能性がある。 PPS + 2

逆置換(パラジウム→プラチナへの触媒切り替え)については、WPICは2029年までに逆置換が25万オンスに達すると予測しており、中国の排ガス規制China 7の施行(2028年〜)がパラジウム需要に相対的に有利に働くとしている。 東京電力

リスクシナリオ

シナリオ1(急騰): ロシアのノリリスク・ニッケルに対する制裁が強化・実効化された場合、パラジウムは2,000ドル超への急騰も現実的だ。2022年の3,440ドルのパニックプレミアムを参照すれば、上振れ幅は極めて大きい。 シナリオ2(追加下落): FRBが利上げを断行し、景気後退観測から自動車販売が急減速した場合、パラジウムは1,200〜1,300ドルへの下押しリスクが生まれる。EVシフトが同時に加速した場合には構造的な需要縮小懸念も重なる。 シナリオ3(緩やかな持ち直し): HEVの世界販売が堅調に推移し、供給赤字が2027年まで継続した場合、パラジウムは1,500〜1,800ドルのレンジを緩やかに回復していくシナリオが最も現実的と多くのアナリストは見ている。

業界別の対応指針

調達担当者

自動車触媒向けのパラジウム調達担当者は、1,444ドルという水準が南アフリカ採掘の限界コスト近辺であり、構造的な追加下落余地が限られていることを踏まえ、この水準での中長期ロックを検討する好機だ。 ロシア産パラジウムの代替として北米産(サイバニー・スティルウォーター等)・南ア産の調達先比率の引き上げと、先物ヘッジの組み合わせで地政学リスクを分散することが有効だ。 電子部品向けのMLCC調達担当者は、銀比率を高めた代替配合への設計変更を製品ロードマップに組み込む中長期戦略を今期中に確認しておくことが望ましい。

経営者

トヨタ・ホンダなど自動車メーカーはHEVの世界販売拡大がパラジウム調達コストを今後数年間維持または増加させることを前提に、触媒コスト管理の長期計画を策定する必要がある。 パラジウムとプラチナの「逆置換」(価格差を利用した触媒原料切り替え)のコスト分析を定期的に実施し、適切なタイミングで配合比率を調整できる柔軟な触媒設計を触媒サプライヤーと共有しておくべきだ。 歯科材料メーカーはパラジウム公定価格の改定サイクルを見越したコスト管理と代替材(ジルコニア等)への移行計画を並行して進めることが合理的だ。

投資家

前年比50%高という現在の水準は既に大きなリターンが出ている状況だ。 1,444ドルは南ア採掘限界コスト近辺であり下値は限定的との見方がある一方、ロシア制裁リスクのプレミアムが乗る上値余地も残っている。 プラチナとパラジウムをセットで保有する「PGMバスケット戦略」が、二金属間の逆置換というクロスリスクをヘッジしながらPGM市場全体の上昇に参加できる合理的な方法だ。

よくある質問

Q1: 今週、パラジウムはなぜ下落したのですか?

米国のインフレ高進を受けてFRBの高金利長期化観測が強まり、ドル高と米国債利回り上昇が非利子資産のパラジウムへの売り圧力につながった。 産業需要面の底堅さはあるものの、金融的な売り圧力が上回る局面となった。 Jera

Q2: この動きはいつまで続きますか?

FRBの方向性が確認される6月FOMC(6月17〜18日)までは1,400〜1,600ドルのレンジで推移しやすい。 ロシア産制裁の動向次第で急騰リスクが常に内在している。

Q3: 自社の調達戦略にどう影響しますか?

自動車触媒向け調達は1,444ドルが南ア採掘限界コスト近辺という認識で、中長期ロックのタイミングとして検討に値する。 ロシア産依存度が高い調達構造は早急な代替ルート整備が必要だ。

Q4: 為替の影響はどのくらいですか?

ドル円157.93円のもとでパラジウム1,444ドルの円換算は1グラム約732円相当となる。 円安1円でパラジウム輸入コストは0.7〜0.9%上昇する。

Q5: 消費者への影響はいつ反映されますか?

自動車触媒コストは設計段階で数年先の価格を固定する構造のため、新車価格への転嫁は2〜3年のタイムラグがある。 保険診療の金銀パラジウム合金補綴材料については半年〜1年の公定価格改定サイクルを経て歯科治療費に反映される。

編集部解説:日本への波及

パラジウムは日本にとって「自動車産業の根幹素材」であり「歯科診療を支える保険材料」という二重の重要性を持つ。 特にトヨタ・ホンダが世界最大のHEV販売メーカーであることを踏まえると、パラジウム市況の変動は日本の自動車産業のコスト構造に直結する。

日本の主要業界への影響

自動車業界では、トヨタ自動車がHEV(プリウス・カローラ・RAV4等)の全世界販売台数でパラジウム消費量が最も大きいメーカーの一つだ。 触媒コンバーターの調達はキャタラー(トヨタグループ会社)経由が主体で、パラジウム・ロジウムの採購コストは定期的にトヨタのコスト管理対象となっている。 HEVの世界販売が加速する中でパラジウムコストが高止まりすれば、1台当たりの材料コスト増が累積的に膨らむ構造だ。

ホンダもFIT・VEZEL・CR-Vのハイブリッドモデルを中心に、パラジウム系触媒を大量に使用している。 ホンダは独自のe:HEVシステムでHEVの燃費性能を高めており、ガソリン系エンジンとの共存を前提とした設計がパラジウムの安定調達を今後も必要とする構造だ。

歯科業界では、保険診療で広く使われる「12%金銀パラジウム合金」(金20%・銀40%・パラジウム12%・銅28%)の材料費が厚生労働省による公定価格改定を通じて反映される。 2026年度の診療報酬改定でパラジウム成分の材料費基準額が更新されており、歯科医院と患者双方が意識しにくい形でパラジウム市況が保険診療に影響を与え続けている。

DOWAホールディングスは廃自動車触媒からのパラジウム回収・精製を主要事業の一つとしており、パラジウム高値環境が都市鉱山ビジネスの収益性を高めている。 廃車された触媒コンバーターから回収されるパラジウムの量は年々増加しており、採掘産の代替供給源として重要性が高まっている。

商社マン視点の先読みポイント

丸紅の視点から2026年5月のパラジウム市場を眺めると、「EV/HEV比率の変化」と「ロシア供給リスク」という二つの変数が全く異なる方向に働いている。

丸紅は南アフリカのPGM関連権益と自動車向け貴金属原料の供給事業を展開しており、ノリリスク・ニッケル系のロシア産パラジウムへの依存度管理が最重要課題だ。

「今、丸紅の担当者ならどう動くか」を3点に整理する。

第一に、1,444ドルという水準が南アフリカ採掘限界コスト近辺であることを根拠に、トヨタ・ホンダなど自動車メーカーの触媒調達部門に「現在の水準での1〜2年物の長期調達契約」を提案することだ。 FRBの政策確認後に価格が上昇する前に、需要家側のコストを固定させることは商社の付加価値になる。

第二に、ノリリスク・ニッケルからの供給が制裁で途絶するリスクに備え、北米のサイバニー・スティルウォーター(モンタナ州)やジンバブウェ産パラジウムのスポット調達ルートを今週内に確認・強化することだ。 代替産地のパラジウムは輸送コストが高く量も限られるが、緊急時の「つなぎ供給」として不可欠な体制だ。

第三に、歯科材料向けパラジウムの需要は公定価格制度により市況変動への感応度が低いため、長期安定顧客として位置づけ、価格上昇局面での優先供給によるリレーション強化を図ることだ。 歯科向けは量は少ないがキャッシュフローが安定しており、商社にとって収益の質が高いビジネスだ。

まとめ

パラジウムは「EVシフトの鈍化→ガソリン系触媒需要の持続」という需要面の好材料と、「FRB利上げ観測→ドル高・金利上昇」という金融面の売り圧力が拮抗している局面だ。

EV普及が遅れ、ハイブリッド車が予想以上に活躍し続けることで、「終わる金属」という従来の評価が覆されつつある。 構造的な供給赤字が2012年から続いており、この事実は価格の底を支える本物の力だ。 PPS

ロシア産の制裁リスクという「有事の急騰要因」が常に内在しており、今週の1,444ドルは「静かな蓄積」の局面として長期投資家に認識されている。

調達担当者・経営者ともに、「EV/HEV比率の変化をリアルタイムで追いながら、ロシア制裁リスクを常にヘッジコストに織り込む」という複合的なリスク管理が今年最も重要な実務課題だ。

出典

製造業サプライチェーン研究所

基板実装・EMSを起点に、電子部品調達、原材料市況、調達リスク、価格転嫁、製造コストまで。 製造業の調達・営業・経営判断に使える有料レポート、企業データ、Excelツールを販売。 ニュースを現場で使える判断材料に変換します。

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