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【2026年5月第4週】LMEアルミ 週次レポート|EGA12ヶ月復旧・アルバ停止で2百万トン超の「ブラックスワン」 NSP過去最高560円の衝撃

製造業サプライチェーン研究所

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THE SUPPLIER · 7層素材カスケード分析

LMEアルミ|EGA12ヶ月復旧・アルバ停止 ブラックスワン供給ショックとNSP過去最高560円

2026年5月第4週(5月19〜22日)
第1層: 上流ショック(実データ)
LMEアルミ(3ヶ月先物)
3,637
USD/t · 5月18日(週レンジ3,580〜3,660)
4年半ぶり高値圏 年初来+約20%
湾岸3拠点 供給損失(推計)
最大350万
t/年(EGA・アルバ・クワタラム合計)
世界供給の約4〜5%相当
日本NSP(4〜6月期)
560
円/kg 過去最高 前期比+60円
7〜9月期 600円超の可能性
LME在庫(5月中旬)
344,000
t(1月末比 ▼30%)
3ヶ月で153,000t急減
伝播経路 — 7層カスケード(原料から店頭まで)
第1層上流原料
ボーキサイト・アルミナ
LMEアルミナ $307.15/t 安定(5月11日)
湾岸精錬所(EGA・アルバ等)
EGA: 停止12ヶ月 アルバ: 30%稼働
第2層一次加工材
一次アルミ地金(Pシェープ等)
日本NSP 560円/kg 過去最高
対日プレミアム
350ドル/t(前期比+80% 11年ぶり高水準)
第3層中間材料
アルミ圧延板・コイル
UACJ・神戸製鋼 価格改定継続
押出形材・アルミ鋳造品
建材・自動車向け 原価上昇
缶材(3004系薄板)
飲料缶メーカー コスト増
第4層部品・素子
自動車アルミ部品
ボディパネル・シリンダー 2〜3割高
建材サッシ・外装材
押出形材高騰 工務店直撃
飲料缶・食品容器
缶素材コスト上昇 秋値上げ布石
第5層組立品
EVボディ・バッテリーケース
BEV 200〜300kg/台 コスト増大
アルミサッシ窓・住宅設備
YKK AP・LIXIL 原価上昇
エアコン・家電筐体
パナソニック・ダイキン 収益圧迫
第6層最終製品
自動車(EV・HEV含む)
複合コストショック 転嫁交渉中
新築住宅
建材費5〜10%上昇 施工費増
缶飲料・エアコン
2026年秋冬の値上げに反映予定
第7層店頭・家計
家電量販店・缶飲料店頭
2026年秋冬値上げ 家計負担増
住宅着工費・新車価格
2026年後半に転嫁本格化
CPI(耐久財・食料品)
PPI非鉄金属 上昇 CPI波及継続
業界別アラート
湾岸精錬所(EGA・アルバ)
EGA: 3月28日攻撃 12ヶ月復旧 アルバ: フォースマジュール 30%稼働
停止・大幅減産
復旧 2027年Q1以降
最高警戒
アルミ圧延(UACJ・神戸製鋼)
NSP560円 対日プレミアム350ドル 7〜9月期600円超見込み
価格改定継続
7〜9月期NSP注目
監視
自動車(EV・ハイブリッド)
アルミ2〜3割高 トヨタ・ホンダ・日産 複合コストショック直撃
コスト直撃
2〜3ヶ月転嫁タイムラグ
警戒
建材・住宅設備
サッシ・外装材 建築資材「第二波」値上げ本格化 5月〜
値上げ第二波
5月〜継続中
監視
飲料缶・食品包装
缶素材高騰 秋の値上げ発表に向け交渉中
値上げ準備中
2026年秋冬反映予定
監視
アルミスクラップ・リサイクル
一次地金逼迫でスクラップ需要急増 2次合金地金代替需要拡大
活況・代替拡大
5月第4週時点
経過観察

結論サマリー

LMEアルミニウム(3ヶ月先物)は2026年5月第4週(19〜22日)、3,600〜3,660ドル台で推移し、4月16日に記録した約4年半ぶりの高値3,672ドルに近い水準を維持した。

マーキュリアのニック・スノウドン金属・鉱業リサーチ部長はFTコモディティ・グローバル・サミット(ローザンヌ)で「2000年以降のベースメタル市場で最大の単一供給ショックが起きている」「誰も予測できなかったブラックスワンだ」と断言した。

UAE・エミレーツ・グローバル・アルミニウム(EGA)の12ヶ月復旧宣言、バーレーン・アルミニウム(アルバ)のフォースマジュール、カタール・クワタラムの停止という湾岸3拠点の連鎖崩壊が、2026年の世界一次アルミ需給に最大200〜400万トンの欠損を生んでいる。

日本では2026年4〜6月期の国内アルミ地金指標価格(NSP)が過去最高の560円/kgを記録し、2026年7〜9月期には600円/kg超への更なる上昇が見込まれている。

自動車・建材・缶飲料・電機全産業にわたる価格転嫁の連鎖が始まっており、川下各社の原価管理は喫緊の課題となっている。

今週の動き

LMEアルミは5月第4週(19〜22日)、米イラン和平交渉への期待と失望を織り込みながら3,580〜3,660ドルのレンジで乱高下した。

月曜(19日)にトランプ大統領がイラン攻撃を一時停止して交渉を優先すると表明すると、アルミは週次で+1.3%の3,604.50ドルまで上昇する場面があった。

水曜(21日)のアルアラビーヤ誤報では急落するも、誤報否定後に3,620ドル台まで戻した。

5月18日時点のLMEアルミキャッシュオファーは3,637ドルと前週末比+0.05%と安定しており、週を通じて3,580〜3,660ドルの高値圏を維持した。

直近5日間の値動き

月曜(19日)は3,640〜3,660ドル台で推移した。

前週金曜のLME全体の指数が史上最高値を更新した流れを引き継いだが、EGA復旧が12ヶ月かかるという構造的なファクターが下値をしっかりと支えた。

火曜(20日)は3,620〜3,640ドル台でやや軟化した。

交渉期待で油価が下落する中、製錬所の電力コスト低下期待が一部で売り材料となった。

水曜(21日)はアルアラビーヤの誤報で3,590ドル台まで急落する場面があったが、EGA・アルバという物理的な設備損傷は外交交渉と無関係であることが再認識され、3,620ドル台に戻した。

木曜・金曜(21〜22日)はイラン最高指導者のウラン国外搬出禁止命令を受けて3,590〜3,620ドル台に小幅軟化して引けた。

今週の主要因

第1の要因は、EGA・アルバという湾岸2大拠点の物理的損傷の継続だ。

EGAのアルタウィーラ製錬所(年産160万トン、世界最大規模)は3月28日のドローン・ミサイル攻撃で「重大な損傷」を受け、フォースマジュールを宣言している。

完全復旧には最大12ヶ月を要するとEGA自身が公表しており、ホルムズ海峡再開とは独立した問題として市場に根付いている。

第2の要因は、LME在庫の急減だ。

2026年1月末に497,175トンあったLME指定倉庫の在庫は5月中旬時点で344,000トンに減少しており、約3ヶ月で30%の取り崩しという異常事態が続いている。

第3の要因は、中国の追加需要だ。

5月の中国の製造業PMIが拡大を示したことと、大型都市向けの特別債(インフラ投資に使われるアルミ多消費案件)の発行が旺盛なことが、需要側の下支えとなっている。

7層カスケード分析

アルミの7層カスケードは、原料(ボーキサイト→アルミナ→アルミ地金)という3段階の製錬プロセスが第1〜2層を占めるのが特徴であり、原油と異なりエネルギー集約型のコスト構造が価格形成を左右する。

第1層と第2層: 上流原料と一次加工材

第1層はボーキサイト鉱石と、その中間品であるアルミナ(LMEアルミナ価格は5月11日時点で307.15ドル/トンで安定)だ。

注目すべきはアルミ価格が急騰する中でアルミナ価格が安定していることで、これは価格上昇が原材料コスト上昇ではなく「供給ショックと需要引き込み」という純粋な需給要因によるものであることを示している。

精錬業者にとってはアルミナを安く買ってアルミを高く売れるマージン拡大局面だが、湾岸の主要精錬所が損傷・停止している現実がこの恩恵を享受できる企業を制限している。

一次加工材の第2層は精錬所から出荷される一次アルミ地金(99.7%純度のカソード、Pシェープ等)だ。

日本のNSP(ニュー・スタンダード・プライス)は4〜6月期に過去最高の560円/kg(前期比60円・約12%増)が確定した。

住友商事グローバルリサーチによれば、2026年4〜6月期の対日プレミアム交渉は紛争発生による提示額の撤回・引き上げを経て350ドル/トンで合意し、これは前期比80%高・11年ぶりの高水準だ。

2026年7〜9月期のNSPは600円/kg超に達する可能性が業界で広く指摘されている。

第3層: 中間材料

第3層は圧延板・押出形材・箔・鋳造品などの形状加工品だ。

日本のアルミ圧延大手UACJ(旧住友軽金属・旧古河スカイ統合)は、LME価格に連動した製品価格改定を四半期ごとに実施している。

LME価格とNSPの双方が記録的水準にある今局面では、UACJのアルミ板・圧延コイルの販売価格は2025年同期比で大幅に上昇しており、川下自動車・建材・缶向けの価格改定交渉が続いている。

神戸製鋼所のアルミ・銅事業部門は自動車向けアルミ合金板(6000系)の販売価格を引き上げており、国内自動車メーカーとの四半期ベースの価格改定を継続している。

第4層: 部品・素子

第4層では自動車ボディパネル・シリンダーヘッド・ホイール・押出形材部品・建築用サッシ・飲料缶が主役となる。

自動車向けでは、ホンダ・トヨタ・日産の車体アルミ板と、サスペンション・エンジン周辺の鋳造アルミ部品のコストが2〜3割上昇しているとの報道がある(日本経済新聞 5月12日)。

建材向けでは、窓・ドアサッシのアルミ押出形材のコスト上昇が工務店・ハウスメーカーを直撃している。

飲料缶向けの薄板アルミ(3004系)も高値が続いており、飲料メーカーが缶素材の調達コスト上昇に直面している。

第5層: 組立品・中間製品

第5層では自動車ボディ・エアコン筐体・アルミサッシ窓・航空機部材などが位置する。

軽量化ニーズからEVにはとりわけアルミ使用量が多く、BEV1台あたりの使用量は200〜300kg規模と言われる。

EV向けバッテリーケース・モーターハウジングの製造コスト上昇は、電池パックのシステム単価に影響し、EV普及コストに間接的に上乗せされる。

住宅向けアルミサッシ(YKK AP・LIXILグループ等)は原料高の影響を受けており、住宅設備機器全体のコスト上昇と合わさって新築住宅の施工費を押し上げている。

第6層: 最終製品への波及

自動車業界

日本経済新聞(5月12日)は「タイヤもエンジンも…自動車素材が軒並み高騰 アルミなど2〜3割高」と報じており、車両1台あたりの製造原価上昇が続いている。

アルミの高騰はEVシフトを加速させるほどコスト増大につながる逆説的な構造がある。

建材・住宅設備業界

2026年5月以降、断熱材・ルーフィング・塩ビ管などに続き、アルミサッシ・アルミ外装材のコストも上昇しており、建築資材の「第二波」として価格転嫁が本格化している。

飲料・食品包装業界

アルミ缶素材(3004系薄板)の価格上昇は飲料大手の包材コストを直撃しており、2026年秋の価格改定の布石として缶飲料の値上げが計画されている。

電機・家電業界

エアコン・冷蔵庫の筐体・熱交換フィン向けアルミ板のコスト上昇が続いており、パナソニックホールディングス・ダイキン工業の原価管理を難しくしている。

第7層: 店頭・家計・マクロへの波及

アルミの消費者への波及は多岐にわたるが、そのほとんどが他素材とのコスト上昇の重なりで発現する「複合型の値上げ」として家計に届く点が特徴だ。

新築住宅のアルミサッシ・外装材コスト上昇は、2026年春以降の新築着工コストを押し上げており、ハウスメーカーの建築費単価が2025年比で5〜10%上昇する要因の一つとなっている。

缶飲料の值上げは量販店・コンビニの棚前価格に秋以降反映される見込みで、CPI(消費者物価指数)の「食料」「日用品」セクションを通じて家計負担増につながる。

自動車の部品コスト転嫁は2〜3ヶ月のタイムラグをともなって新車価格に反映されるため、2026年後半の新車改定に含まれる見通しだ。

企業物価指数(PPI)の「非鉄金属・アルミ」セクションは現在大幅上昇中であり、川下産業への転嫁が時間差で続く。

今後の展望

アルミ市場の正常化は原油・銅より難しい。

ホルムズ再開があっても、EGAの設備修復には12ヶ月、アルバの再稼働には6〜9ヶ月かかるという物理的制約が残るからだ。

来週の注目ポイント

6月第1週はEGA・アルバの修復進捗に関する公式発表と、LME在庫の週次変動が最大の注目点だ。

344,000トン台に落ちたLME在庫がさらに減少すれば、週明けのアルミ相場に急騰圧力がかかる。

中国の5月PMI・製造業データも需要側の確認材料として注目される。

1ヶ月先の見通し

6月中は3,500〜3,700ドルのレンジが継続するというのが市場のベースケースだ。

ホルムズ部分再開のシグナルが出れば3,500ドルへの調整もあるが、EGA・アルバの物理的損傷が市場の下値をサポートし続ける。

日本のNSP(7〜9月期)は3月のLME急騰分(同期算定期間に含まれる)を反映して600円/kg超への上昇が濃厚だ。

3ヶ月先の構造的展望

マーキュリアが指摘した「2000年以降最大の供給ショック」という評価は、8月末時点でも訂正不要となる可能性が高い。

EGAの復旧タイムライン(12ヶ月)は2027年第1四半期までフル稼働が戻らないことを意味する。

JPモルガンが示す190万トン、ウッド・マッケンジーの悲観シナリオが示す400万トンという欠損規模のいずれが現実に近いかは、アルバの再稼働速度と代替生産(インドネシア・カナダ・インド)の拡大ペースが決める。

インドネシアは2026年後半に新規製錬所が一部稼働し始める予定があり、これが下半期の調整要因となりうる。

リスクシナリオ

シナリオ1(下振れ)は、アルバ・EGAへの追加攻撃だ。

稼働継続中の設備が再度攻撃を受けた場合、LMEアルミが4,000ドル超という未踏の領域へ急騰する可能性がある。

シナリオ2(想定内)は、EGAが段階的に復旧し6ヶ月で60%程度まで生産を回復する展開だ。

アルミは3,400〜3,700ドルのレンジを維持し、日本のNSPは600〜650円台で推移する。

シナリオ3(上振れ)は完全停戦と修復加速だ。

インドネシア新規供給と合わせれば、2026年末に3,000〜3,200ドルへの調整がありうる。

業界別の対応指針

調達担当者

アルミの調達コストは「LME価格+プレミアム+為替」という三重構造で決まる。

現在はLMEが4年半ぶりの高水準、対日プレミアムが11年ぶり高水準、円安が重なっており、三要素が同時に最悪の組み合わせとなっている。

NSP連動契約のレビュータイミング(次は7〜9月期)に向け、長期固定価格交渉が可能かどうかをサプライヤーと今すぐ協議すること。

アルミスクラップ(2次合金)の利用拡大は原料費の変動を抑制する有効な手段であり、社内品質基準の見直しを含めて優先的に検討すべき局面だ。

経営者

NSP560円・プレミアム350ドルという現水準は、2〜3四半期は続く可能性が高い。

川下製品の価格改定計画(2026年秋〜2027年春)に、アルミコスト上昇を適切に盛り込んでいるかどうかを今週中に確認すべきだ。

アルミ使用量の大きい製品ラインの「アルミ代替設計(樹脂化・スチール回帰)」の費用対効果分析も、将来の選択肢として正式な議題に載せるタイミングだ。

投資家

日本のアルミ関連株ではUACJ(5463)が、LMEアルミ価格とNSPの連動する国内最大手として直接受益する。

神戸製鋼所(5406)のアルミ・銅部門も高値恩恵があるが、鉄鋼本業とのコスト構造を見極める必要がある。

グローバルでは、欧州のノルスクハイドロ(HYDRO)やアルコア(AA)がアルミ高騰の最大受益者となっている。

よくある質問

Q1: LMEアルミはなぜ4年半ぶりの高値圏にあるのですか?

EGA(アブダビ、年産160万トン)・アルバ(バーレーン、同162万トン)・クワタラム(カタール、同60万トン)という湾岸3拠点のアルミ精錬所が停止・大幅減産に追い込まれているためだ。

これらが世界供給の約4〜5%にあたる最大350万トンの生産を失っており、マーキュリアは「2000年以降最大のブラックスワン供給ショック」と表現している。

Q2: EGAはいつ再稼働しますか?

EGAは「完全復旧には最大12ヶ月かかる」と自ら公表している。

これはホルムズ海峡の再開とは独立した問題で、溶融アルミのセルを一つずつ順次再起動する技術的プロセスに時間を要するためだ。

Q3: 日本のNSP560円とはどういう意味ですか?

NSP(ニュー・スタンダード・プライス)は日本国内で3ヶ月ごとに改定されるアルミ地金の価格指標だ。

2026年4〜6月期に過去最高の560円/kgが確定しており、これが国内自動車・建材・電機向けのアルミ製品価格の起点となる。

前期比60円の上昇は近年最大の改定幅で、川下産業への波及が進行中だ。

Q4: 中国はアルミ供給の代替になりますか?

中国は世界のアルミ生産の約60%を占めるが、自国消費が旺盛であり輸出余力は限られている。

中国政府は2024年から一次アルミの生産量上限(年間4,500万トン)を設けており、追加生産は容易ではない。

中国からの輸出規制が強まるリスクも存在するため、完全な代替にはなりにくい。

Q5: 自動車のアルミ代替(軽量化)はどうなりますか?

アルミが高騰すると軽量化によるEV航続距離向上とのトレードオフがより厳しくなる。

一部の自動車メーカーでは高強度スチール(AHSS)やCFRP(炭素繊維)への代替を検討しているが、量産コストの面でアルミの代替は短期的には難しい。

編集部解説:日本への波及

「ブラックスワン」という言葉は市場では濫用されがちだが、今回のアルミ供給ショックは真にその名に値する。

EGA・アルバという「工場」が物理的に破壊されたという事実は、ホルムズ海峡が再開しても解決しない問題として、今後12ヶ月間の市場に根深く影を落とす。

日本の主要業界への影響

日本のアルミ加工業界の最重要プレーヤーはUACJだ。

2013年に住友軽金属と古河スカイが経営統合して誕生した国内最大のアルミ圧延メーカーで、自動車向けボディシート・缶向け薄板・建材向け押出形材を手がける。

NSP560円というレベルは、UACJの製品価格を自動的に引き上げる一方で、急激な原料調達コスト増も伴う。

同社は四半期ごとの価格改定を通じて、LME+プレミアム+為替という三要素の変動を製品価格に転嫁するメカニズムを持っており、この転嫁速度と転嫁率が業績の鍵を握る。

神戸製鋼所のアルミ・銅事業は、自動車用アルミ合金板(6000系・7000系)で国内首位のシェアを持つ。

EV向けのバッテリーケース・ボディアルミ材の需要は長期的に増加する一方、原料コストの高騰が収益圧迫要因となっており、価格改定交渉とコスト管理の両立が問われている。

自動車業界では、日本経済新聞が5月12日に報じたようにアルミ素材が2〜3割高となっており、トヨタ・ホンダ・日産の完成車の製造原価を直撃している。

「タイヤもエンジンも」というフレーズが示すように、今回の素材高騰は単一素材ではなく、アルミ・銅・ゴム・樹脂が同時に高騰する複合コストショックとなっており、部品メーカーから自動車メーカーへの価格転嫁交渉が業界全体で難航している。

商社マン視点の先読みポイント

住友商事のアルミ担当部門の視点で今の局面を見ると、最大のテーマは「対日プレミアムの7〜9月期交渉」だ。

住友商事グローバルリサーチによれば、4〜6月期の対日プレミアム350ドルは前期比80%高で、これが7〜9月期にどの水準で合意するかが次の3ヶ月間のコスト構造を決める。

今、住友商事のアルミ担当者として取るべき最優先行動の第1は、EGAを始めとする中東以外の供給源(オーストラリアのアルコア・ポートランド、カナダのアルコン・アルミニウム等)との長期契約追加交渉だ。

EGA復旧まで12ヶ月という確定情報がある以上、その分の代替調達量を今すぐ押さえることが最重要な実務対応となる。

第2の行動は、インドネシアの新規製錬所(2026年後半稼働予定)の供給量確保だ。

年間30〜50万トン規模の新規供給が下半期に市場入りするタイミングを捉えて、スポット価格が高水準から一旦調整する前の長期契約締結を急ぐことが、7〜9月期以降のプレミアム削減につながる。

第3は、アルミスクラップ(2次合金地金)のトレーディング拡大だ。

一次アルミ地金の逼迫局面でスクラップの需要が急増しており、回収ルートの整備とスクラップ処理業者との独占提携は「希少な代替原料の確保」として競争優位になりうる。

「今、商社マンならどう動くか」を一言で言えば、「EGAが復旧する前の12ヶ月間」という明確な時間軸を意識し、中東以外の供給源からの長期固定量契約と、インドネシア新規供給の先取り確保という二段構えで動く局面だ。

相場が3,500ドルを下回るタイミングは6ヶ月以上先という前提で、それまでの高値期間を最大限に活かした物量確保と価格固定が最善手だ。

まとめ

LMEアルミの「ブラックスワン」は、マーキュリアが喝破したように、EGA・アルバという物理的インフラの破壊を起点としており、外交解決とは独立した回復タイムラインが市場を12ヶ月以上拘束する。

日本の対日プレミアム350ドル・NSP560円という現実は、川下産業全体に確実に波及する。

UACJを中心とする国内アルミ加工業界は、価格転嫁の速度と精度が収益を決める局面にある。

一方、自動車・建材・電機の最終製品メーカーはアルミコスト上昇の転嫁と原価削減の両立という二正面作戦を迫られており、設計変更・代替材料の採用といった中期的対応も視野に入ってくる。

7〜9月期NSPが600円台に達する見通しである以上、今から3ヶ月間は「アルミ高騰が続く前提での調達・販売計画の立案」が最優先事項だ。

EGAの復旧宣言を「完全復旧の起点」ではなく「長い正常化の始まり」として捉え、少なくとも2027年第1四半期まで高水準が継続するシナリオを計画の基準線に据えることが、今後の経営判断の誤りを最小化する。

出典

製造業サプライチェーン研究所

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