MENU

【2026年5月第3週】ガソリン・灯油 週次レポート

製造業サプライチェーン研究所

基板実装・EMSを起点に、電子部品調達、原材料市況、調達リスク、価格転嫁、製造コストまで。 製造業の調達・営業・経営判断に使える有料レポート、企業データ、Excelツールを販売。 ニュースを現場で使える判断材料に変換します。

▶製造業サプライチェーン研究所

THE SUPPLIER · 7層素材カスケード分析

ガソリン・灯油 週次レポート — 補助39.7円で169.4円維持、補助なし実勢210円超の乖離拡大

2026年5月第3週(5月11日〜16日)
第1層: 上流ショック(実データ)
レギュラーガソリン全国平均
169.4
円/L(5月11日・補助39.7円適用後)
補助なし実勢 約210〜213円/L
政府補助金(現行)
39.7
円/L(4月30日〜5月13日)
来週42〜43円に引上げ見込み
軽油全国平均
159.0
円/L(4月27日・暫定税率廃止済)
補助なしなら190円超が実態
補助財源(推計残高)
1兆800億
円(3月末時点。悲観シナリオ6月枯渇)
WTI再騰で消耗ペース加速
伝播経路 — 7層カスケード(原油から家計まで)
第1層上流原料
WTI原油・ブレント原油
103.5 / 108 USD/bbl|週間+8〜10%
中東産原油CIF(推計)
110ドル超/bbl|紛争前比+50%
第2層一次加工材
ガソリン留分(精製品)
ENEOS・出光・コスモが国内精製
灯油・軽油留分
暖房・物流・農業用途に供給
第3層中間材料
石油元売卸価格(仕切価格)
補助金が差し引かれた特約店向け価格
航空燃料(ジェット燃料)
補助15.8円/L適用中・JAL・ANA向け
第4層部品・素子
ガソリンスタンド(小売)
3万ヶ所が169.4円/Lで供給中
物流・農業用軽油調達
159.0円/L|燃料SAC転嫁交渉中
灯油配達(農業・家庭)
18L約1,600〜1,800円(5月推計)
第5層組立品
トラック輸送サービス
燃料費が総コストの30〜40%
施設園芸(ビニールハウス)
灯油・A重油の加温コストが上昇
第6層最終製品
マイカー・社用車
補助終了なら月2,000〜3,000円増
宅配・食品輸送
燃料SAC転嫁→食品価格に波及
農産物・航空旅客
灯油高→農産物コスト・SAC引上げ
第7層店頭・家計
ガソリン店頭(全国平均)
169.4円/L|補助なし実勢210円超
CPI・家計エネルギー支出
補助終了後の急騰リスクがCPIに潜在
物流費・食品小売価格
燃料SAC→食品価格に1〜3カ月ラグ
業界別アラート
政府補助金(財源管理)
WTI再騰で来週補助単価42〜43円/Lへ引上げ見込み。悲観シナリオで財源が6月初旬に枯渇
要警戒
来週公表予定
財源急消耗
ENEOSホールディングス(原料調達)
タンカー「エネオス・エンデバー」が5月14日にホルムズ通過。5月末〜6月初旬に日本着見込み
好材料
5月14日決算公表確認
通過成功
物流業界(ヤマト・日本通運等)
軽油補助39.7円/Lで159円台を維持。補助縮小後の燃料SAC転嫁を荷主と交渉中
注意
転嫁交渉継続中
転嫁交渉中
農業・施設園芸(灯油・A重油)
補助後で一時より落ち着くも、配達灯油は18Lで1,600〜1,800円推計。農産物コストに波及
注意
5月時点
生産コスト増
航空業界(JAL・ANA)
航空燃料補助15.8円/L(4月30日以降)で緩和中。WTI再騰で夏ダイヤ燃油SAC引上げ圧力
注意
夏ダイヤ向け
SAC引上げ圧力
家計(マイカー・光熱費)
補助なし実勢210円超。補助終了時に月2,000〜3,000円超のガソリン代増が家計を直撃
要警戒
補助終了後の潜在リスク
家計直撃リスク

結論サマリー

5月11日のレギュラーガソリン全国平均は169.4円/L、政府補助39.7円/Lが支える人工的な安定相場だ。

WTI原油が103ドル台に再上昇したことで、来週(5月14日適用分)の補助単価は42〜43円/L程度への引き上げが見込まれる。

補助なしの実勢価格は210〜213円/L水準にあり、政府財源1兆800億円の消耗ペースが加速する懸念が生じている。

軽油(159.0円/L、4月27日)は4月1日に暫定税率廃止済みで、物流・農業コストへの転嫁は補助の有無に左右される綱渡り状態だ。

調達担当者と物流管理者には、補助金縮小・終了リスクを織り込んだコスト計画の見直しが急務だ。

今週の動き

政府補助が「見かけ上の安定」を演出する一方で、補助なし実勢価格が210円を超える状況が続いており、補助の持続性が最大の論点となってきた。

5月11日に資源エネルギー庁が公表したレギュラーガソリン全国平均は169.4円/Lで、前々週比0.3円の下落だ。 3月16日に記録した史上最高値190.8円/Lからの低下は補助金の効果で、補助を除いた卸ベースの推計価格は210円を超えている。

直近5日間の値動き

5月11日(月)に169.4円/Lが公表され、政府目標の170円を若干下回る安定圏での着地が確認された。 翌12日以降、WTI原油が週間を通じて騰勢を強め、週末にかけて103.5ドルまで戻してきた。 この原油高は補助金の計算式を通じて翌週単価の引き上げ圧力となっており、5月14日以降適用の補助単価は42〜43円/L程度に上昇する見込みだ。 計算式は「今週の店頭価格169.4円+前々週の支給額39.7円+原油価格の変動分(推計3.5円以上)-基準価格170.0円」であり、WTI上昇幅次第で単価がさらに上がる構造になっている。 灯油・重油についても同様に39.7円/Lの補助が4月30日以降適用されており、週内の動向を見守る状況だ。

今週の主要因

第一の要因は、WTI原油の週間10%高だ。 ホルムズ海峡の和平交渉決裂を受けた原油急騰が補助単価の自動引き上げを招き、補助財源の消耗が加速する方向に働いている。

第二の要因は、補助金財源の持続性への懸念だ。 政府は3月24日に2025年度予備費約8,000億円を活用して財源を計1兆800億円規模に積み増したが、野村総合研究所の試算によれば、補助単価が50円/L前後で推移する悲観シナリオでは6月初旬に財源が尽きる可能性がある。 4月末〜5月の補助単価が39.7円/Lと相対的に落ち着いているため標準シナリオでは7月まで持つ計算だが、WTI再騰で再び不確実性が高まっている。

第三の要因は、ENEOSと出光のタンカー通過成功だ。 5月14日に日本経済新聞とブルームバーグが報じたENEOSの超大型タンカー「エネオス・エンデバー」のホルムズ通過により、5月末から6月初旬の国内ガソリン原料供給が一定程度確保される見通しとなった。 出光興産の先行通過分と合わせ、短期的な供給不安は若干緩和されたが、恒常的な通航には程遠い状況だ。

7層カスケード分析

ガソリン・灯油は「原油の精製物」として最も川下に近い石油製品であり、7層のうち第1〜第2層の動きが最も速くダイレクトに家計に届く素材だ。 政府補助という人工的な緩衝材が挟まっている点がこの素材の特異性で、補助の有無・水準が価格のすべてを決める局面となっている。

第1層と第2層: 上流原料と一次加工材

WTI原油(103.5ドル/バレル)とブレント原油(108ドル/バレル)が第1層の起点だ。 精製された一次加工材として国内製油所から供給されるのがガソリン・灯油・軽油の各留分で、ここが第2層にあたる。 ENEOSホールディングスの根岸製油所(神奈川)、出光興産の徳山製油所(山口)、コスモエネルギーホールディングスの四日市製油所(三重)などが精製拠点として機能している。 原油CIF単価は5月時点でバレルあたり110ドル超(推計)と、紛争前2月の70ドル台から約50%上昇しており、精製マージン(原油を加工してガソリン・灯油を製造するコスト利益)が圧迫されている状況だ。

第3層: 中間材料

第3層は実質的に石油元売の卸価格(仕切価格)にあたる。 ENEOSや出光興産が特約店(卸商)向けに提示する仕切価格は、毎月改定される「基準価格」に週次の補助金が差し引かれた形で決まる。 現在は政府補助が卸価格の引き下げ原資として石油元売に直接支給される仕組みで、この段階で消費者への価格転嫁が吸収されている。 軽油については4月1日に暫定税率(17.1円/L)が廃止済みで、卸価格は税廃止相当分が構造的に低下しているが、補助単価の縮小と相殺される形で実勢価格への反映は複雑になっている。

第4層: 部品・素子

ガソリン・灯油の第4層は「輸送用燃料・産業用燃料」として機能する段階だ。 ガソリンはエンジン車(ガソリン乗用車・二輪車)の直接燃料として、全国約3万ヶ所のガソリンスタンドで小売される。 軽油はトラック・バス・農業機械・建設機械の燃料として物流・農業・建設の各産業の動力源になる。 灯油は業務用暖房・農業用ハウス暖房・漁船燃料・一部の工業炉燃料として使用される。 春は灯油の暖房需要が落ち着くシーズンだが、農業用ビニールハウスの加温には年間を通じて使用されており、農産物の生産コストに直結している点で注意が必要だ。

第5層: 組立品・中間製品

トラック運送業では軽油コストが輸送費全体の30〜40%を占めるとされており、軽油価格の動向が荷主への燃料サーチャージに直結する。 4月27日時点の軽油全国平均は159.0円/Lで、補助なしなら190円超が実態となっている。 国土交通省は3月に物流業者に対し、燃料コスト上昇分を運賃に転嫁できる環境整備を要請しており、燃料サーチャージ制の周知・適用が業界内で加速している。 また農業用機械の燃料コスト増大が農産物の生産コストを押し上げており、JA(農業協同組合)を通じた補助金制度の拡充を求める声が農業団体から上がっている。

第6層: 最終製品への波及

自動車(マイカー・社用車)

169.4円/Lのガソリン価格は補助金が維持されている間の水準だ。 補助が縮小・終了した場合には210円超が現実の店頭価格となり、月間ガソリン代が一般家庭で2〜3割増加する。

物流・宅配

ヤマト運輸・日本郵便・佐川急便などの宅配大手は燃料サーチャージを設定しているが、補助金の恩恵が軽油コストを抑制している間は大幅転嫁を自制している状況だ。

農業・食品生産

ビニールハウス農家はプロパンガスと灯油・A重油を熱源に使うため、燃料高が直接の生産コスト増となる。 産地での農産物価格の上昇は、2〜3カ月のタイムラグを経てスーパー・コンビニの食品価格に波及していく。

航空

航空燃料(ジェット燃料)は原油由来の製品でガソリン・灯油と同じ精製プロセスから得られるが、補助金の対象外だ。 ただし航空燃料の補助は1Lあたり15.8円(4月30日以降)が設定されており、JAL・ANAの燃油サーチャージ抑制に一定程度貢献している。

漁業・農業用船舶

離島の漁業者や農業用水船ではA重油・灯油が主要燃料だが、補助39.7円/Lの恩恵を受けながらもコスト圧力は依然として高い。

第7層: 店頭・家計・マクロへの波及

レギュラーガソリン169.4円/Lは「政府が管理する価格水準」であり、補助金があるから成立している価格だ。 仮に補助が週次で段階縮小された場合、1週で5〜10円程度の価格上昇が段階的に家計に届く。 補助が終了した場合(実勢ベース210円超)、月間走行距離1,000kmの標準家庭では月額2,000〜3,000円超のガソリン代増となる。

灯油は補助後も1Lあたり100〜110円台(店頭)、配達価格は18Lポリタンクで1,600〜1,800円程度(5月推計)とみられ、3月16日の配達価格最高値2,951円/18Lからは大幅に落ち着いている。

CPI(消費者物価指数)へのエネルギー品目の寄与については、補助金が維持される間は統計上の押し上げが抑制されているが、補助縮小・終了後は急速なCPIへの上昇圧力が生じる仕組みになっている。 総務省が毎月公表するコアCPIは、補助金の効果が除かれた「補助なし仮想価格」と乖離が拡大しており、補助終了後の物価上昇がいかに大きなものになるかを示している。

今後の展望

WTI原油の再騰で補助単価が来週引き上げられることはほぼ確実だが、それが財源の加速消耗を招くというジレンマに政府は直面している。

来週の注目ポイント

資源エネルギー庁は毎週月曜日前後に前週の店頭価格と翌週の補助単価を公表する。 5月18日前後に公表される5月14〜20日適用の補助単価が42〜43円/L以上に引き上げられるかどうかが、今週最大のチェックポイントだ。 ENEOSタンカーが5月末から6月初旬に日本着予定であるため、国内製油所への原油供給が確保されるか否かも重要な供給面の確認項目だ。

1ヶ月先の見通し

ホルムズが段階的に通航回復する楽観シナリオでは、WTIが95〜100ドル程度に軟化し、補助単価が35〜40円/L程度に縮小しながら店頭価格を170円前後に維持できる見通しだ。 封鎖継続シナリオでは補助単価が40〜50円/L以上に膨らみ、財源の消耗ペースが加速する。 野村総合研究所の推計では補助単価が50円/L以上の悲観シナリオで6月2日に1兆800億円の財源が尽きる可能性があるとされており、6月中の追加財源確保が政策的な焦点になっている。

3ヶ月先の構造的展望

ガソリン補助金は「ガソリン・軽油の暫定税率の扱いについて結論が得られるまで」という条件付きで実施されており、明確な終了日が設定されていない。 暫定税率の廃止については国と地方で年間約1.5兆円の税収減が生じるため、代替財源の議論が必要だ。 補助金依存状態が長期化すれば、ガソリン価格の市場機能(消費量の適正化・EV化促進など)が損なわれるという政策矛盾も指摘されている。 秋以降の代替税制の方向性と補助段階縮小のスケジュールが、業界・家計双方にとって最大の不確定要素だ。

リスクシナリオ

シナリオ1(財源急枯渇): WTIが110ドル超に再上昇した場合、補助単価が50〜60円/Lに膨らみ財源が6月中に尽きる。政府は緊急補正予算を組む必要があり、国会審議の遅延があれば補助の一時的な停止・縮小リスクがある。 シナリオ2(急落後の補助縮小): ホルムズが全面開放されWTIが85ドル台まで急落した場合、補助単価が10〜20円程度に縮小され店頭価格は160〜170円前後で安定するが、補助終了後の「本来の市場価格」への戻りを控えた消費者心理が揺れる。 シナリオ3(現状維持・財源追加): WTIが95〜105ドルで推移し、政府が追加予備費で財源を補強しながら補助を続ける。この場合170円前後の安定が夏場まで続くが、財政悪化懸念が円安を招くという二次的リスクが生じる。

業界別の対応指針

調達担当者

補助単価の週次変動と「補助なし実勢価格」の乖離を毎週チェックし、補助縮小・終了シナリオ下での物流費・製造コストを今から試算しておくことが必須だ。 軽油多消費の物流企業は燃料サーチャージ制を今週中に取引先と再交渉し、原油高騰を転嫁できる契約基盤を整備しておく必要がある。 農業向けA重油・灯油については、農林水産省の燃料費高騰対策事業(施設園芸等)の申請期限を確認し、補助申請を優先すべきだ。

経営者

補助金が「なくなることを前提に動く」経営判断が今こそ求められる。 EV・HEV社用車への切り替え・省エネ物流ルートの最適化・非化石燃料電力調達の拡大は、ガソリン・軽油依存からの脱却戦略として中期計画に明示すべきタイミングだ。 補助縮小シナリオを最悪ケースに置いた上での価格転嫁余地を、今週中に顧客・取引先と協議することが競合に先んじる好機となる。

投資家

ENEOSホールディングス・出光興産・コスモエネルギーは精製マージンと備蓄放出対応の両面で注目銘柄だ。 ただし補助金が終了した場合の需要縮小リスクと、原油高の恩恵が精製マージンより調達コスト増として効く構造も考慮する必要がある。 物流株(ヤマトホールディングス・セイノーホールディングス等)は燃料サーチャージ転嫁の成否が短期業績に直結する。

よくある質問

Q1: 今週、ガソリン価格が169.4円/Lなのはなぜですか?

政府が3月19日から実施している緊急的激変緩和措置で、39.7円/Lの補助金が石油元売に支給されているためだ。 補助がなければ現在の実勢価格は210円超が見込まれる。

Q2: この安い価格はいつまで続きますか?

補助金は「ガソリン・軽油の暫定税率に関する結論が出るまで」継続される方針だが、財源1兆800億円は悲観シナリオで6月初旬に枯渇する可能性がある。 政府が追加財源を手当てするかどうかが焦点だ。

Q3: 自社の調達戦略にどう影響しますか?

軽油使用量の多い物流会社は、補助縮小後のコスト増を燃料サーチャージ制で今から転嫁できる契約体制を整備すべきだ。 ガソリン費用は補助終了時に月額で2,000〜3,000円規模の増加が一般家庭・法人ともに生じる。

Q4: 為替の影響はどのくらいですか?

ドル円158円台が維持されているため、原油ドル建て価格に加え円安分のコスト増が上乗せされている。 円安1円ごとに輸入原油コストは0.7〜0.9%上昇し、補助金の必要単価が増大する仕組みだ。

Q5: 消費者の店頭価格にはいつ反映されますか?

補助金は石油元売の卸段階に適用されるため、店頭への反映には1〜2週間のタイムラグがある。 原油が今週高騰した影響は来週以降の店頭価格(補助増額後の調整価格)に徐々に出てくる。

編集部解説:日本への波及

ガソリン・灯油の価格問題は「補助金という堤防の中でどれだけ水位が上がっているか」を意識しないと、本質的なリスクを見誤る。 補助なし実勢価格が210円超という事実は、補助が終わった瞬間に家計と産業が直面する現実だ。

日本の主要業界への影響

ENEOSホールディングスの宮田知秀社長は5月14日の決算説明会で、超大型タンカー「エネオス・エンデバー」のホルムズ通過を公表した。 5月末から6月初旬の日本着が見込まれており、当面の原料調達は「つなぎ」として機能する。 ただしこれはごく限られた事例であり、ホルムズが閉鎖されたままなら次のタンカー調達のメドは立っていないと同社は述べた。

出光興産は4月下旬に先行してタンカーがホルムズを通過しており、2社の動きで業界内に希望の光が灯ったことは確かだ。 ただしコスモエネルギーホールディングスなどほかの石油元売各社は代替ルート(サウジアラビアのヤンブー港・UAEのフジャイラ港)からの積み出し原油の到着待ちが続いており、日本全体の原料受給は「備蓄放出と代替調達の組み合わせで何とか回している」状況が続いている。

物流業界の影響は深刻だ。 ヤマト運輸・日本通運・佐川急便などは軽油コストが総コストの3〜4割を占める構造を持つ。 4月1日の軽油暫定税率廃止(17.1円/L減)と補助39.7円/Lの組み合わせで軽油を159円/L台に抑制しているが、補助縮小後は物流費の上昇が食品・家電・日用品の店頭価格に連鎖していく。

農業分野では施設園芸(ビニールハウス)の燃料費負担が深刻で、特に北海道・東北の春野菜産地では灯油・A重油のコスト増が農産物価格の上昇として消費者に届きつつある。

商社マン視点の先読みポイント

住友商事の視点からガソリン・灯油の問題を整理すると、石油元売との関係において「補助金の出口戦略」が最大のリスクシナリオだ。 住友商事はENEOS向けの石油製品トレードや非中東原油の代替調達仲介で動いており、足元の市況は商社の仲介マージンが乗りやすいスポット調達優位の環境だ。

「今、商社マンならどう動くか」という問いへの答えは次の3点に集約される。

第一に、WTIが103ドル台にある今週のうちに、6〜9月分の精製原料(ナフサ・原油)の価格固定ヘッジを追加することだ。 先物カーブがバックワーデーション(現在高い・将来安い)になっている局面では、先物売り(ショートヘッジ)よりもスプレッドをロックする戦略が有効で、ENEOS・出光・コスモ向けの契約オファーに組み込む余地がある。

第二に、代替ルート(ヤンブー・フジャイラ)からの中東産原油カーゴのアレンジメント費用(War Risk保険・追加海運コスト)を試算し直し、従来の「ホルムズ経由」コストと全包括で比較したコスト表を今週内に顧客に提供することだ。 この「コスト可視化サービス」自体が商社の付加価値になる。

第三に、補助金財源枯渇リスクに備えた「補助縮小・終了シナリオ下の価格転嫁シミュレーション」を、顧客の調達担当者・財務担当者向けに提供することだ。 「補助なし実勢価格210円超」を前提にした将来シナリオが整理されていない顧客は多く、このレポートを持ち込む商社担当者が信頼を獲得できる局面だ。

まとめ

ガソリン169.4円/Lは「補助金が作り出した安定価格」であり、補助なし実勢価格210円超との乖離が拡大するほど補助財源の消耗は速くなる。

WTI103ドル台への再上昇で来週の補助単価は42〜43円/L程度に引き上げられる見込みで、財源消耗ペースが加速する方向だ。 政府が追加財源を手当てするかどうかが、夏場のガソリン・灯油価格のシナリオを大きく左右する。

ENEOSと出光のタンカー通過成功は明るいニュースだが、ホルムズ封鎖が続く限り「綱渡りの安定供給」という構造は変わらず、次のショックへの脆弱性は残っている。

調達担当者・経営者ともに「補助金が終わった後」を前提にした燃料コスト計画を今週中に策定することが、事業継続の観点から最も優先度の高いアクションだ。

出典

製造業サプライチェーン研究所

基板実装・EMSを起点に、電子部品調達、原材料市況、調達リスク、価格転嫁、製造コストまで。 製造業の調達・営業・経営判断に使える有料レポート、企業データ、Excelツールを販売。 ニュースを現場で使える判断材料に変換します。

▶製造業サプライチェーン研究所

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次