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天然ゴム(OSE/SICOM)|SBR220〜240セント急騰が天然ゴム代替需要を生む構造と横浜ゴム6月値上げ
結論サマリー
シンガポール商品取引所(SICOM)のTSR20先物は5月第4週、215〜220セント/kgのレンジで推移した。
世界最大の天然ゴム統合企業スリ・トラン・アグロ・インダストリー(STA)のCEOヴィーラシット・シンチャリーンクル氏は5月15日の決算発表で、「過去1週間のSICOMのTSR20価格は215〜220セント/kgのレンジで推移している」と発言しており、前四半期平均(191.5セント)からさらに上昇が進んでいることを確認した。
天然ゴム相場の今週最大の支援材料は、ナフサ供給逼迫を背景とした合成ゴム(SBR)の急騰だ。
SBRは220〜240セント/kgに達しており、原油由来の合成ゴムのコストが上昇するほど、タイヤメーカーが天然ゴムへの調達シフトを強める構図が定着している。
天然ゴムの主要生産地であるタイ・インドネシアは2〜5月のタッピングオフシーズン終盤にあり、6月以降の収穫再開を前にした需給の引き締まりがさらなる価格支援となっている。
横浜ゴムは2026年6月1日から国内市販用乗用車・バン用夏タイヤのメーカー出荷価格を平均5%引き上げると4月2日に発表した。
ミシュランも同年6月と9月にタイヤを3〜5%値上げする計画で、日本のタイヤ市場に値上げの波が押し寄せている。
今週の動き
OSE(大阪取引所)のRSS3先物は5月第4週(19〜22日)、SICOMとほぼ連動する形で横ばいからやや堅調な推移となった。
円建て価格は為替(150〜155円/ドル台)の動向と連動するため、SICOMのドル建て価格の安定とあわせて約330〜345円/kgレンジでの推移となった推計だ。
ANRPC(天然ゴム生産国協会)は「2026年の世界需要は6年連続で生産量を上回る」と発表しており、構造的な需要超過が相場の下値を支えている。
直近5日間の値動き
月曜(19日)は米イラン交渉への楽観ムードで油価が下落し、合成ゴムの競争力回復期待から天然ゴムは上値が抑えられ215〜216セント台で推移した。
火曜(20日)は産地タイからの入荷量が依然として少ないとの現物業者の報告を受け、218セント台に小幅上昇した。
水曜(21日)はアルアラビーヤ誤報騒動で市場全体が混乱し、ゴム相場にも波及したが影響は一時的で215〜218セント台で終えた。
木曜(22日)はタッピングオフシーズン終盤にあるタイ産の入荷量が継続して少なく、SBRの高値継続も確認されて219〜220セント台に強含んだ。
金曜(22日)は週末を前にした利食い売りと、6〜9月の本格的な収穫シーズン到来による供給増への警戒から215〜218セント台で引けた。
今週の主要因
第1の要因は、中東危機によるナフサ高とSBR急騰だ。
ナフサはブタジエン(SBRの主原料)の原料であり、ホルムズ海峡封鎖でナフサが逼迫するとブタジエン生産が制約される。
その結果、SBR価格が220〜240セント/kgに急騰し、コスト比較で天然ゴムへの需要シフトが発生している。
第2の要因は、タッピングオフシーズンによる季節的な供給制約だ。
タイ・インドネシア・マレーシアでは通常、2〜5月に樹木が葉を落とす「ウインタリング」期にタッピング(採取)が制限され、生産量が大幅に低下する。
5月は季節的な需給引き締まりのピーク付近にあり、今週の価格高止まりの構造的支援となっている。
第3の要因は、ANRPCの需要見通しだ。
ANRPC(天然ゴム生産国協会)が「2026年の世界需要が生産量を6年連続で上回る」と発表しており、タイヤ・自動車産業向けの構造的な需要増が中長期的な価格の床を形成している。
7層カスケード分析
天然ゴムの7層カスケードは「タイ・インドネシアの農園から日本の道路まで」という長い供給連鎖が特徴だ。
最大の消費用途がタイヤ(全消費の70〜75%)であるため、自動車産業の動向が最も重要なファクターとなる。
第1層と第2層: 上流原料と一次加工材
第1層は東南アジアの天然ゴム農園で採取されるラテックス(生乳液)だ。
パラゴムノキから採取されるラテックスは主にタイ・インドネシア・マレーシアに9割以上が集中するという生産地の偏在構造がある。
タイは世界シェアの35〜38%を占める最大産地であり、2026年2〜5月のウインタリング期の供給制約が今週の価格を支えている主因の一つだ。
第2層の一次加工材はRSS(リブドスモークドシート)とTSR(テクニカリースペシファイドラバー)という2つの品種だ。
OSEではRSS3が基準価格指標として機能し、SICOMではTSR20が主要ベンチマークとなる。
5月第4週のSICOM TSR20は215〜220セント/kg(5月15日頃のSTA社CEO発言)という高水準で、2026年1〜3月期の平均191.5セントから約14〜15%上昇している。
前年比(2025年同期は約150セント前後)では約44〜45%高の水準を維持している。
OSEのRSS3は日本の輸入業者が参照する指標として機能しており、為替の影響を受けながら円建てで300〜350円/kgレンジで推移していると推計される。
第3層: 中間材料
第3層は天然ゴムをブレンドしたゴムコンパウンドだ。
ここではSBR(スチレン・ブタジエン・ラバー)やBR(ブタジエンラバー)といった合成ゴムと天然ゴムを配合した複合素材が製造される。
合成ゴムの原料はブタジエン(ナフサ分解ガスから製造)であり、ナフサ高騰がブタジエン生産を制約し、SBRが220〜240セント/kgという天然ゴムと同等水準に急騰している。
この状況が天然ゴムへの「代替需要」を生んでいる構図で、通常は価格が高い天然ゴムが合成ゴムより割安に見える歴史的に珍しい局面だ。
合成ゴムは次の記事(SBR等)で詳しく取り上げるため、本記事では第3層を天然ゴムのコンパウンド化工程として扱う。
日本のゴム配合メーカーはタイ・インドネシア産のTSRを輸入し、国内で各種配合剤(カーボンブラック・加硫剤等)を添加してコンパウンドを製造する。
このコンパウンドがタイヤメーカー・ゴム製品メーカーに供給される。
第4層: 部品・素子
第4層では各種ゴム成形品・タイヤ半製品(トレッド・サイドウォール・ベルト層等)が製造される。
タイヤ1本の製造に使われる天然ゴムは乗用車用で約3〜4kg、トラック用で約20〜30kgに及ぶ。
タイヤメーカーのブリヂストン・住友ゴム工業(ダンロップブランド)・横浜ゴムは、天然ゴムと合成ゴムの配合比率を相場に応じて調整するが、今回はSBRの高騰により天然ゴムの比率を高める方向に動いている。
工業用ゴム製品(シール・ホース・ベルト・免震ゴム)の製造でも同様に、天然ゴムのコスト上昇が各種ゴム部品のコスト構造を直撃している。
医療用手袋(ラテックスグローブ)向けの天然ゴムラテックスは、マレーシア・タイの生産メーカーからの供給が続いているが、コスト上昇が医療材料費の増加につながっている。
第5層: 組立品・中間製品
第5層では完成タイヤと各種ゴム製組立品が位置する。
横浜ゴムが4月2日に発表した6月1日からの市販タイヤ平均5%値上げは、この第5〜6層の価格転嫁の典型的な動きだ。
コスト転嫁の理由として「物流費・人件費・エネルギー費の高水準継続」を挙げており、原料ゴムのコスト増だけでなく、製造・物流コスト全体の上昇が複合している。
ミシュランも6月と9月に乗用車・二輪・トラック用タイヤを3〜5%引き上げる計画であり、業界全体での価格改定の動きは今後も続く見通しだ。
自動車部品向けの防振ゴム・オイルシール・ブーツ類は、自動車メーカーへの供給価格交渉が進行中で、部品メーカーの収益を圧迫している。
第6層: 最終製品への波及
タイヤ(市販・自動車メーカー納入)
横浜ゴムの6月値上げとミシュランの追随で、2026年春夏の国内市販タイヤ価格は軒並み引き上げられる。
自動車メーカー向け(新車装着タイヤ)の価格改定は市販品より時間がかかるが、2〜3期連続のコスト上昇を受けて改定交渉が進行中だ。
自動車(EV・HEV・内燃機関)
タイヤは車両原価の中では比較的小さい要素だが、EV・HEVではタイヤのコスト比率が相対的に高くなる傾向がある。
天然ゴム高騰はタイヤを通じて完成車の維持コストに波及する。
医療・衛生用品
天然ゴムラテックスを使う医療用手袋・カテーテル・コンドーム等の価格が上昇しており、医療機関の消耗品調達コストを押し上げている。
建設・インフラ
免震積層ゴム・建設用ゴム製品のコストが上昇しており、大型建築・橋梁工事の資材費に影響が出始めている。
第7層: 店頭・家計・マクロへの波及
天然ゴムの家計への最も直接的な波及経路はタイヤ交換コストだ。
横浜ゴムの6月値上げ(平均5%)とミシュランの追随は、2026年夏以降のカーディーラー・タイヤ専門店での交換費用として消費者に届く。
車検や定期整備でのタイヤ交換費用が上昇することで、自動車保有コストが増加し、個人消費を間接的に圧迫する。
バス・トラックのタイヤコスト上昇は輸送コストに転嫁されるため、物流費全体の上昇を通じて食品・日用品の価格にも間接的に影響する。
CPI(消費者物価指数)の「交通・通信」費目や「諸雑費」を通じて、タイヤ価格の上昇がじわりと反映される構造だ。
今後の展望
6月から収穫シーズンに入ることで需給の引き締まりは緩和されるが、SBRの高値継続と構造的な需要超過が価格の下値を支える。
来週の注目ポイント
6月第1週は収穫シーズンの本格的な開始を背景に、タイ・インドネシアの現地産地からの出荷量がどの程度回復するかが焦点だ。
米イラン交渉の動向がナフサ・ブタジエン価格に影響し、SBR価格の変動を通じて天然ゴムへの代替需要にも波及する点に注意が必要だ。
中国の自動車生産・販売データも需要サイドの確認材料として重要だ。
1ヶ月先の見通し
6月に収穫シーズンが始まると、タイ・インドネシアからの出荷量が増加し、供給側の引き締まりは緩和される方向となる。
ただし、SBR高値継続(ナフサ逼迫が続く限り)と需要超過構造(ANRPC予測)がある限り、200〜220セントというレンジが当面の床となりそうだ。
6〜9月の収穫期を通じてSICOMが190〜210セント台に調整する余地があるが、SBR高騰が続く場合は天然ゴム価格が下がりにくい逆説的な構造が続く。
3ヶ月先の構造的展望
天然ゴムの長期的な需給構造は生産地の偏在(タイ・インドネシアで世界の60%以上)と樹木の新植から初収穫まで7年を要するという独自の制約がある。
ANRPCが指摘する「6年連続の需要超過」は、生産地の老木化(特にタイの農園は2025〜2030年に大規模な老木更新期を迎える)という構造的問題を反映している。
ブリヂストンはグアユール(北米原産低木)から天然ゴムを採取する代替原料の研究開発を進めており、2026年のベンチ設備稼働・2030年の社会実装・2034年の事業化を計画している。
これは長期的な調達先多様化への布石だが、当面は東南アジア産への依存が続く構造だ。
リスクシナリオ
シナリオ1(下振れ)は、ホルムズ海峡の完全再開によるナフサ価格の急落だ。
SBRのコストが下がれば合成ゴムへの回帰が起き、天然ゴムへの代替需要が消滅し、SICOMが170〜180セント台まで急落する可能性がある。
シナリオ2(想定内)は、収穫期の供給増とSBR高値継続が綱引きを演じる展開だ。
SICOMは190〜220セントのレンジを維持し、タイヤメーカーの値上げが段階的に進む。
シナリオ3(上振れ)は、タイ・インドネシアでの異常気象(洪水・干ばつ)による収穫量の大幅減少だ。
SICOMが240〜250セントを突破し、タイヤの追加値上げが年内もう1ラウンド発生する可能性がある。
業界別の対応指針
調達担当者
天然ゴムは農産品特有の季節性(2〜5月の供給減→6〜9月の供給増)と原油連動性(合成ゴム代替需要)を組み合わせた独自の価格形成をする素材だ。
6〜9月の収穫シーズンに向けてスポット調達の好機が到来する可能性があり、産地での現物在庫状況と気象データを週次でモニタリングしながら調達タイミングを判断することが重要だ。
SBRと天然ゴムの調達比率をコスト最適化の観点から定期的に見直し、SBRが割高な今の局面では天然ゴム比率を高める方向への切り替えを具体的に検討すべきだ。
経営者
タイヤメーカー(横浜ゴム・ブリヂストン・住友ゴム)から調達するタイヤのコストが2026年6月以降に上昇することが確定している。
車両保有コスト・物流コストへの影響を予算計画に織り込んでおくことが実務上の急務だ。
ブリヂストンのグアユール研究に代表されるように、原料調達先の多様化(代替素材・代替産地の開発)は10年以上かかる取り組みであり、中期経営計画の中に明確な位置づけを設けることが求められる。
投資家
天然ゴム関連の国内株では住友ゴム工業・横浜ゴム・ブリヂストンが直接受益株となる。
値上げによるコスト転嫁が進む局面では収益の改善が期待できるが、SBRとの競合関係と中国の自動車需要の動向が業績の大きな変数となる。
タイ株(STAなど産地企業)は生産量回復とSICOM価格の両方に感応し、6〜9月の収穫シーズン入りが重要なカタリストとなりうる。
よくある質問
Q1: 今週、天然ゴムはなぜ215〜220セント台で高止まりしているのですか?
ナフサ逼迫によるSBR(合成ゴム)の急騰(220〜240セント)が天然ゴムへの代替需要を生み、同時に主要産地のタイ・インドネシアがウインタリング期の末期にあり季節的な供給制約が続いているためだ。
ANRPCによる「6年連続の需要超過」という構造的背景も価格の下値を支えている。
Q2: 6月から収穫シーズンが始まると価格は下がりますか?
需給の引き締まりは緩和される方向だが、SBRが高値を維持する限り天然ゴムへの代替需要が残り、大幅な価格下落は起きにくい見通しだ。
190〜210セント台への調整はありうるが、170〜180セント台への急落は現時点で考えにくい。
Q3: 横浜ゴムの値上げはなぜ今なのですか?
物流費・人件費・エネルギー費という複合コスト上昇が積み上がっており、自社努力での吸収が困難になったと判断したためだ。
天然ゴム・合成ゴムの両方が高水準にある今、業界全体で転嫁のタイミングが重なっており、ミシュランも追随している。
Q4: 合成ゴム(SBR)と天然ゴムはどう違うのですか?
天然ゴムはパラゴムノキのラテックスから製造し、弾性・引き裂き強度に優れる。
合成ゴム(SBR等)は石油由来の原料から化学合成し、均質で安定した供給が可能だ。
タイヤは通常、両者を最適な比率でブレンドして製造するが、現在はSBRが天然ゴムと同程度の価格水準まで上昇しており、タイヤメーカーの配合戦略に影響を与えている。
Q5: タイヤの値上げは消費者にはいつ届きますか?
横浜ゴムの6月1日メーカー出荷価格の引き上げは、ディーラー・タイヤ専門店の店頭への反映に1〜2ヶ月かかるため、消費者が実感するのは早くて2026年7月頃からとなる。
ミシュランの9月の追加値上げは秋の交換シーズンに重なり、2026年秋のタイヤ需要期に向けて価格上昇圧力が続く。
編集部解説:日本への波及
天然ゴムは「農産品であり商品先物であり、石油化学製品の鏡」という三重の性格を持つ素材だ。
中東危機でナフサが高騰し、合成ゴム(SBR)が急騰すると、石油系でない天然ゴムに需要がシフトするという逆説的な連動性が今まさに起きており、日本の産業界はタイヤから医療用手袋まで幅広い分野でそのコストを負担している。
日本の主要業界への影響
横浜ゴムの6月値上げは、日本のタイヤ業界全体の方向性を示す先行事例だ。
同社が発表した「乗用車・バン用夏タイヤの平均5%値上げ(6月1日出荷分から)」は、物流費・人件費・エネルギー費という複合コスト上昇への対応であり、天然ゴム・合成ゴムの高値継続がその前提にある。
ミシュランの追随(6月・9月に3〜5%)も含めると、国内の市販タイヤ市場では2026年内に計5〜10%規模のコスト転嫁が段階的に進む見通しだ。
ブリヂストンは世界最大のタイヤメーカーとして、天然ゴム調達先の多様化という中長期テーマに正面から向き合っている。
グアユール(北米産)からのゴム採取研究は2026年のベンチ設備稼働を経て2030年の社会実装を目指す計画が進行中だ。
この研究は単なるR&Dではなく、東南アジア産への9割以上依存という調達リスクを分散するための戦略投資だ。
今回の中東危機が示した「ナフサ→ブタジエン→SBR→天然ゴム代替需要」という連鎖は、ブリヂストンの取り組みが持つ戦略的価値をあらためて証明した格好だ。
住友ゴム工業も国内外での生産コスト上昇に直面しており、タイヤ・ゴム工業用品の価格改定を継続的に検討している。
医療・衛生分野では、天然ゴムラテックスを使う医療用手袋の調達コスト上昇が病院・クリニックの消耗品予算を圧迫しており、国内医療機関の材料費管理に影響が出始めている。
商社マン視点の先読みポイント
丸紅はタイ・インドネシアに天然ゴムのトレーディング・バリューチェーン事業を持つ総合商社として、今の局面を独自の視点で見ている。
最大の実務課題は「SBR高値が続く間の天然ゴム代替需要の取り込み」と「収穫シーズン入り後の価格調整リスクのヘッジ」のバランスだ。
今、丸紅の天然ゴム担当者として取るべき第1の行動は、6月以降の収穫シーズン初期の産地在庫を先買いしておくことだ。
ウインタリング期末のタイト供給から収穫期の供給増へのタイミングの変わり目で価格が一時的に下落する「産地出回り期の押し目」を先物で確保する戦術が有効だ。
第2は、SBR価格の動向を週次で追いながら天然ゴムとの価格差(スプレッド)を監視することだ。
SBRが220セントを超えている現状は天然ゴムへの代替需要が発生しやすい環境であり、このスプレッドが縮小(SBRが下がる、または天然ゴムが上がる)するタイミングを先行指標として使うことができる。
第3は、タイヤメーカー(横浜ゴム・ブリヂストン・住友ゴム)との長期供給契約の交渉だ。
各社が値上げを実施しているこの局面は、複数年の数量保証を条件に価格上限を設定するキャップ付き長期契約の交渉ができるタイミングでもある。
「今、商社マンならどう動くか」を一言で言えば、「収穫シーズン初期の産地出回り押し目を先物で確保しながら、SBR価格動向をシグナルとして天然ゴムの代替需要の持続性を判断する局面」だ。
ナフサ高・SBR高は中東危機が解決すれば逆転するリスクがある点を常に意識し、ポジションのヘッジを怠らないことが実務上の最重要事項だ。
まとめ
天然ゴムの215〜220セント高水準は、ナフサ逼迫→SBR急騰→天然ゴム代替需要という中東危機由来の連鎖と、タッピングオフシーズンという季節的要因が重なったものだ。
この二つの要因のうち、季節的要因は6月の収穫シーズン入りで緩和されるが、ナフサ高・SBR高がホルムズ問題と連動して続く限り、需給の引き締まり感が維持される。
横浜ゴムの6月値上げとミシュランの追随は、日本のタイヤ市場における価格転嫁の本格化を示している。
ブリヂストンのグアユール研究に代表されるように、調達先多様化という10年単位の課題に早期に着手した企業とそうでない企業の間で、次の危機での対応力の差が生まれている。
ANRPCが示す「6年連続の需要超過」という構造的事実は、短期的な相場変動とは別次元で天然ゴムの価格水準を高く維持し続ける基盤となっている。
調達担当者は収穫シーズン入りという価格調整の窓を見逃さず、合成ゴムとのコスト比較を常に更新しながら最適なブレンド調達戦略を追求することが求められる。
出典
- Bangkok Post「In Q1/2026, STA posted THB 645m profit as rubber and gloves recovered amid better market prices」
- Finansia Syrus「STA Eyes 1.6 Million Tons of Rubber Sales in 2026 amid Positive Price Outlook」
- TradingEconomics「Rubber Futures Up to Near 1-Month High(2026/3/26)」
- 日本経済新聞「横浜ゴム、6月1日より国内市販用タイヤのメーカー出荷価格を引き上げ」
- レスポンス「横浜ゴム、国内市販タイヤを平均5%値上げ…6月から乗用車・バン用が対象」
- BSRweb「中東情勢の緊迫化に伴う2026年のタイヤ値上げ」
- 大阪取引所(OSE)「商品先物価格情報」


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