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【2026年5月第4週】スズ(LME) 週次レポート|史上最高値5.4万ドルから調整も4万ドル台後半を維持、AI・半導体需要と供給赤字が構造的に下支え

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THE SUPPLIER · 7層素材カスケード分析

スズ(LME)|史上最高値後の調整も4万ドル台後半、AI・半導体が「見えない需要の床」を形成

2026年5月第4週(5月25日〜30日)
第1〜2層: 上流ショック・スズ地金(実データ)
LME3か月先物(5月第4週)
4万後半
ドル/t(推定)
1月高値5.4万ドル超から調整・前年比+40%超維持
LME3か月先物(1月22日)
51,050
ドル/t(史上最高値)
日中高値54,000ドル超・月間+26.1%・LME名目最高値
LME在庫(5月下旬)
7,000超
トン
2年ぶり高水準・バックワーデーション解消傾向
需給見通し(2026年)
供給赤字
2021年以来初(Coface予測)
供給+3%・需要+3.5%・精製増産が需要増に追いつかず
伝播経路 — 7層カスケード(鉱石から家計まで)
第1層上流原料
スズ鉱石(インドネシア)
世界最大輸出国・年次許認可遅延が恒常的リスク
スズ鉱石(ミャンマー)
Man Maw鉱山・制御された再開継続中・安定化に数年
第2層一次加工材
精製スズ地金(LME)
4万ドル台後半・中国雲南錫業が世界最大生産者
SHFE錫先物(中国内市場)
LMEと連動・アービトラージが中国輸出入を左右
第3層中間材料
はんだ合金(SAC305等)
千住金属工業・日本アルミット等が定期価格改定
低銀・銀レスはんだ
スズ高騰でSAC105・SC系へのグレードシフトが進行
スズめっき・ブリキ
食缶・缶詰等に使用・コスト増が食品包装に波及
第4層部品・素子
PCB・半導体パッケージ
BGA・QFP等の接合・GPUカード・AI基板に大量使用
太陽光パネル用リボン
セル間接続用スズコート銅リボン・再エネ拡大で需要増
EV・BMS基板
電動化比率上昇でEV1台あたりのスズ使用量が増加
第5層組立品
AIサーバー・マザーボード
データセンター建設ラッシュで高品質はんだ需要が急増
スマートフォン・家電基板
グローバルで年数億台規模のはんだ消費を形成
EVインバーター・電源モジュール
パワー半導体・BMS等の実装でスズコスト比率上昇
第6層最終製品
AI・クラウドサービス
データセンターのサーバー製造コストにスズが組込
EV(トヨタ・日産・ホンダ)
EV化比率上昇でスズ使用量モニタリングが重要化
太陽光発電設備
パネル接続用スズ消費が再エネ拡大と連動して増加
第7層店頭・家計
電子機器・スマートフォン価格
1台あたりのはんだコスト増は小さいが累積では無視できず
食品缶詰・保存容器
ブリキ缶コスト増が食品包装に波及(間接的)
AIサービス利用料・CPI
インフラコスト増がクラウド・AI利用料に間接的に波及
業界別アラート
はんだメーカー(千住金属工業・日本アルミット)
スズ原料コスト高騰で定期改定頻度増・低銀グレードへのシフト支援が急務
注視
継続中
定期改定中
電子部品(村田製作所・TDK・ニデック)
実装工程のはんだコスト増が製品利幅を圧迫・設計最適化が課題
注視
継続中
コスト転嫁検討
自動車(トヨタ・ホンダ・日産)
EV化でスズ消費増・仕入れ担当のスズ動向モニタリング重要化
注視
中長期
EV需要増
AIサーバー製造(国内EMS各社)
データセンター建設急増でAIサーバー向けはんだ需要が大幅増
注視
継続中
需要急増中
太陽光パネル(再エネ関連)
セル接続用スズ消費が再エネ設備導入拡大で構造的に増加
注視
中長期
構造的需要増
調達・商社(双日等)
インドネシア・ミャンマーのオフテイク契約交渉が差別化の鍵
注視
中長期
戦略調達急務

結論サマリー

LMEスズ3か月先物は2026年1月22日に史上最高値5万1,500ドル/t(日中高値5万4,000ドル超)を記録した後、調整局面が続いている。

5月第4週は4万ドル台後半での推移が続いており、Fastmarketsのデータでは3月のピーク5万8,860ドルから下落しているが、依然として前年同期比40%超の高水準を維持している。

Cofaceの分析では2026年の精製スズ生産は3%増にとどまる一方、需要は3.5%増と見込まれ、2021年以来初の供給赤字に陥る可能性が高いと指摘されている。

スズ需要の50%を占めるはんだが、AI・半導体・EVという3大成長分野と直結しており、Coface・国際スズ協会(ITA)・Sucden Financialなど複数の機関が構造的な強気材料を認めている。

日本では千住金属工業・日本アルミットなどのはんだメーカーが原料コスト上昇に対応しており、国産はんだ製品の値上げが電子部品製造コストに波及している。

今週の動き

スズ市場の今週の特徴は、AI・半導体需要への期待と実需オフシーズンの調整が拮抗する展開だ。

1月に史上最高値を更新した後、スズ価格は高原地帯での推移が続いており、Fastmarketsが記録した3月のピーク(5万8,860ドル、2025年末比45.4%上昇)からは低下しているが、LME在庫は7,000トン超の2年ぶり高水準にある。

LME在庫の増加はバックワーデーション(期近高・期先安)の解消を示しており、短期的な需給逼迫感はピーク時より和らいでいる。

一方で、EBC Financial Groupの分析によれば、スズはAIインフラ投資の「最も見えにくい恩恵金属」として、データセンター建設の継続がサーバー・ネットワーク機器のはんだ需要を下支えし続けている。

世界の半導体売上高は2025年に前年比25.6%増を記録し、2026年も同規模の成長が予測されており(SIA)、はんだ需要の底堅さは中期的に維持される見通しだ。

直近5日間の値動き

週初はAIデータセンターへの設備投資継続が報じられ、スズの需要期待から底堅く推移した。

中盤はリスクオフの流れでベースメタル全般が下押しされる場面もあったが、インドネシアの輸出割当の不透明感が下値を支えた。

週末にかけては米・イラン停戦合意期待によるリスクオフがコモディティ全体を若干押し下げたが、スズの供給赤字という構造的要因は変わらず、急落には至らなかった。

5月27日のMetal Radarのデータでは5月渡し先物の価格が公開されており、4万ドル台後半の水準圏での推移が続いていることが確認できる。

今週の主要因

第一の主要因は、インドネシアとミャンマーの供給制約の継続だ。

インドネシアは世界最大のスズ輸出国だが、年次操業許可証の認可遅延が引き続き生産・輸出の不透明要因となっている。

ミャンマーのMan Maw鉱山(Wa州)は制御された再開が続いているが、輸出の安定化には至っておらず、ITA(国際スズ協会)が定期的に再開見通しを発信している状況だ。

中国のスズ製錬所は精鉱不足から生産を抑制しており、世界全体の精製スズ供給の増産余地が限られる。

第二の主要因はAI・半導体需要の構造的な拡大だ。

はんだは世界のスズ需要の約50%を占め、半導体パッケージング・プリント基板(PCB)・サーバー組み立て・データセンターの電源モジュールすべてに不可欠だ。

AIハイパースケーラーが購入するのはGPUだけではなく、サーバー・ストレージ・ネットワーク機器・電源モジュールのすべてに大量のはんだ接合が使われており、スズは「最も目立たないAI金属」と評されている。

第三の主要因は投機資金の流出・流入の継続だ。

1月のLME史上最高値前後でシタデルなど有力ヘッジファンドがスズポジションを積み上げたと報じられており、LME在庫が7,000トン超と2年ぶり高水準にある現状はやや投機的な過熱感の調整を示している。

7層カスケード分析

スズは「はんだの主原料」という性質から、原料採掘(第1層)から消費者が購入する電子機器(第6〜7層)まで、デジタル化・電動化のすべての産業を横断する連鎖を持つ。

今回の7層分析では、スズの第1層(鉱石・地金)から始まり、はんだを経由して電子機器・EV・太陽光パネルまで到達する経路を可視化する。

第1層と第2層: 上流原料と一次加工材

第1層はスズ鉱石(インドネシア・ミャンマー・コンゴ民主共和国産)、第2層は精製スズ地金(LMEに上場されているグレードA精錬スズ)だ。

世界の精製スズ生産の約50%を中国が担っており、中国の精製所がコンゴ・ミャンマー産の精鉱不足から生産を抑制している点が、供給制約の核心をなす。

インドネシアは世界最大の輸出国として2026年も主要役割を担うが、許認可の不透明感が恒常的な需給リスクとなっている。

LME3か月先物の52週レンジは3月の5万8,860ドルから下方に調整中だが、2025年末比でも40%超高い水準を維持しており、年初の劇的な急騰が需要側の構造変化を反映したものであることを示す。

中国のスズ精製専門企業の代表格である雲南錫業(Yunnan Tin)は世界最大の精製錫生産者であり、同社の生産動向が国際スポット価格に大きな影響を与える。

第3層: 中間材料

スズ地金から生産されるはんだ合金が第3層の中核だ。

現在の業界標準鉛フリーはんだはSAC305(Sn96.5%・Ag3%・Cu0.5%)であり、JEITAが2000年に業界標準として推奨した規格だ。

スズが高騰するにつれ、銀の添加量を抑えた「低銀はんだ(SAC105)」や「銀レスはんだ(SC(スズ+銅のみ)系)」へのシフトが電子機器業界で進んでいる。

Fastmarketsの分析では「需要家が手元在庫を最小化する手口買い戦略(hand-to-mouth)」が定着しており、価格弾力性が低いはんだ需要がスズの価格高騰を受けても量的に急縮小しにくい構造を示している。

中国のSHFE(上海先物取引所)でもスズ先物は活発に取引されており、LMEとSHFEの価格差(アービトラージ)が中国国内の精製スズの輸出入動向を左右する重要な変数だ。

第4層: 部品・素子

はんだを使用する電子部品・素子が第4層に相当する。

プリント基板(PCB)のはんだ付け工程、半導体パッケージング(BGA・QFP等)、LEDの接合、コンデンサ・抵抗器の実装すべてにスズ系はんだが使われる。

AI・データセンター向けのGPUカード・電源モジュール・高性能PCBは、高精度・大量のはんだ接合を必要とするため、単位面積あたりのスズ使用量が増加している。

太陽光パネル(PV)では、セル間接続に使われるはんだコート銅リボン(solder-coated ribbon)が重要な用途であり、再生可能エネルギーの設備導入拡大がスズ需要を着実に押し上げている。

EV(電気自動車)のバッテリーマネジメントシステム(BMS)やパワー半導体には大量の接合部があり、1台のEVは従来のガソリン車よりも多くの電子回路を持つことから、EV普及がスズ需要を増加させる。

第5層: 組立品・中間製品

はんだ実装された電子基板・モジュールが第5層に相当する。

AIサーバーのマザーボード・GPUカード、スマートフォンのメイン基板、EVのインバーター基板・BMS基板はいずれも高密度のはんだ実装を経て完成する組立品だ。

この段階でのコスト増は、サーバーメーカー・スマートフォンメーカー・EV部品メーカーに転嫁されるが、はんだはBOMコスト(部品表全体)の中では比率が小さいため、製品価格への転嫁よりも「歩留まり向上」「実装工程の効率化」で吸収しようとする傾向がある。

第6層: 最終製品への波及

AI・データセンター関連

NVIDIA・AMD・Intel等のGPU・CPUを搭載したAIサーバーには大量の高品質はんだが使われており、1基の大型AIサーバーラックには数十kg規模のスズが使われると推計されている。

スズ高騰はサーバー製造コストに上乗せされるが、AIインフラへの巨額投資が続く間はこのコスト増が設備投資需要を抑制するほどの影響にはなりにくい。

スマートフォン・家電

スマートフォン・タブレット・ゲーム機のメイン基板の実装工程でスズはんだは必須だ。

スズ高騰は1台あたりの部品コストに微小な影響を与えるが、グローバルで数億台の市場規模があるため、総量では無視できないスズ消費を形成している。

EV・自動車

EV1台当たりのスズ消費量は従来のガソリン車比で増加傾向にある。

パワー半導体・BMS・車載通信モジュールのはんだ接合が増えるためだ。

国内ではトヨタ自動車・日産・ホンダが電動化比率を高める中で、EV製造コストの中にスズコストが徐々に存在感を増している。

太陽光パネル

世界的な再生可能エネルギー導入拡大に伴い、太陽光パネルのセル接続用スズ消費が着実に増加している。

日本国内でも再エネ賦課金を財源とした設備拡大が継続しており、パネルメーカーへのスズコスト影響は中長期的に無視できない。

第7層: 店頭・家計・マクロへの波及

スズは電子機器の製造コストに影響する素材であり、消費者の家計への直接的な影響はガソリンや食品ほど可視的ではない。

しかし、スマートフォンの機種変更コスト・家電製品の購入費・太陽光パネルの設置費用という形で、スズコストは最終的に家計の支出に組み込まれる。

AIインフラへの投資拡大がクラウドサービス・AI利用料のコスト構造に影響し、スズ価格の上昇がデジタルサービスのコストに織り込まれる経路も存在する。

2025年の世界半導体売上高は前年比25.6%増と過去最高に達し、SIAは2026年もほぼ同規模の成長を予測している。

この半導体成長はスズ需要の「量的な土台」を確実に厚くしており、Cofaceが予測する「2021年以来初の供給赤字」は今年中に現実となる可能性が高い。

今後の展望

スズ市場の中長期的な方向性は、AI・EV・再エネという三つの需要増加トレンドと、ミャンマー・インドネシア・コンゴの供給制約が交錯する構図だ。

来週の注目ポイント

インドネシアの2026年スズ輸出割当の最新動向と、Man Maw鉱山(ミャンマー)の出荷状況に関するITAの情報発表が最大の注目点だ。

LMEとSHFEの在庫変動も重要で、在庫が継続的に増加すれば需給緩和シグナルとなり価格の頭を抑える一方、在庫が再び減少に転じれば強気相場が再燃する可能性がある。

AIインフラ関連企業の設備投資計画発表(決算シーズン継続中)も、はんだ需要見通しに影響する材料だ。

1ヶ月先の見通し

スズの実需オフシーズン(春〜初夏)が終わると、夏場の半導体・電子機器製造の繁忙期に向けた先取り調達が始まる。

Coface・Sucden Financialはそろって2026年上半期の平均価格を4万5,000ドル前後と見込んでおり、現在の4万ドル台後半はその水準と概ね整合している。

6月以降に需要期入りすれば再び5万ドルを試す展開も排除できない一方、LME在庫7,000トン超という現状は短期的な暴騰を抑制する緩衝材になりうる。

3ヶ月先の構造的展望

国際スズ協会(ITA)は2030年までにスズ需要が40%増加するとの長期見通しを示しており、現在の供給サイドの3%増では到底追いつかない構造だ。

Cofaceが「2026年は2021年以来初の供給赤字」と予測する一方で、ミャンマーのMan Maw鉱山が段階的に正常化すれば2〜3年後に供給は回復に向かう見通しもある。

ただしCRUは「新規鉱山プロジェクトのパイプラインが薄く、既存鉱床の枯渇がサプライチェーン全体の長期的な脆弱性だ」と指摘しており、3か月先も供給不安の構造は根本的には変わらない。

リスクシナリオ

強気シナリオは、ミャンマー・インドネシアの供給が長期化し同時にAI設備投資が加速する場合で、5万5,000ドル超の高値圏への再アタックもあり得る。

弱気シナリオは、インドネシアが積極的な許可証発行で輸出を急増させ、LME在庫が急速に積み上がる展開で、4万ドル割れもあり得る。

中立シナリオは、4万〜5万ドルのレンジで需給が均衡しながら推移するケースで、現在最も蓋然性が高い。

業界別の対応指針

調達担当者

スズの価格は週次での大幅変動があるため、月次または週次での市場確認が必須だ。

千住金属工業・日本アルミット等のはんだメーカーは原料コストを毎月定期改定するケースが多く、その改定スケジュールに合わせた先行購買の検討が有効だ。

SAC305から低銀はんだ(SAC105)へのグレードダウンは、スズコスト削減(銀コストとのバランス次第)よりも、使用用途・品質要求との整合性確認が先決だ。

LMEスズの先物や店頭オプションによるヘッジは、規模の大きな電子機器メーカーには有効な選択肢だが、流動性がWTI・銅などに比べて低い点に注意が必要だ。

経営者

AIデータセンター・EV・太陽光という3大成長市場がスズ需要の「床(フロア)」を引き上げている以上、スズ高は一時的な価格スパイクではなく、構造的な高値圏への移行として長期計画に織り込む必要がある。

はんだ使用量の削減(実装設計の最適化・接合部の統合)という製品設計面でのアプローチも、スズコスト圧縮の中長期的な手段として開発部門と連携して検討したい。

投資家

スズは非鉄金属の中でも時価総額の小さいニッチ市場であり、流動性リスクが銅・アルミに比べて高い。

ただしITA・Coface・EBC Financial Groupが指摘する通り、AIインフラ投資の継続とEV普及という二つの構造トレンドは中長期の強気材料であり、スズ採掘企業(インドネシア・ミャンマー)や精製企業(中国雲南錫業等)の株式・鉱山開発プロジェクトは注目に値する。

よくある質問

Q1: スズは今なぜ高いのですか?

「供給赤字(インドネシア・ミャンマーの制約)」と「AI・半導体由来のはんだ需要急増」が重なっているためだ。

特に2026年は精製スズの供給増(3%)が需要増(3.5%)に追いつかず、2021年以来初の供給赤字に転落する見通しだ。

Q2: はんだメーカーの製品価格はどのくらい上がっていますか?

スズが2025年から2026年にかけて年率40〜70%超の上昇を記録したことを受け、千住金属工業などのはんだメーカーは定期的(多くは月次)に改定を行っている。

低銀・銀レスへのシフトが進む中でも、スズそのもののコスト増が製品価格に転嫁されている。

Q3: AI需要はスズにどう影響しますか?

AIサーバー1台には大量のはんだ接合(プロセッサ・メモリ・ネットワークカード・電源モジュール等)が使われる。

ハイパースケーラーのデータセンター投資が急増しており、1棟のデータセンター建設が使用するスズ量は相当な規模に達する。

半導体売上高は2025年に前年比25.6%増と過去最高を記録しており、スズ需要の「見えない後押し」として機能している。

Q4: ミャンマー・インドネシアの供給はいつ正常化しますか?

ミャンマーのMan Maw鉱山は「制御された再開」が続いており、数年単位での段階的な正常化が見込まれている。

インドネシアの許認可問題は当局が対応を進めているが、恒常的なリスク要因として市場に認識されている。

少なくとも1〜2年は「制約下での供給」が続くと見るべきだろう。

Q5: 消費者の家電・スマートフォン価格への影響はありますか?

スズははんだという形で電子機器製造コストの一部を占めるが、1台あたりの金額換算では数十〜数百円程度と小さい。

大量生産品では目立たないが、AI・EVという高付加価値・高コスト製品でははんだコストの増加がBOM全体に積み上がるため、無視できない要因となっている。

編集部解説:日本への波及

スズは「目立たない重要素材」の代表格だ。

消費者がスマートフォンを購入する際に「スズコスト」を意識することはないが、その基板の数千か所に及ぶはんだ接合のすべてにスズが使われている。

この「見えないスズ」が今、歴史的な高値圏に突入していることの意味を、日本の製造業は改めて認識する必要がある。

日本の主要業界への影響

千住金属工業は世界有数のはんだメーカーであり、SAC305をはじめとする鉛フリーはんだで国内外に強い地位を持つ。

スズの原料コスト上昇に対応するため、同社は毎年8月(及び必要に応じて追加改定)に定期価格改定を行っており、顧客である電子機器メーカー・EMS(電子機器受託製造)各社に改定を通知してきた。

スズ価格が4万ドル台後半という高水準に定着すると、従来の四半期ごとの改定ではなく月次での見直しを余儀なくされる局面が来るとの声も業界内で聞かれる。

電子部品製造業では、村田製作所・TDK・日本電産(現ニデック)のような大手部品メーカーも、実装工程でのはんだ使用コストを内部管理しており、スズ高騰は製品の利幅を圧迫する要因として認識されている。

自動車業界では、トヨタ自動車・ホンダが進めるEV化に伴う電子回路の増加がスズ消費の増大につながっており、仕入れ担当部門でのスズ動向モニタリングが従来に比べて重要度を増している。

商社マン視点の先読みポイント

双日は非鉄金属トレーディングの分野で一定のプレゼンスを持ち、スズの国際取引にも関与している。

今、商社マンならどう動くか。

スズはLMEの非鉄金属の中でも流動性が低く、先物ポジションの急変が価格に大きく影響しやすいという特殊性がある。

短期的には、LME3か月先物が4万〜4万5,000ドルのレンジに収まっている今の局面は、現物実需の電子機器メーカーへの販売に際してリスクプレミアムを乗せた条件設定ができる機会でもある。

中期的な戦略としては、インドネシアおよびミャンマーの現地精製業者との長期供給契約(オフテイク契約)を今のうちに交渉・締結することが、構造的な供給赤字局面で差別化の源泉となる。

ITAが「2030年までに需要40%増」と予測する長期見通しを踏まえれば、スズは「AI時代の戦略金属」として位置づけ直し、製造業クライアントへの調達コンサルティング機能を強化することが、商社の付加価値向上につながる。

また、低銀はんだや銀レスはんだへのシフトを支援するソリューション(代替合金の提案・品質評価サポート)を電子機器メーカーに提供することで、スズコスト削減とビジネスの深化を両立させる商社の役割が大きくなっている。

まとめ

LMEスズは史上最高値5万4,000ドル超から調整中だが、4万ドル台後半という水準は供給赤字という構造的な裏付けに支えられている。

AI・半導体・EV・太陽光という4つの需要成長エンジンと、インドネシア・ミャンマー・コンゴの供給制約が交わるスズ市場は、今後数年にわたって高原状態を維持する可能性が高い。

Cofaceの「2026年初の供給赤字」予測は、単なる価格動向の話ではなく、電子産業のサプライチェーン管理において「スズ調達」を新たな戦略的課題として認識するよう求めるものだ。

千住金属工業などはんだメーカーとの価格改定サイクルを理解した上で、先行購買・代替グレード検討・LMEヘッジという三つの選択肢を組み合わせることが、スズコスト上昇への現実的な対応策だ。

「見えないAI金属」としてのスズの戦略的重要性が、今後もメーカー・商社・投資家にとって欠かせない視点となる。

出典

製造業サプライチェーン研究所

基板実装・EMSを起点に、電子部品調達、原材料市況、調達リスク、価格転嫁、製造コストまで。 製造業の調達・営業・経営判断に使える有料レポート、企業データ、Excelツールを販売。 ニュースを現場で使える判断材料に変換します。

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