空冷から液冷へ移ると「不要になる部品」「増える部品」は何か|AIサーバーの冷却BOMを分解

AIサーバーの高性能化によって、データセンターの冷却方式が変わり始めています。

従来は、サーバー内部に大量の空気を流し、CPUやGPUから発生した熱を外へ逃がす空冷が中心でした。

ところが、高発熱のGPUを高密度で搭載するAIサーバーでは、空気だけで熱を運び出すことが難しくなり、GPUやCPUへ液体を直接近づけるDirect-to-Chip方式などの液冷が重要になっています。

ASHRAEも、高密度環境では空冷の実用上の制約が強まり、Direct-to-Chipを含む液冷が重要になっていると整理しています。ASHRAE

では、空冷から液冷へ変わると、

「それまで使われていた部品は不要になるのでしょうか」

そして、

「代わりに何の部品が増えるのでしょうか」

製造業にとって重要なのはここです。

結論から言えば、液冷化とは、

「ファンがなくなってCDUが増える」

という単純な置き換えではありません。

熱を運ぶ仕組みそのものが、

空気

から、

液体

へ移ります。

その結果、冷却システムのBOMも、

ファン
大型ヒートシンク
エアダクト

を中心とした構成から、

コールドプレート
ホース
QD
マニフォールド
CDU
ポンプ
熱交換器
フィルター
センサー
シール
冷却液

を含む構成へ変わります。

Open Compute ProjectのCold Plate Sub-Projectでも、Direct Liquid Coolingを構成する範囲として、コールドプレートだけではなく、チューブ、マニフォールド、QD、CDUなどがまとめて扱われています。Open Compute Project

製造業から見ると、これは冷却方式の変更であると同時に、

部品市場の入れ替え

でもあります。

目次

空冷から液冷になると、部品はどう変わるのか

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最初に全体像を整理します。

空冷からDirect-to-Chip液冷へ移行した場合、おおまかには次のように変わります。

分類空冷から液冷への変化
CPU・GPU用大型ヒートシンク縮小・コールドプレートへ置換
サーバーファン数・負荷が減る可能性。ただし残る
ヒートパイプ液冷対象部品では縮小しやすい
ベイパーチャンバー液冷対象部品では役割が変化
エアダクト・シュラウド一部簡素化
TIM残る
コールドプレート増える
CDU新たに必要
マニフォールド増える
ホース・チューブ増える
QD・継手増える
ポンプ増える
熱交換器増える
バルブ増える
フィルター増える
シール・Oリング増える
温度センサー増える
流量センサー増える
圧力センサー増える
漏液検知新たに重要になる
冷却液新たに必要
水質・液管理新たに重要になる

ここで注意したいのが、

「液冷=空冷部品がすべてなくなる」

ではないことです。

むしろ現在のDirect-to-Chip方式では、

空冷+液冷

のハイブリッド構成が重要です。

ASHRAEも、完全な液冷となりやすいのは全浸漬方式などであり、Direct-to-Chipでは一般に空冷と液冷が併存するとしています。

液冷される部品が増えるほどファン需要は低下しますが、必ずしもゼロにはなりません。ASHRAEハンドブックオンライン

ここを理解しておかないと、

「ファン市場が全部なくなる」

「ヒートシンクメーカーは終わる」

といった極端な読み方をしてしまいます。

実際には、部品ごとに影響が違います。

まず空冷と液冷では「熱の運び方」が違う

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部品の変化を理解するには、熱がどこを通るのかを見ると分かりやすくなります。

空冷の熱経路

一般的な空冷では、概念的には、

GPU・CPU

↓

TIM

↓

ヒートスプレッダー・ヒートシンク

↓

空気

↓

サーバーファン

↓

ラック

↓

データセンター室内

↓

CRAH・CRACなどの空調設備

↓

施設側冷却設備

という流れで熱を移動させます。

つまり、大量の熱を、

「空気を動かす」

ことで運びます。

このため重要になるのが、

ヒートシンクのフィン面積
ファンの風量
静圧
エアフロー
吸排気経路
ラック配置
ホットアイル・コールドアイル

です。

発熱量が増えるほど、さらに大量の空気を狭いサーバー内部へ流す必要があります。

ASHRAEも、空冷サーバーではファンなどによる強制対流とヒートシンク設計の組み合わせが重要であり、ラック密度を高めるほど送風に必要な電力も問題になると説明しています。ASHRAE

Direct-to-Chip液冷の熱経路

Direct-to-Chip液冷では熱の経路が変わります。

GPU・CPU

↓

TIM

↓

コールドプレート

↓

冷却液

↓

ホース

↓

マニフォールド

↓

CDU

↓

熱交換器

↓

施設側冷却水

↓

チラー・ドライクーラーなど

という構造になります。

コールドプレート内部には冷却液を通す流路があります。

GPUやCPUで発生した熱を直接液体へ渡し、その液体を循環させてラック外へ運びます。

ASHRAEではコールドプレートを、プロセッサーから液体へ熱を移す熱交換器として整理しています。ASHRAE

この違いが非常に重要です。

空冷では、

熱を空気に渡す部品

が中心でした。

液冷では、

熱を液体に渡す部品
液体を運ぶ部品
液体を分配する部品
液体を循環させる部品
液体の状態を監視する部品
液体を漏らさない部品

が必要になります。

つまり、液冷化によって市場の中心が、

空力設計

から、

流体設計

へ広がっていきます。

液冷化で需要が減りやすい部品

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「不要になる」という言葉には注意が必要です。

すべてのサーバーで完全に消える部品はそれほど多くありません。

ただし、液冷対象となるGPUやCPU周辺では役割が小さくなる部品があります。

CPU・GPU用大型ヒートシンク

最も分かりやすいのが大型ヒートシンクです。

空冷では、

CPU・GPU

↓

TIM

↓

大型金属ヒートシンク

↓

空気

という経路で熱を移します。

Direct-to-Chip方式では、この部分が、

CPU・GPU

↓

TIM

↓

コールドプレート

↓

冷却液

へ変わります。

そのため液冷対象となったCPUやGPUについては、従来型の大型フィンヒートシンク需要が縮小する可能性があります。

ただし、

ヒートシンクという技術そのものが不要になるわけではありません。

メモリ、VRM、SSD、NIC、電源回路など、液冷されない部品では引き続き空冷が必要になるためです。

高性能サーバーファン

次に影響を受けやすいのがサーバーファンです。

空冷サーバーでは、高密度のヒートシンクへ大量の空気を押し込むため、高静圧ファンが重要です。

GPUやCPUから発生する大きな熱を液体側へ逃がせるようになると、サーバー内部を流す必要がある空気量を減らせる可能性があります。

そのため、

ファン台数
ファン回転数
ファン電力
大型ファンモジュール

などが縮小する方向に働きます。

ただし、ファンが完全にゼロになるとは限りません。

ここは後ほど詳しく説明します。

一部のヒートパイプ・ベイパーチャンバー

空冷システムでは、CPUやGPUの熱をヒートシンクへ広げるため、

ヒートパイプ
ベイパーチャンバー

が使用されることがあります。

しかし熱源へ直接コールドプレートを取り付ける構成では、熱を遠くまで運んで大型フィンへ放熱する必要性が小さくなります。

そのため液冷対象となる熱源では、従来のヒートパイプやベイパーチャンバーの役割が縮小するケースがあります。

一方で、液冷対象外の部品や別の機器では引き続き使用されます。

したがって、

「市場そのものがなくなる」

ではなく、

「使用される場所が変わる」

と考える方が現実的です。

大量の空気を動かすための空調能力

サーバー内部だけではありません。

GPUなどから発生する熱の大部分を液体で直接施設側へ運べるようになれば、データセンター室内へ放出される熱を減らすことができます。

その結果、

CRAH
CRAC
ファンウォール
エアハンドリング設備
大量送風設備

への要求も変わります。

ただし、ここもゼロになるとは限りません。

液冷サーバーが既存の空冷サーバーと混在する施設もあります。

またDirect-to-Chip方式ではサーバー内部の一部が空冷のまま残るためです。

つまり施設側も、

空冷から液冷へ全面置換

というより、

空冷設備の比率を減らしながら液冷設備を追加する

移行期間が生まれます。

液冷になってもなくならない部品

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液冷市場を考える際には、

「残る部品」

を見ることも重要です。

ファンは完全には消えない

実際のAIサーバーでも、液冷と空冷を組み合わせた構成があります。

NVIDIAのGB200 NVL系リファレンス構成では、Grace CPU、Blackwell GPU、ConnectX、NVLink Switch ASICなどを液冷する一方、それ以外の部品は空冷するハイブリッド構成が説明されています。NVIDIA Docs

これは液冷市場を見るうえで非常に重要な事例です。

液冷になれば、

CPU
GPU

だけを見るのではなく、

メモリ
VRM
SSD
電源
各種IC
光モジュール
基板

などの冷却も考えなければなりません。

このため、

サーバーファンは減る可能性があるが、完全になくなるとは限らない

という理解が適切です。

TIMも残る

液冷と聞くと、

「液体が直接チップを冷やすならTIMも不要なのではないか」

と思うかもしれません。

Direct-to-Chip方式ではそうではありません。

チップの熱をコールドプレートへ効率よく移すためには、

チップ

↓

TIM

↓

コールドプレート

という熱経路が必要です。

したがって、

グリース
熱伝導シート
PCM
その他TIM

などは引き続き重要です。

むしろ高発熱化するほど、接触熱抵抗を抑えることが重要になります。

液冷市場は、

「水回りの市場」

だけではありません。

半導体とコールドプレートの間にある材料市場も含まれます。

空冷部品も場所を変えて残る

もう一つ重要なのが、

既存技術の転用

です。

ファン
ヒートシンク
ヒートパイプ
TIM

などは、液冷化によってすべて消えるわけではありません。

液冷対象にならない部品へ使用場所が移る可能性があります。

さらに液冷システムそのものでも、液体から空気へ熱を捨てるLiquid-to-Air型CDUではファンや熱交換コイルが使用されます。

Vertivも、液冷CDUについてLiquid-to-LiquidだけでなくLiquid-to-Air方式を展開しています。ヴァーティブ

つまり、

「液冷=ファン不要」

ではありません。

サーバー内部からファンが減っても、

別の場所でファンが使われる可能性があります。

冷却市場を見る場合は、

部品の消滅

ではなく、

部品が熱経路のどこへ移ったのか

を見る必要があります。

液冷化で新しく増える部品

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ここからが製造業にとって重要な部分です。

液冷化によって新しい流体回路が追加されるため、空冷では目立たなかった部品が大量に必要になります。

Open Compute Projectでも、Direct Liquid Coolingの標準化対象はコールドプレートだけではなく、チューブ、マニフォールド、QD、CDUまで広がっています。Open Compute Project

コールドプレート

最も分かりやすい部品です。

GPUやCPUへ密着させ、内部へ冷却液を流します。

要求されるのは単純な金属板ではありません。

重要になるのは、

熱伝導
流路形状
流量
圧力損失
平面度
接合
耐圧
気密性
腐食
清浄度
材料適合性

などです。

ここから、

銅材料
アルミ材料
精密切削
流路加工
ろう付け
拡散接合
FSW
表面処理
洗浄
リーク試験
耐圧試験

などへ需要が波及します。

液冷市場は装置メーカーだけの市場ではありません。

加工会社にも入口があります。

CDU

CDUはCoolant Distribution Unitです。

サーバー側の液冷回路と施設側の冷却設備をつなぐ中核装置です。

例えばLiquid-to-Liquid型では、熱交換器によってサーバー側の液体と施設側冷却水を直接混ぜることなく熱だけを移動させます。

VertivはCDUについて、二次側ループの温度、圧力、流量などを管理し、ポンプやフィルターなどを備える構成を説明しています。ヴァーティブ

CDUを分解すると、

熱交換器
ポンプ
モーター
インバーター
バルブ
配管
フィルター
センサー
制御基板
電源
筐体
継手
シール

などが入ります。

CDU市場が伸びるということは、

CDUメーカーだけを見るのではなく、

その中へ部品を供給する会社まで見る必要がある

ということです。

マニフォールド

液冷では、CDUから送られてきた冷却液を各サーバーへ分配する必要があります。

その役割を担うのがマニフォールドです。

Open Compute Projectのコールドプレート要件でも、ラックマニフォールドはCDUからIT機器へ冷却液を分配し、必要な流量と均一な流れを確保する重要部品として扱われています。Open Compute Project

マニフォールドでは、

流量均一性
圧力損失
分岐設計
耐圧
腐食
接続性
メンテナンス性

などが重要です。

サーバー台数が増えるほど分岐点も増えます。

ここは単純な配管ではなく、

「液体を均等に配る部品」

として見る必要があります。

ホース・チューブ

空冷サーバーでは主要部品としてあまり意識されなかったホースやチューブが、液冷では熱輸送経路になります。

求められるのは、

柔軟性
耐圧
耐熱
難燃性
低透過性
長期耐久性
曲げ性能
冷却液との材料適合性

などです。

OCP Marketplaceでも、Direct-to-Chip用途を想定したPTFEホースなどが扱われています。Open Compute Project

ここには、

ゴム
フッ素樹脂
エラストマー
編組材
押出成形
ホースアセンブリ

など、多くの製造技術が関係します。

QD・継手

液冷市場で特に注目したいのがQD、Quick Disconnectです。

サーバーをラックから取り外すたびに液体配管を工具で分解していては、保守性が大きく低下します。

そのため、

素早く着脱できる
外したとき液体が漏れにくい
圧力損失が小さい
繰り返し着脱できる

ことが重要になります。

OCPではUQDと呼ばれるUniversal Quick Disconnectの仕様も整備され、異なるベンダー間での相互運用性、低漏れ、保守性などが重視されています。Open Compute Project

QDを分解すれば、

金属加工
バルブ機構
スプリング
Oリング
シール材
表面処理
精密組立

などへ需要が広がります。

大きなCDUだけを見るより、このような小型部品まで分解した方が、日本の中小製造業には営業機会を見つけやすい場合があります。

ポンプ

液体を循環させる以上、ポンプが必要になります。

さらにデータセンターは停止が許容されにくいため、ポンプには冗長性が求められることがあります。

実際にVertivの液冷CDUでも冗長ポンプ、フィルター、監視機能などが採用されています。ヴァーティブ

ポンプ需要は、

ポンプ本体

だけではありません。

モーター
インバーター
軸受
シール
制御回路
電源

などへ広がります。

熱交換器

Liquid-to-Liquid CDUでは、

サーバー側のTCS

と、

施設側のFWS

の間で熱を移動させる必要があります。

そこで熱交換器が使われます。

つまり液冷化は、

コールドプレート市場

だけでなく、

プレート式熱交換器などの市場

にもつながります。

バルブ

流量調整、遮断、メンテナンスなどにはバルブが必要です。

ラック単位、CDU単位、サーバー単位へ液体回路が広がるほど、

流量制御
逆流防止
遮断
安全

のための部品も必要になります。

「水を流すからポンプが売れる」

だけではなく、

水を止める部品

まで見ることが重要です。

フィルター

液冷では異物管理が非常に重要です。

コールドプレート内部には細かな流路が存在します。

異物が入れば、

流路閉塞
圧力損失増加
流量低下
冷却性能低下

につながる可能性があります。

そのためフィルターが必要になります。

VertivのCDUでも内蔵フィルターが主要機能として説明されています。ヴァーティブ

ここで面白いのは、

フィルターが大型設備とは違う市場

であることです。

設備導入時だけではなく、保守、交換、点検まで含めて考える必要があります。

温度・流量・圧力・漏液センサー

空冷から液冷になると、監視する項目も増えます。

温度だけではありません。

流量
圧力
差圧
液漏れ

などを把握する必要があります。

NVIDIAの液冷システムでも液漏れ検知が運用上の重要項目として扱われています。NVIDIA Docs

つまり液冷化は、

冷却部品市場

であると同時に、

センサー市場

でもあります。

Oリング・ガスケット・シール材

液冷回路では、接続部が増えます。

接続部が増えるということは、

漏れを防ぐ部品

も増えます。

Oリング
ガスケット
パッキン
シール

などです。

しかも、何でも使えるわけではありません。

冷却液との材料適合性が重要です。

ASHRAEの水冷サーバー資料でも、EPDM、FKM、PTFE、銅、ステンレスなど多様な接液材料が整理され、材料選択や腐食への配慮が重要だとされています。ASHRAE

シール材メーカーやゴムメーカーにとっても、液冷は無関係な市場ではありません。

冷却液・添加剤

液冷では当然ながら液体そのものも必要になります。

水系
水+グリコール系
用途によっては誘電性液体

など、システム方式によって使用液は変わります。

ここで重要なのは、

単に「冷える液体」であればよいわけではない

ことです。

腐食
材料適合性
微生物
異物
泡
長期安定性

なども考える必要があります。

Open Compute Projectでも水系冷却液、プロピレングリコール系冷却液などの仕様やガイドラインが整備されています。Open Compute Project

液冷が増えれば、

冷却液メーカー

だけでなく、

添加剤
水処理
液分析
メンテナンス

といった周辺市場も生まれます。

液冷化で本当に増えるのは「接続点」と「管理項目」

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ここが今回の記事で最も重要なポイントです。

液冷市場を、

コールドプレート
CDU

だけで見ると、市場の半分しか見えていません。

液冷化で増えるものを一言で表すなら、

「液体が通る場所」

です。

例えば、

CDU

↓

メイン配管

↓

ラックマニフォールド

↓

ホース

↓

QD

↓

サーバー

↓

ホース

↓

コールドプレート

という経路ができます。

それぞれの境界には、

接続
シール
流量制御
監視
漏液対策

が必要になります。

空冷では、

空気が多少漏れても、それだけで電子機器が故障するとは限りません。

液冷では事情が違います。

そのため液体の接続点には、高い信頼性が求められます。

つまり液冷化によって付加価値が生まれやすい場所は、

大きな装置だけではありません。

接続する
止める
密封する
測る
ろ過する
管理する

という機能にもあります。

これは部品メーカーにとって重要な視点です。

液冷になると調達仕様そのものが変わる

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冷却方式が変わると、部品名だけではなく購買仕様も変わります。

空冷部品であれば、

熱伝導率
風量
静圧
騒音
回転数
フィン形状

などが重要でした。

液冷になると、

流量
圧力損失
耐圧
リーク量
液体との材料適合性
腐食
異物
清浄度
接液材
着脱寿命
流体温度
差圧

などが重要になります。

つまり、

「同じ金属加工会社だから作れる」

とは限りません。

特にコールドプレートやマニフォールドでは、

加工できる

ことと、

液冷部品として量産採用できる

ことは別です。

製造技術だけでなく、

リーク検査
耐圧試験
清浄度管理
材料トレーサビリティ
腐食対策
液体適合性評価

まで求められる可能性があります。

ここは新規参入企業が見落としやすいポイントです。

日本の部品メーカー・商社はどこを狙えるか

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液冷市場へ参入するとき、いきなりCDUを作る必要はありません。

むしろ自社の既存技術から近い部品を探した方が現実的です。

例えば、

精密切削が得意
→ コールドプレート、マニフォールド

銅加工が得意
→ コールドプレート、熱交換部品

ろう付け・接合が得意
→ コールドプレート、熱交換器

ゴム・樹脂が得意
→ ホース、チューブ、シール

精密バルブが得意
→ QD、バルブ

ポンプが得意
→ CDU内部

センサーが得意
→ 温度、流量、圧力、漏液監視

フィルターが得意
→ CDU、TCS

材料メーカー
→ TIM、シール材、冷却液

商社
→ QD、ホース、センサー、フィルター、冷却液、TIM

というように分解できます。

ここで重要なのは、

「液冷装置を売れるか」

ではなく、

「液冷BOMの中に自社製品を入れられるか」

と考えることです。

大手データセンター事業者へ直接売る必要もありません。

営業先は、

サーバーメーカー
ラックメーカー
CDUメーカー
液冷システムメーカー
熱交換器メーカー
データセンター設備メーカー
EMS
ODM
EPC
部品メーカー

など複数階層に存在します。

液冷市場では、

最終ユーザーを探す

より、

自社製品が組み込まれる一つ上のアセンブリメーカーを探す

方が営業につながる場合があります。

これは一般的な製造業BtoB営業と同じです。

液冷関連市場を見るときの7つの確認項目

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液冷案件を見つけたら、次の7項目を確認すると整理しやすくなります。

1つ目は、

どの液冷方式なのか。

Direct-to-Chipなのか、Rear Door Heat Exchangerなのか、Immersionなのかで必要部品は変わります。

2つ目は、

どこまで液冷するのか。

CPUだけなのか。

GPUも含むのか。

メモリやネットワークASICまで液冷するのか。

これによって残る空冷部品量が変わります。

3つ目は、

CDUがどこに置かれるのか。

In-Rack
In-Row
Perimeter

などによって配管構成も変わります。

4つ目は、

Liquid-to-LiquidかLiquid-to-Airか。

施設側設備への接続方式によって必要機器が変わります。

5つ目は、

使用する冷却液。

材料適合性やシール材選定に直結します。

6つ目は、

保守方法。

サーバー交換時にQDを使用するのか。

Blind Mate接続なのか。

ホースアセンブリなのか。

保守方式によって部品需要が変わります。

7つ目は、

誰がシステムを設計しているのか。

サーバーメーカーなのか。

CDUメーカーなのか。

ラックメーカーなのか。

データセンター事業者なのか。

設計権を持つ企業を把握しなければ、営業先を間違える可能性があります。

「不要になる部品」を探すより「熱経路の変更」を見る

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空冷から液冷への移行を、

ファン市場が減る
CDU市場が増える

という2択で見ると、本当の変化を見落とします。

見るべきなのは、

熱がどこを通るようになるのか

です。

空冷では、

チップ

↓

ヒートシンク

↓

空気

↓

ファン

という経路でした。

液冷では、

チップ

↓

TIM

↓

コールドプレート

↓

液体

↓

ホース

↓

QD

↓

マニフォールド

↓

CDU

↓

熱交換器

へ変わります。

この経路の変化を見ると、

どの部品が減るか

だけではなく、

どこに新しい部品市場が生まれるか

が分かります。

製造業の営業先を探す場合、この視点の方が使いやすいはずです。

よくある質問

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Q1. 液冷になるとサーバーファンはなくなりますか?

必ずしもなくなりません。

Direct-to-Chip方式ではGPUやCPUなど高発熱部品を液冷し、それ以外の部品を空冷するハイブリッド構成があります。

ASHRAEも、浸漬冷却などを除けば空冷と液冷が併存する構成が一般的であり、液冷対象が増えるほどファン需要が減ると説明しています。ASHRAEハンドブックオンライン

Q2. ヒートシンクは不要になりますか?

液冷対象となるCPUやGPUでは、大型空冷ヒートシンクがコールドプレートへ置き換わる可能性があります。

ただしメモリ、電源回路、SSD、NICなど液冷対象外の部品では引き続きヒートシンクが必要になる場合があります。

Q3. 液冷になればTIMは不要になりますか?

不要にはなりません。

チップからコールドプレートへ熱を効率よく移すため、界面の熱抵抗を抑える材料は引き続き重要です。

Q4. 液冷で一番需要が増える部品は何ですか?

一つには絞れません。

コールドプレート、CDU、マニフォールド、ホース、QD、ポンプ、熱交換器、フィルター、センサー、シール、冷却液などが一つのシステムとして必要になります。

OCPもこれらを液冷エコシステム全体として標準化しています。Open Compute Project

Q5. 中小の加工会社でも液冷市場へ参入できますか?

可能性はあります。

コールドプレート、マニフォールド、継手などには精密加工、銅・アルミ加工、接合、表面処理、洗浄、検査など多くの製造工程があります。

ただし、単に加工できるだけではなく、漏れ、耐圧、清浄度、材料適合性など液冷固有の要求への対応が必要です。

Q6. 商社が液冷市場で扱いやすいものはありますか?

あります。

例えば、

QD
ホース
フィルター
センサー
シール
TIM
冷却液

などは、完成したCDUそのものとは異なり、既存商材から横展開できる可能性があります。

Q7. 液冷はすべて水を使うのですか?

いいえ。

システムによって水系、グリコール系、誘電性液体など複数の選択肢があります。

そのため「液冷市場」を調査するときは、液体の種類と冷却方式をセットで確認する必要があります。

Q8. 空冷部品メーカーは今後厳しくなりますか?

製品によります。

高発熱CPU・GPU向け大型空冷部品では液冷への置き換え影響を受ける可能性があります。

一方で、液冷サーバーでも空冷が残るケースは多く、さらにLiquid-to-Air CDUや施設設備など別の場所でファンや熱交換技術が使われます。

「空冷か液冷か」ではなく、自社部品が熱経路のどこで使われるかを見る必要があります。

まとめ

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空冷から液冷への変化は、

ファン

から、

CDU

への単純な置き換えではありません。

本質的には、

熱を空気で運ぶシステム

から、

熱を液体で運ぶシステム

への変更です。

その結果、

大型ヒートシンク
一部のファン
一部のヒートパイプ

などの需要構造が変わる一方で、

コールドプレート
CDU
マニフォールド
ホース
QD
ポンプ
熱交換器
バルブ
フィルター
センサー
Oリング
ガスケット
冷却液

などの部品が重要になります。

そして、製造業の営業という視点では、

CDUという完成品だけを追う必要はありません。

液冷システムをBOMまで分解すると、

金属加工
樹脂
ゴム
シール
ポンプ
センサー
フィルター
材料
電子部品

まで営業機会が広がります。

今後液冷市場を見るときは、

「液冷市場はいくらになるのか」

だけではなく、

「空冷から液冷へ変わることで、どの部品が減り、どの部品が新しく必要になるのか」

まで分解してみてください。

そこまで見ると、自社が参入できる場所が見つけやすくなります。

さらに、

コールドプレート
QD
ホース
マニフォールド
CDU
冷却液
TIM
ヒートシンク
センサー

などを、市場、メーカー、国内案件、営業先、新規参入の視点まで調査した資料をまとめています。

電子機器の放熱材料・冷却部品市場2027-2030
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ASHRAE
データセンターの空冷・液冷、ハイブリッド冷却、コールドプレートなどの技術情報。ASHRAEハンドブックオンライン
ASHRAE Data Centers and Telecommunication Facilities

Open Compute Project
Cold Plate、CDU、QD、マニフォールド、冷却液などの仕様・標準化情報。Open Compute Project
Open Compute Project Cold Plate Project

NVIDIA
GB200 NVL系における液冷・空冷ハイブリッド構成の技術情報。NVIDIA Docs
NVIDIA Multi-Node NVLink Systems Documentation

Vertiv
CDU、Liquid-to-Liquid、Liquid-to-Air、ポンプ、フィルターなどの構成情報。ヴァーティブ
Vertiv CoolChip CDU

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